2009.08.18
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日本人は何を食べてきたのか 【食と歴史】[小6・社会科]その3

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第三十七回目の単元は「日本人は何を食べてきたのか」その3。食の視点から歴史事象に関心を持たせるとともに、歴史を学ぶ意欲を高めさせましょう。

食の視点から歴史を概観することで、歴史事象に関心を持たせるとともに、歴史を学ぶ意欲を高めることを目標に、6年生の社会科で5時間ほど取り上げてみました。
実践に当たっては、ダイヤモンド社の「日本FOOD紀」(定価:1,575円 (税込) B5判変型/120頁 2008年4月3日発行) をもとにしました。

1時間目:自分たちの担当テーマを決める

最初に『日本FOOD紀』から「平安貴族は栄養失調で運動不足だった? 本当かウソか」というようなクイズを、10分程度で5問出題します。これにより『日本FOOD紀』への関心を高めるねらいです。

 次に、昭和から平成までの流れ、[石器、縄文、弥生、大和、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、安土桃山、江戸、明治、大正、昭和、平成]を確認した後、『日本FOOD紀』の見開き1ページの内容をポスター(四つ切り大の画用紙)にまとめることを話します。

『日本FOOD紀』を読む

その際、本を見ながら
「縄文パンというのがあったんだね」
「明治にあんパンが始めて作られたんだね」
と、特徴的な事象をピックアップし、今回は食べ物にこだわってポスターを作ることを説明します。

ポスターにしたい時代の希望を出す

そして、『日本FOOD紀』のどこのページをポスターにしたいか、名乗りを上げさせ、 最終的にはくじ引きで担当ページを決めます。くじを引く前に
「鎌倉時代に、おにぎりの始まりがあるよ」
「安土桃山時代は、ポルトガルとの貿易でお菓子が伝わったんだ」
といった『日本FOOD紀』に書かれている各時代の特徴にも再度触れておきます。

2時間目:テーマを決める

『日本FOOD紀』の担当ページを読み込む

2時間目はまず、自分の担当するページを読み込ませます。 その上で、担当する時代の食べ物について特徴的な事柄を一つ選び、それを中心にまとめることを説明します。

 次に、言葉の意味を調べてノートにポスターの下書きをさせます。ここでは、全体のレイアウトを考えさせることが目標です。四つ切り大の画用紙を使ってポスターに仕上げることを踏まえ、次の点を指示します。
(1) 要点を短く表現する
(2) 絵やイラストを入れる
(3) クイズなどを入れてもよい

3時間目:ポスターを仕上げる

3時間目は、まずノートの下書きをもとに、四つ切り大の画用紙に清書することから始めます。次の点に気をつけるよう指示します。
(1) 協調する箇所の文字の大きさや色
(2) 文字に黄色系統は使わない(黄色のペンで書くと、読みにくくなるため)
(3) 文字などの間違いを確認

 次に、仕上げたポスターを皆の前で発表する練習をします。発表のときは、書いてある文章を読み上げないなど、書き言葉と話し言葉をしっかりと分けて話すよう指導します。

4時間目:ポスターセッション

4時間目はいよいよポスターの発表です。まずは、次に挙げたポスターセッションの進め方を確認します。
(1) クラス全体を半分に分け、発表役と聞き役になる
(2) 発表役は10分の発表時間内に繰り返し話す
(3) 聞き役は一人で聞きに行く
(4) 相手の目を見て話す

ポスターセッションを行う

(1)~(4)を確認後、ポスターセッションを行います。 聞き役一人につき2枚の付箋紙を与え、1枚は自分の出席番号の次の人のポスターの感想(これにより、全員が最低でも1枚の感想をもらえます)、もう1枚は おもしろかったポスターを選んで、その感想を書いて貼ります。

5時間目:学習の振り返り

5時間目は、最初に「ポスターセッションの感想」と「新しい疑問」をワークシートに書き込ませ、振り返ります。

 次に、発表の方法についても振り返ります。とくに、以下の点を指導します。
(1) 立ち位置や指示の方法
(2) 聞き役に問いかける話し方の工夫

 さらに、ワークシートに書き込んだ、もっと調べてみたいことや次の学習に取り上げたいことなどの「新しい疑問」について話し合わせます。以下は、子どもたちから出された「新しい疑問」の一部です。

■平安貴族は今と違って食事の回数が少なかったのに、今でいうメタボリックシンドロームだなんてビックリしました。なぜメタボだったのだろうかと思いました。
■平安貴族がメタボになったのは豪華な食事をしていたからで、貴族ではない人はメタボではなかったのではないだろうか。
■学校給食の歴史を詳しく知りたい。
■外国からやってきた食べ物のことをもっと調べたい。
■それぞれの時代のお菓子や食べ物を作ってみたい。
■江戸の人はなぜ一人暮らしの人が多かったのか。
■今のおにぎりは三角形だけど、T君の発表を聞いていると、ごろごろしている石のようなものがおにぎり合戦では便利だったそうです。一番はじめのおにぎりっていつごろできたのだろうかと思いました。

 以下は、子どもたちのポスターセッションについての感想です。

「どんなことを発表するのか、はじめは苦労しました。内容は社会科で、発表は国語の勉強でした。社会科も勉強できたし、国語も反省できたのでよかったです」

「本を読んだときに『ナルホド』と思ってしまうことがいっぱい書かれていました。さらにポスターセッションをすることによって本の中のほとんどを読んだ感じになりました。また違う本でポスターセッションをしてみたいです」

「Mちゃんの発表で、前よりもミネラルウオーターについて興味を持ちました」

「私たちが食べ物を食べているのが当たり前だと思っていたので、とても勉強になりました。昔の暮らしをしっかりと考えたので、できるだけ給食などを残さないようにしたいです」

授業の展開例
  • 「パン」や「ジャガイモ」など具体的な食材を決めて来歴について調べてみましょう。
  • 食材が「道」を通じて交流されることによって食文化が培われてきました。「塩の道」や「鯖街道」など食材の交流のあとを調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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