2009.09.22
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

タネを探して蒔こう! 【食と科学】[小3・理科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第三十八回目の単元は、「タネを探して蒔こう!」。身近にあるタネを集めたり、蒔いたりする活動を通して、タネのもつ生命力に気づかせましょう。

3年生の理科「植物の一生」では、植物の生長の過程や体のつくりについて学習します。9月になると、校庭や野原で植物のタネができていることを観察します。本単元は、この活動に続いて、発展的な学習として1時間ほど取り上げました。

台所でタネを探す

帰りのホームルームで次のように話しました。
「理科の時間に、花壇や校庭でいろいろな植物のタネを集めましたね。ところで、みんなの家の台所にもタネはあるかな」
と聞きました。
「花壇じゃないの?」
と子どもたち。
「そうだよ。台所にないかな」
ともう一度問うと、
「スイカのタネってそう?」
「そうそう」
「そうか、じゃあ、ブドウのタネも!」
と答えがどんどん返ってきました。
「そうですね、台所にあるタネを持ってきてみよう。タネだと思わないで食べているものもきっとあるよ。もしわからなければ、タネらしいものを持ってきてみよう」
と呼びかけました。そして、授業のときにはキュウリ、リンゴ、オレンジ、カボチャ、ブドウ、トウモロコシなどいろいろなタネが集まりました。

タネには命があるんだ!

自宅から持ち寄ったタネを紹介

翌日の理科の時間、まず、子どもたちが持ち寄ったタネを紹介します。
「先生、ブドウのタネはぬるぬるしていました」
「ダイズってタネだよとお母さんに教えてもらいました」
「トウモロコシって5年生になったら理科の時間に育てるって、お兄ちゃんが言っていました」

「先生は、こんなものを見つけてきました」
と言いながら「ハトの餌」を紹介します。ハトの餌として売られているものの中身はメーカーによって異なりますが、トウモロコシ・コーリャン・大麦・小麦・サフラワー・麻の実など何種類ものタネが入っています。

「いっぱいタネが集まったね。このタネは芽が出るかな」
と質問してみます。すると、子どもたちは
「固そうだから芽が出ないよ」
「でも、アサガオだって固いけど芽が出たよ」
「水をやれば芽が出るよ」
「やってみようよ」
と話し合いが進み、水でぬらしたキッチンペーパーの上にタネを置いて、乾いたら霧吹きで水をやる方法で、発芽するかどうかを確かめました。

芽が出た!

「先生、トウモロコシのタネが大きくなっているよ」
「水を吸って大きくなったんだ」
授業後も、子どもたちは毎日観察します。そして、1週間ほど経つと芽が出ました。子どもたちはびっくりするとともに大喜びです。
「みんなは気づかないうちに、命を持ったタネを食べているんですね。トマトやキュウリを食べると中にタネが入っているよね。それに、タネそのものを食べることもありますね」
と説明すると、
「トウモロコシがそうだ!」
と気づく子どもたち。
「そうですね。ほかにもエンドウマメやソラマメ、エダマメ、アズキなどもそうですね」

 タネそのものを食べるトウモロコシやゴマは、子どもたちには単なる食べものであり、芽を出して伸びる生命力を持ったタネ だと思えないことがあります。しかし今回、芽が出るかどうかを試してみることで、タネには命があるということや、身の回りにはたくさんのタネがあることに 気づくことができました。

 学習後、家でレモンのタネを蒔いて育てている子や、給食のデザートの果物からタネを取りだして蒔く子もいて、生活に理科を結びつける活動ともなりました。

給食のフルーツのタネを蒔く

アボカド

給食の時間には、デザートとして出てきた果物のタネを蒔いてみる活動をしました。デザートの果物から、できるだけ大きく重たそうでしっかりと中身の詰まっ ているようなタネを取り出します。食べたらすぐに蒔くことが大切です。タネが隠れるくらいに土をかけて十分に水をやります。

グレープフルーツとオレンジ

タネ蒔きから3週間ほどで芽が出ます。グレープフルーツやレモン、オレンジなどの柑橘類は簡単に発芽します。
なお、発芽させるためには、タネを採取した後、軽く水洗いしてぬるぬるした部分を取り除きます。子どもたちには、
「このぬるぬるした部分は芽が出ないようにする働きがあるんですよ」
と説明します。
授業の展開例
  • アボカドのタネを蒔いてみましょう。大きなタネを割って出てくる芽生えは迫力満点です。薄めた洗剤でタネをよく洗って、表面のぬるぬるしたものを取り除きます。とがった方を上にして、先端が1センチメートルほど出るくらい土に埋めます。1か月もすると発芽します。
  • 発芽したタネは鉢に植え替えて育ててみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop