2009.07.14
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紫色のひみつ 【食と科学】[小6・理科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第三十六回目の単元は「紫色のひみつ」。実験を通して、紫色の野菜や果物に興味を持たせ、その働きや大切さを理解させましょう。

夏は紫色の食物が目立つ季節です。シソやナス、ブドウの皮など紫色をした野菜や果物には、酸性やアルカリ性の物質に出あうと、色の変わるものがたくさんあ ります。これは主に「アントシアニン」と呼ばれる色素の変化です。その性質を利用し、身近な物質の酸性やアルカリ性を調べることができます。6年生理科の 「酸・アルカリ」の学習で取り上げてみました。

≪用意するもの≫

・透明なビニール袋
・試験管(なければ透明なコップなど色水を入れることができる透明な入れ物)
・紫色をした野菜・果物(子どもたちに持ってきてもらいました)

紫色の野菜や果物から色水を作る

  • しその葉っぱをちぎる

  • ヤマモモから色を出す

まず色水を作ります。

 シソは細かくちぎってビニール袋に入れます。ナスは剥いた皮を小さく切ってから入れます。ブドウは中身を外した皮をそのまま使います。

 それぞれのビニールに水を入れてしばらく軽くもみ続けると、色水が出てきます。

酸性は赤、アルカリ性は緑に色水が変化

炭酸水を入れてみる

出来上がった色水をコップに入れ、そこに調べたい物質の水溶液を数滴落とすと、水の色が変化します。中性の物質は青紫色、酸性の物質は赤っぽい色、アルカリ性の物質は緑っぽい色から黄色になります。

ナスの漬け物の汁の変化

たとえば、梅干しやレモン、酢などを落とすと赤っぽい色に変わり、酸性を示します。また、重そうや石けん水を落とすと緑っぽい色に変わり、アルカリ 性を示します。ただし、野菜や果物によっては色の変化がはっきりしないものがあります。いろいろと試してみるとおもしろいでしょう。

 最後に
「アントシアニンはポリフェノールの一種なので、生活習慣病や老化の防止に役立つ色素です。季節もののナスやブドウなどは、できるだけ食卓に登場させてください」
と、『心とカラダにおいしい食事学80 森野真由美 管理栄養士 老化を防止、がんに効く! ナス、ブドウ、ブルーベリー・・・紫色の野菜、果物をもっと食べよう』(「月刊FUSO」2001年8月号)の記事をもとに説明します。

ナスの紫を鮮やかにする食の知恵

梅干しに重そうをふりかけてみましょう。梅干しの色が少し薄くなります。これは重そうのアルカリ性によって梅干しのクエン酸の酸性が弱められるからです。また、表面から出る泡の正体は二酸化炭素です。

 ナスを漬ける時にミョウバンを使うとナスの紫色が鮮やかになります。ミョウバンには、ナスの皮に含まれている紫色の色素 「ナスニン」をナスの繊維にしっかりと結びつけ、ナスをきれいな紫色にする働きがあるのです。ぬか床に古くぎを入れるという生活の知恵がありますが、これ はナスニンが鉄とも結合するため、ミョウバンと同様の効果があるためです。

 当連載の第15回目のテーマは「カレーでかれいに変身」 でした。カレー粉を入れて焼きそばを作ると不思議なことに焼きそばの色が変わっていきます。カレー粉にはウコンが入っています。ウコンの色素成分(クルク ミン)は物質の酸性・アルカリ性によって色が変わるという特性を持っているそうです。これもアントシアニンと同じ性質をもっているのです。

授業の展開例
  • 梅干しは赤シソのアントシアニンを梅の酸で赤く発色させたものです。ビートなども酢に合わせるといっそう鮮やかな赤色になります。
  • 紫キャベツをきざんで小皿にのせ、ドレッシング、マヨネーズ、レモン果汁をかけてみましょう。きれいに赤色に変化します。これは、ドレッシングとマヨネーズには酢酸、レモン果汁にはクエン酸が含まれているためです。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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