世界のお好み焼き 【食と文化】[小6・社会科]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第三十四回目の単元名は「世界のお好み焼き」。粉を水で溶いて食べる食文化に関心を持たせましょう。
ピザ、ナン、チヂミは?
「授業の終わりに、この○○に入る言葉がわかります」
そう言って、プリント2枚(A4用紙1枚に4種類ずつ、計8種類の料理の写真が載っています)を配ります。写真は、いずれも「オタフクソース株式会社」のホームページの「世界のお好み焼き」のものを活用させていただきました。
「この中にみんなの知っている料理はありますか」
と聞きます。すると、
「これってピザかな?」
「これは、ナンのように思うけど……?」
と子どもたち。そこで
「みんなナンって何かな?」
と教師が問い返します。
「インドの料理です。給食に出ます」
「そうですね。この中に、ナンやピザをはじめ世界の料理が載っています。8枚の写真の料理の名前を当ててください」
子どもたちはグループで相談しながら料理の名前を考えます。グループで回答が決まったら、付箋紙に料理名を書いて写真の 上に貼ります。子どもたちが知っているのは、ピザとナン(ほぼ全員)とチヂミ(一部の子だけが知っていました)で、それ以外の料理はまるでわかりません。 これでは、残りの写真の料理名を考える足場がありませんので、料理名と材料とどこの国の料理かを説明していきます。
料理名を推理する
黒板に、料理名、どこの国の料理か、材料などのヒントを次のように書いていきます。
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「カレーが入っている?」
「これがそんな色をしているよ」
「オムレツ風なのはこれだろう」
などと、子どもたちはヒントをもとににぎやかに相談を始めました。全グループの予想が出そろったら、答え合わせをします。
粉を食べる文化
答え合わせでひとしきり盛り上がった後、
「お好み焼きを入れて全部で9種類の料理に共通していることはなんだろうか」
と聞きます。
「小麦粉、米粉、トウモロコシの粉だから粉を使っている」
「色が黄色い」
「焼いている」
「具を入れている」
ここまでは子どもたちが見つけましたので、
「粉はそのままでは食べにくいので、水で溶いて食べるということも共通していますね」
そう結びました。
最後に、
「この○○のなかにはどんな言葉が入るかな」
と質問し、子どもたちに考えてもらいました。
「こなりょうり」という意見もありましたが、
「おこのみやき」
と説明すると、なるほどと頷いてくれました。
子どもたちの感想です。
「世界の料理は日本と似ているなあと思いました。でもピザってお好み焼き?」
「写真を見て、これがお好み焼きなの? と思ったけど、世界から見たら日本のお好み焼きもそう思うかもしれないからそれぞれでいいと思った」
「お好み焼きは日本だけにあると思っていたけれど、粉や具が違っても世界にはいろいろなお好み焼きがあるんだなあと思いました」
「日本のお好み焼きとは形が違うし、使っているものも違うけど、いろんな国の人が思っていることと私たち日本人が思っていることが同じだとわかった」
授業の展開例
- チヂミは韓国風のお好み焼きの総称です。簡単に作ることができます。スーパーマーケットでもチヂミ用の粉も売っています。作ってみましょう。
- インドネシアの「マルタバ」、トルコの「クイマル・ピデ」など、粉を使った料理はまだまだたくさんあります。ほかにはどんな料理があるのか調べてみましょう。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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