2026.10.22
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「きき塩」で見つけた久高の塩の自慢 【食と地域】[小学校1~6年生]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子どもたちの興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。
第233回目の単元は「『きき塩』で見つけた久高の塩の自慢」です。沖縄県南城市立久高小学校の1~6年生が、久高の塩と赤穂の塩などを食べ比べ、味や見た目の違いを確かめながら、自分たちの島の塩のよさを見つけました。

授業情報

テーマ:食と地域
学年:小学校1~6年生

久高の塩の自慢を見つけよう

授業の板書(移動黒板)

沖縄本島の東に浮かぶ久高島は、周りをぐるりと海に囲まれた小さな島です。島には特産物と呼べるものが多くはありませんが、もずくや麦とともに、島のきれいな海水から少しずつ手作りされている「久高の塩」があります。今回は、久高の塩と、塩づくりの歴史が日本遺産に認定されている兵庫県赤穂の塩などと食べ比べる「きき塩」を通して、子どもたちが自分たちの島の塩の自慢を見つけていった授業を紹介します。授業は9月9日、武庫川女子大学の藤本勇二先生を迎え、1年生から6年生までの全員で行いました。

久高の自慢を藤本先生に教えてください

授業は、「久高の自慢を藤本先生に教えてください」という投げかけから始まりました。島の外から来た藤本先生に教えるという場面に、子どもたちは次々と手を挙げます。

「海がある」「自然がある」「ネコがいる」「イラブー」「つり」、そして「お年寄り」。お年寄りを島の自慢に入れているところが、とてもかわいらしく、久高の子どもたちらしいなと感じました。さらに、「久高の海水」「ちんすこうに(入っている)」といった声や、神様の行事である「八月マティ」など、島の行事の名前もいろいろと出てきました。出てきた言葉は移動黒板に書き留めていきました。

たくさんの自慢の中から、海から作られる「塩」に目を向け、本時のめあて「赤穂の塩とくらべて、久高の塩をじまんしよう」につなげました。

久高の塩について知っていること

次に、藤本先生が「久高の塩について知っていることを教えてください」と尋ねました。子どもたちからは「海でできてる」など、はじめは単語がぽつりぽつりと出てくるだけでした。

そこで、ランチルームに掲示していた「いただきマース」工場見学のポスターを黒板に貼りました。これは、授業の2日前の9月7日に、子どもたちが島の塩づくりの現場を見学したときの様子を、写真とともにまとめておいたものです。

ポスターを見た子どもたちは、「○○さんが作っている」「そういえば見た」と見学のことを思い出し、少しずつ話し始めました。黒板には「塩はどうやってつくるの?」「だれがつくっているの?」「うっているところは」という三つの問いが並びます。

「作り方はどうなの?」と聞くと、「大きいなべで作ってる」「きれいな海水を使っている」「ぐつぐつ煮る」「やさしくぐつぐつ煮ている」と、見てきたことが言葉になっていきました。

なべ → 海水(きれいな海水)→ ぐつぐつ → やさしくぐつぐつ → きれいな塩。

「きれいな塩ができるよ」という子どもたちの話を、そのまま板書しました。

子どもたちにとって久高の塩が身近なのは、何よりも「作っている人が分かる」「顔がすぐに思い浮かぶ」からだと思います。

きき塩をしよう

一人ずつのきき塩セットとワークシート

いよいよ、4種類の塩を食べ比べる「きき塩」です。用意したのは、久高の塩、赤穂の塩(兵庫県)、給食でいつも使っているシママース(沖縄本島)、そしてヨーロッパ・アルプスの岩塩です。A・B・C・Dの記号だけを付け、どれがどの塩かは分からないようにしました。

きき塩セットは、カレー皿のふたの上に、しょうゆ用の小さな皿を四つ並べ、それぞれに小さなスプーンを添えたものです。

最初は、大きな皿にまとめて盛り、子どもたちに少しずつ取り分けようと考えていました。けれども担任の先生と相談する中で、「食べ過ぎてしまうかもしれない」「どれぐらいの量にしたらいいか難しいね」という話になり、1年生から6年生までの全員が、同じ速度で、同じ量を味わえるようにと、一人ずつのセットにしました。準備をしながら、「検査員のように体験させたい」という思いも、私の中でだんだんと膨らんでいきました。

セットを配ると、子どもたちから「わあ」と声が上がりました。スプーンですくって手のひらにのせる子、そのままなめてみる子。テイスティングをしているという、少し大人になったような気分で、どの子も楽しんでいました。

手のひらにのせて味わう

ワークシートには、A~Dそれぞれの「見た目」「さわった感じ」「味」を書き込みます。印象的だったのは、子どもたちがまず見た目をしっかりと観察していたことです。「キラキラしている」「とげとげしてる」「つぶつぶしている」など、結晶の様子をよく見て、豊かな言葉で表していました。

味についても、「Aはしょっぱい、Bはとってもしょっぱい、Cはしょっぱい、Dはとってもとってもしょっぱい」と書いた子がいました。ほかにも「カリカリしたしょっぱさ」「トゲトゲしたしょっぱさ」「優しいしょっぱさ」。しょっぱさをこんなにたくさんの言葉で表現できることに、私自身がとても感動しました。

答え合わせと、久高の塩の自慢

箱を開けて答え合わせ

答え合わせは、A・B・C・Dと書いた色とりどりの箱を、一つずつパッと持ち上げると、中から塩の袋や容器が現れるという仕掛けにしました。クイズ形式にして、子どもたちに「わあ」と言わせたくなったのです。

子どもたちは、やはり久高の塩を当てることができました。食べ慣れているということもあるのでしょう。久高の塩のよさとして、次のような言葉が出てきました。

・あじがのこる

・一つぶ一つぶがさらさら、大きい

・しょっぱい(あじがこい)

・給食に出たときの(味を)おぼえてた

「このひみつはなんだろう」。久高の塩のよさを取り上げたところで、授業は時間切れとなりました。予定していた赤穂の塩の日本遺産PR動画を見ることや、二つの塩の共通点について十分に話し合うことはできませんでしたが、最後に「赤穂にメッセージを届けます」と伝えて授業を終えました。

授業のあとで

答え合わせ用の箱と4種類の塩

授業後も、子どもたちからは塩の話がよく出ていました。「これはどこの塩?」「これはしょっぱい」「これだと久高の塩が合う」「今度は塩が食べたい」。

後日、赤穂の塩を使ってゴーヤチップスを作り、それを食べながら、授業で見られなかった赤穂の塩の日本遺産PR動画を見ました。子どもたちは、赤穂の塩づくりの歴史や規模にびっくりして、「なんかすごい塩を、そんな簡単に食べてしまったんだ」と話していました。「わあ、すごい」「塩の畑がある!」「塩でお金持ちになれるんだ」という声もありました。

「久高の塩も、たくさん作ったらお金持ちになれるのかなあ」と言う子もいました。そこで、一緒に見学に行った担任の先生が、大事に作っているからこそ少ししか作れないのだという話をすると、「ああ、そっか」「そりゃそうだよな。○○さんが少しずつ手作りでしてたから、たくさん作れないよね」と、子どもたちは納得していました。大規模に塩づくりが行われてきた赤穂との違いや、作り方の違いが、子どもたちの中に思い浮かんでいたようです。

一方で、海水から塩ができるという仕組みは、1年生から6年生まで全員が理解していました。周りを海に囲まれた久高も、目の前に瀬戸内海が広がり塩づくりに向いた環境をもつ赤穂も、どちらも海の恵みを上手に生かしています。授業の中では十分に扱えなかった共通点に、子どもたちは体験を通して近づいていたのだと思います。

また、5年生の女の子が「岩塩ってどういうこと?」と聞いてきました。岩塩は昔の海水などが蒸発して塩がたまり、長い年月をかけて地層となったものだと話すと、「山に塩がある」ということにとても驚いていました。

それを受けて担任の先生が、「じゃあ、どんな山か見てみる?」と社会科の学習につなげました。山の上に岩塩があるということは、もともとそこは海だったということ。6年生の理科「土地のつくりと変化」の学習にもつながっていきます。久高の塩だけでなく、違う形で教科とつながっていったことが、とても面白いと感じました。

塩を教材にして見えたこと

ふだん、久高の塩については、もずくや麦などと同じように、地域で大切に作られているものの一つとして子どもたちに話をしてきました。

今回、塩を教材にしてよかったと思うのは、しょっぱさが子どもたちにとって分かりやすい味覚だったことです。甘みも分かりやすい味ですが、お菓子がたくさん出回っている中で、甘さには好き嫌いや「好きな甘さ」があります。それに対して、しょっぱさは料理の味の決め手にもなる、身近で基本的な味覚です。

そして、きき塩をしたことで、子どもたちがしょっぱさをこれほど豊かに表現できるのだと知りました。私たちはふだん、味覚を「しょっぱさ」「甘さ」と簡単に表現してしまっていたなと反省もしました。

藤本先生は、テイスティングという状況をつくったことが、子どもたちが塩という対象にぐっと入り込む後押しになったと話していました。そして、しょっぱさに対する豊かな言葉には、子どもたちの経験や地域との関わりが反映されているのだろうとのことでした。

誰が作っているかが分かっているからこそ、「優しいしょっぱさ」になるのかもしれません。味覚は、むしろ主観的であることに意味がある。「好き」という気持ちの深さが、言葉の豊かさにつながっていく。そのことを、子どもたちが見せてくれた授業でした。

一人ずつのきき塩セットは、身近な材料で準備でき、いろいろな学校や食材で再現できる方法だと思います。

授業の展開例

・岩塩を手がかりに、山に塩がある理由を調べましょう(6年 理科「土地のつくりと変化」)。

・赤穂の塩づくりと久高の塩づくりを比べ、自然環境を生かした産業について考えましょう(5年 社会科)。

・久高の塩を使った料理を作って、塩の自慢を赤穂の人たちに伝えましょう。

稲垣 夏子

栄養教諭・沖縄県南城市立久高小中学校
「地域の食材で地域と共に子どもたちを育てたい」と考えながら日々取り組んでいます。新しい発見・ワクワクする表現を子どもたちから教えてもらっています。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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