冬のパイナップルを食べ比べ、夏との味の違いを知る 【食と地域】[小学4年生・社会]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子どもたちの興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第229回目の単元は「冬のパイナップルを食べ比べ、夏との味の違いを知る」です。
パイナップルの産地として知られる沖縄県東村。その中心にある東小学校の4年生の教室で、少し珍しい「冬のパイナップル」を主役にした授業が行われました。
授業情報
テーマ:食と地域
教科:社会
学年:小学校4年生
パイナップルの産地で学ぶ

学校栄養職員の知念祐花先生、パイナップル農家のゲストティーチャー、そして筆者の私(藤本)が取り組んだ授業を紹介します。
パイナップルの産地にあるこの学校では、3年生でパイナップルの植え付けをし、5年生になったら収穫を体験します。
また、東村では毎年、子どもたちが地域の文化を学ぶ「てぃーだ学校」が開催されています。
今回は、そこでパインジャム作りを教えてくれた地域の農家の方を授業に招きました。
実際に冬のパイナップルを試食し、農家の方と対話しました。
季節による果物の味の違いや、それを生かす生産者の工夫、そして学校栄養職員の仕事に目を向ける授業を展開しました。
冬のパイナップルの「違和感」から季節による味の違いに気づく

授業の冒頭、子どもたちのパイナップルに対する印象を確認しながら冬のパイナップルの試食につなげます。地元の自慢であるパイナップルについて私が「よく食べている?」と聞くと、「あまい!」「すっぱいときもある」、「当たりとはずれがある」と、日常的に親しんでいる子どもたちらしい率直な声が飛び交います。
ここで学校栄養職員がパイナップルの試食を提案しました。私が「普段のパインと食べ比べてみよう。どんなことが違うか、まずは予想して」と促すと、「味」「見た目」「におい」と口々に意見が出ます。事前に予想することで、子どもたちに比較するスイッチが入ります。
実際にパイナップルが配られると、「色が薄い」「ちょっとすっぱい」「夏と違うね」と、教室のあちこちからつぶやきが聞こえます。冬に食べるのは初めてという子も多くいました。私が「普段食べているのと比べてどうだった?」と尋ねると、「いつもよりすっぱい」「ベロが痛い」という声が上がる一方で、「少し甘かった」という意見も出てきました。
ここで農家の方にバトンタッチします。「パインはなつみ(夏実)とあきみ(秋実)があって、ふゆみ(冬実)はないんです。今日食べたのはあきみ。みんなはあきみをそのまま食べたことはほとんどないと思う」。さらに、「あきみは基本は酸っぱいけれど、パインは下から甘くなる。甘かった人は下の方を食べたのかもしれないね」と、甘さの秘密も教えてくれました。ここで「夏のパインに比べると、冬のパインのほうが少し酸っぱい」という味の違いを私が確認します。
データをもとに季節と味の秘密を考える
続いて、視点を他の果物にも広げます。「ほかにも季節によって味が変わるものあるかな」と私が問いかけると、子どもたちは近くの人と相談を始めました。「りんご」「スイカ」「たんかん」と意見がどんどん飛び出します。「いちごも下の方から甘くなるよ」と共通点を挙げる子もいます。
ある子どもからは、食用ハイビスカスとも呼ばれるローゼルの名前も挙がりました。生食できる秋にはジャムや塩漬けに、乾燥させるとハーブティーとして利用できるそうです。身近な植物から季節による変化を感じ取っている様子がうかがえます。「シークヮーサー」と発表した子は、酸っぱいときと甘いときがあると話します。
次に、味の違いに注目させます。「シークヮーサーって何に使う?」と聞くと、子どもたちから「魚にかけたりするよ」「普通に食べるよね」と返ってきます。ここで、学校栄養職員が給食の献立を振り返りました。
「9月にシークヮーサーが給食に出たことを覚えているかな?あの時は魚にかけて食べたよね。先月(1月)と今月(2月)は、果物として出しました。シークヮーサーは9月から収穫が始まりますが、1月ごろから甘く熟すので、果物として生で食べました」。給食の写真を黒板に貼ることで、より思い出しやすくしました。「9月のシークヮーサーと2月のを比べて、味の違いはありましたか?」と、学校栄養職員が聞きます。すると、子どもたちは「(果物として食べた方が)ちょっと甘かった!」と反応しました。
私が写真を見ながら「どこにシークヮーサーがあるの?」と聞きます。子どもたちは「魚の横にあるのと、お盆の上のオレンジ色のやつ!」。私が「え!違う果物なんじゃないの?」と聞きます。子どもたちはすかさず「どっちもシークヮーサーだよ」「あれ、でもなんで色が違うの?」と反応し、自然に問いが生まれます。
なぜ季節によって色や味が変わるのか。私が「一つは熟すことが考えられます。他にはどんな原因があると思う?」と問いかけます。子どもたちは「太陽!」「雨」「気温かな?」と、経験を振り返りながら予想します。
予想が出そろったところで、学校栄養職員が地域の降水量、気温、日照時間のグラフを提示しました。まだグラフの読み方は習っていないので、私が解説しながら一緒に見ます。「平均気温は夏と冬でどのくらい違うんだろう」「雨がたくさん降っているのはいつかな?」。グラフから、7月に雨がたくさん降ることや、8、9月の日照時間が長い実態が浮かび上がりました。
農家の育て方と学校栄養職員の献立、それぞれの「工夫」を知る

夏と冬の生育環境の違いについて整理したところで、農家の工夫に話題を移します。子どもたちは「スポットライトを当てる」「ビニール袋をかぶせる」「新聞をかけているのを見たことがあるよ」などと口に出していきます。「甘くなる粉をかけているんじゃない?」という予想も。「収穫する時期を工夫しているんじゃないかな」と考える子もいました。
農家の方に尋ねると、「夏は日差しが強すぎてパインもやけどをしてしまう。だから日焼け防止に新聞紙をかけます。冬は寒いから、新聞紙とネットもかけるんだよ」と実態を教えてくれました。
さらに「夏はそのまま食べておいしい甘いパインを作る。秋は缶詰にするための酸っぱいパインを作るように工夫しているんだ」と、季節に合わせた生かし方を話してくれました。
学校栄養職員も、食材の魅力を引き出すために献立への組み込み方を工夫しています。夏の酸っぱいシークヮーサーは魚に添え、冬の甘いものはそのまま果物として食べる。季節によって、学校栄養職員は給食での出し方を、農家は育て方を工夫している点に気づきました。
次に私が「どうしてここはパインの産地になったんですか」と聞きます。農家の方は「ここは土が赤いよね。この土が美味しいパインの生育に適しているんです」。品種に詳しい子どもたちも、このことは知らなかった様子で驚いていました。
子どもたちの振り返り
・夏のパインより酸っぱく感じたのは、気温や雨の量、日光に関係があると分かりました。
・農家さんが気温や日光を見てパインを植えていることが分かりました。
・果物には季節によって違いがあることに興味をもちました。家に帰ったら調べてみたい。
・( )に入る文字は「経験」だと思いました。パインにはあきみやふゆみがあることが分かりました。
赤い土の環境を生かした、人の知恵と工夫を学ぶ
最後に今日、学んだことを振り返ります。私は「気温、雨、日光のちがいを( )生かして」と板書し、空欄に入る言葉を考えさせました。
さっそくある子が「工夫して生かして」と発表しました。もう1人は「場所を生かして」と言います。私は「今、心が動きました。住んでいる場所を持っていくことはできない。この土地の条件を生かしているということだね」と返し、授業を締めくくりました。
授業の展開例
〇地域の野菜や果物の「旬」のカレンダーを作ってみましょう。
〇「赤い土」の秘密を調べ、他にどんな作物が育つか探究してみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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