2026.06.25
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

伊是名で育ったお米のひみつを見つけよう

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子どもたちの興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。
第230回目の単元は「伊是名で育ったお米のひみつを見つけよう」です。
沖縄県伊是名村の伊是名小学校の低学年の教室で、伊是名で育ったお米を主役にした生活科の授業が行われました。

授業情報

テーマ:食と地域
教科:生活
学年:小学校2年生

伊是名のお米から始まる食育

 

「尚円の里」が大変身 

沖縄県伊是名(いぜな)村立伊是名小学校の低学年の教室で、学校栄養職員の比嘉知樹先生、そして筆者の藤本が取り組んだ生活科の授業を紹介します。

子どもたちは事前に、廊下に掲示された「食育ドキュメンテーション」を眺めてお米について知ったり、給食センターの見学で炊きたてのご飯を試食したりして、期待感を膨らませてきました。

今回は、毎日当たり前のように食べている給食のご飯が、実は自分たちが住む伊是名の豊かな自然や、古くから続く暮らし・文化とつながっていることに気づくことを目標としました。地域の誇りを感じ取り、食への感謝を深めるための、五感を活用した探究の記録です。


給食の写真からお米のひみつを探す

 

子どもたちに米のパッケージを見せる

「みんな給食は好きですか?」という問いから始まった授業。「大好き!」元気いっぱいの2年生が答えます。
比嘉先生が3枚の給食の写真を見せます。
「写真を見て、毎日給食に出ているものを見つけましょう」と問いかけると、子どもたちは「ごはん!」「牛乳も毎日出てるよ!」「あ、にんじんも入ってる」と答えます。
その気づきを優しく拾いながらも、藤本は今日の中心的な問いへと導きます。
「たくさんありすぎるから、比嘉先生はその中の一つだけ選んできたようです」
比嘉先生からヒントを出します。
「ヒントはこの前のセンター見学!あるものを先生が見せて、あるものを実際に食べたよね?」
その瞬間、子どもたちの表情がパッと明るくなりました。
「あ、わかった! センターで食べたごはん!」「お米のことだ!」
「今日はお米に注目して授業をしていきます」

藤本が子どもたちの輪に入りながら尋ねます。
「みんなが給食で毎日食べているのは、どんなお米なんですか?」
子どもたちは自信満々に答えます。
「しょうえん(尚円)のお米!」
「伊是名のお米だよ!」
「おいしいの?」と藤本が重ねて聞くと、「おいしいよ!」「ほかほかしてて、もちもちしてるんだよ」「白いよ!」と、自分たちの食べているお米の魅力を次々に言葉にします。

「尚円のお米に詳しいみんなだったら、お米の袋に書いてあることもわかるかな?」
ここで米袋を見せます。袋には事前に付箋を3枚貼り、書いてある部分を隠しておきました。
袋を見るとすぐに子どもたちは、「しょうえんのさと!」「しょうえんおうがいるよ」と1と2の付箋のところを正解していきます。
「すごい、よく知ってるなあ」と藤本。
しかし、3つめの付箋のところだけはなかなかわかりません。そこで「今日みんなと勉強して、ここに書いてあるひみつを考えよう」と伝え、授業の方向性が決まりました。
めあてをワークシートに書き込んでいると、「いぜなって、海もきれいだよ」と住んでいるところの魅力を語る子どもたち。
比嘉先生も、「そうだよね。いぜなって、お米もすごいし海もきれいだよね」と、郷土への愛着を言葉に込めて伝えます。

形を変えるお米 ――五感で味わう「変身」のひみつ

 

付箋を貼った米袋

「みんなはこのお米をおうちでも食べているかな?」と聞くと、「食べているよ!」「朝ごはんで食べたよ」「朝も夜もお米だよ!」と元気な返事が返ってきます。
ここで藤本がある質問を投げかけました。
「じゃあ、お米でできた食べ物って何がある?姿を変えたお米、知っているかな?」

「もち!」などと意見が出る中、「パン!」という声が上がります。すかさずその子が「パンは小麦か」と気づき、みんなで米からできる食べ物を考えます。
「スーパーのお菓子コーナーにもあるよ」など比嘉先生もヒントを出します。

「お米がどこで育てられているか知ってる?」という比嘉先生の問いに、子どもたちは少し考え込みます。
「本島から来てるのかな?」
「あの田んぼかな?」

「お米は本島や、藤本先生が住んでいる兵庫県でも作られています」
比嘉先生は、お米で作られたお菓子として、せんべいやもち、ポン菓子を改めて紹介し、お米が生活の中に実はたくさんあることを伝えます。

ここで、藤本は、今日のめあてが「伊是名のお米のひみつを見つけよう」であることを確認します。「お米でできる食べ物がみんなのおうちにあることがわかりました。実はね、給食の中でも、もともとお米からできているのに、今はお米の形をしていないものが出ているんだよ。なんだかわかるかな?」

 

味噌を観察して感想を話し合う

「玄米?」
「とうふじゃない?」
「ごまだれかな?」
子どもたちが首を傾げる中、給食で出たみそラーメンや、塩麹の唐揚げをヒントとして挙げます。

そこで比嘉先生が取り出したのは、地元のお米で作られた「塩麹」と「尚円みそ」でした。

透明な瓶に入った塩麹を見せて「これ、見たことある?」と尋ねると、「見たことある!」「家にあるよ!」「あ!ママが唐揚げを作る時に、塩麹使って作ってるって!」と子どもたち。
「お米ってお米の形がなくなってもすごいんだね」藤本が確認します。

いよいよ、五感を使った「変身したお米」の観察と試食の時間です。藤本が比嘉先生に問いかけます。
「塩麹ってどんな匂いがするのかな。遠くから来た僕たちは食べたこともないし……」
すると比嘉先生が、「給食センターで普段使っている塩麹とお味噌を持ってきました!」と言い、まずは小さなカップに分けた「尚円みそ」を配ります。

鼻を近づけた子どもたちから、驚きのつぶやきが漏れます。
「おにぎりのにおいがする!」
「お味噌汁のにおいだ」
「食べたいくらいいいにおい!」

実際に食べてもいいことを伝えると、反応はさらに豊かになります。
「あまい!」
「ちょっとしょっぱい」
「本当だ、お米の味がする!」
形はドロドロの味噌になっていても、その根本にお米があることを、子どもたちは自分の舌で感じ取っていました。

次に、塩麹に挑戦です。
カップが配られると、子どもたちは慎重ににおいを嗅ぎます。
「味噌のにおいがする」
「なんだか、お酒みたいなにおいだよ」

少しドキドキしながら食べてみると、「しおの味がする!」「にがいよ!」「ちょっとしょっぱい!」「後味が味噌と似てる」など反応はさまざま。
他にも泡盛を紹介します。
藤本が「また秘密が見つかりましたね。お米は、お米の形じゃなくなってもおいしかったり味が良くなったりする力があるんだね」と伝えます。

地域の行事を支える「お米」のひみつ

 

しめ縄を見せる 

後半、授業は食べ物以外のお米のひみつへと移ります。
比嘉先生が、廊下に掲示していたドキュメンテーションを指さしながら問いかけました。
「お米のひみつはまだあります。伊是名の行事のことを思い出してみよう」

藤本は子どもたちに問いかけながら、地域行事の記憶を引き出します。行事での写真も見せながら、お正月の飾りのしめ縄は稲をねじって作ったということを確認します。
「みんなで力を合わせて引っ張るウンナー(綱引き)の大きなつなは何からできているかな?」「10月の豊年祭も覚えているかな?」
それぞれの行事を振り返ります。


「米が育つ伊是名では、五穀豊穣といって、米がたくさん収穫できたり、収穫できたことで人々の生活が豊かになりますように、という願いを込めて豊年祭をしているんです」と比嘉先生が説明します。
子どもたちは、お米が単なる食べ物ではなく、伊是名の暮らしや歴史をつなぐ存在であることを発見しました。

お米のパッケージに込めるメッセージ

 

「こんなにたくさんのひみつがある伊是名のお米。これって、とっても大事なものなんじゃない?」
藤本は問いかけます。そして、授業の前半でのお米のパッケージの3つめの付箋に話が戻ってきました。
「ここにはなんて書いてあると思う?なんて書いたらいいなと思う?」

子どもたちは早速パッケージのメッセージを考え始めました。
「お米を大事にしようって書きたい」
「尚円みそもあるよって宣伝したいな」
「おいしいお米って書く!」
「お米はいろんなものに使われるよってひみつを教えたい」
子どもたちの発想は止まりません。自分たちが発見したお米のすごさを、誰かに伝えたいという意欲があふれていました。
藤本は子どもたちに、「今、何が書いてあるか考えるときに、今日何を勉強したかなって考えることがとても大事だよ」と伝えます。

最後に、比嘉先生からうれしいお知らせがありました。
「実は来週の水曜日と金曜日に、今日みんなで勉強した塩麹と尚円みそを使ったメニューが給食に出ます!今日のひみつを思い出しながら、味わって食べてみてね」。子どもたちは「やったー!」と、来週の給食を心待ちにする様子で授業を終えました。

子どもたちが書いた振り返りを紹介します。

・しょうえんみそとしおこうじがおいしかったです。みそがお米のにおいでした。しょうえんのみそとしおこうじは、きゅうしょくに出ていることが分かりました。

・お米はせんべいやおもちにもなっていると分かりました。だから、いぜなのお米はすごいなと思いました。

・お米は、行事でもつかわれて食べものにもなるのが分かった。お米の形じゃなくても、お米と知りました。

・お米のいろいろなことや、こんなに大事だと分かりました。これからはお米を大切にしてたくさん食べたいです。

授業の展開例

〇地域の農家にゲストティーチャーとして来てもらい、話を聞く。

〇自分たちが考えたメッセージをもとにオリジナルのお米のパッケージをデザインする。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop