2026.10.19
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フェイクニュースを分析し、情報と付き合う心構えを育む(前編) 帝京大学可児小学校オリジナル教科「はっけん」授業リポート

生まれた時からスマホとAIがあるアルファ世代の子どもたちは、インターネットやSNSに慣れ親しんでいる。いつでもニュースや自分の知りたいことを自ら調べられる環境は便利だが、そこには誤った情報や、意図的に人を惑わせようとする情報も混じっている。イギリスでは、携帯電話の5Gの電波が新型コロナウイルスを広めていると信じた人たちが基地局に放火する事件が50件以上も起きた。情報の海に出ていくために、信じることと疑うことの間で、自分はどうするのか判断する力の育成が欠かせない。

2026年9月、岐阜県にある帝京大学可児小学校で、手塚 和佳奈教諭による3年生の「フェイクニュースとのつきあい方」の授業を取材した。子どもたちは「何でも信じる人」と「何でも疑う人」を比べながら、情報とどのように付き合えば良いのかを考えた。

【授業概要】

学年:小学校3年(3年2組・13名)
教科・単元名:はっけん「フェイクニュースとのつきあい方」(本時:5/5)
使用教材:電子黒板、提示スライド、ワークシート、「情報とのつきあい方カード」
授業者:手塚 和佳奈 教諭
単元計画:

時 目標 紹介した記事 まとめ:「情報とのつきあい方カード」を作成
1 身の回りのニュースや情報に関心を持ち、「フェイクニュース」の存在を知る。 ・中国で「世界人間ロボット運動会」が始まったという朝日小学生新聞の本物の記事
・手塚教諭が作成した、来年4月に東京に先生が全員AIロボットの小学校が開校するという架空の記事
フェイクニュースとは何かを自分なりにまとめる。
2 フェイクニュース記事を分析する活動を通して、フェイクニュース特有の特徴を見つけ出すことができる。 (前時に紹介した架空の記事を分析) フェイクニュースを見抜く視点を自分なりにまとめる。
3 前時に学習した「フェイクニュースを見抜く視点」を活用し、新たなフェイクニュース記事を批判的に読解することができる。 「虚構新聞」の記事
・カステラの「茶色い皮(底のザラメ部分など)」だけを30枚分層状に重ねて作った和菓子「ラテスカ」(カステラを逆から読んだ名前)が開発された。
・プチトマトを巨大化させたジャンボプチトマトが開発された。
(見つけた「怪しいポイント」について話し合う。)
4 フェイクニュースには「悪意のある偽情報」「悪気のない誤情報」「楽しませるための虚構」の3種類があることを知る。

悪意のある偽情報
・2016年の熊本地震の際の、ライオンが路上を歩いている画像付きの「動物園からライオンが逃げた」という嘘の投稿(拡散され、熊本市動植物園に100件以上の問い合わせの電話があるなど、業務を妨害)
・コロナ禍のトイレットペーパーの買い占め

悪気のない誤情報
・コロナ禍に愛知県警が「深く息を吸って10秒我慢し、せきや息切れなどの症状がなければ、新型コロナウイルス感染の可能性は低いようだ」という誤った情報をSNSに流し、後に謝罪した事例

楽しませるための虚構
・虚構新聞の「幻の『フライエビ』全身化石見つかる 名古屋」などの記事

フェイクニュースの種類を自分なりにまとめる。
★
5(本時)
フェイクニュースの3つの種類を踏まえ、「何でも信じる」「何でも疑う」という極端な情報との関わり方を比べ、自分なりの情報との付き合い方を考える。 (これまでに紹介した記事をもとに考える) 情報とのつきあい方を自分なりにまとめる。

フェイクニュースって、全部悪い?

単元の第1時、種明かしをされるまで、手塚教諭が作成した架空の記事を本当のことと受け取っていた子どもたちは、「だまされた」と驚き、うそのニュースを「フェイクニュース」と呼ぶことを知った。

その後、フェイクニュースを見抜くための「怪しいポイント」や、人を楽しませるためのフェイクニュースがあることを学び、また、熊本地震で「動物園からライオンが逃げた」という事例をもとに偽情報の影響を話し合った。本時は、単元の総まとめとして、情報とのつきあい方を考える。

電子黒板には、悪魔(悪意のある偽情報)、頭を抱える人(悪気のない誤情報)、大笑いしている人(楽しませるための虚構)の3つのイラストが映し出されている。第4時に学んだ、フェイクニュースの3つの種類だ。

「みんな、これ覚えてる?」
「覚えてる!」

手塚教諭の問いかけに、子どもたちは声をそろえた。「ライオンが逃げたやつ」と、具体例を挙げる子もいる。手塚教諭は、警察のアカウントが十分に確認せずに流してしまった誤情報や虚構新聞の記事もあったねと振り返った。

「これまでフェイクニュースのことを勉強してきたよね。世の中には、うその情報だけでなく、本当のニュースもある。世界のことも、科学のことも、事件や災害の情報もある。」
「うそも本当もたくさんある中で、どう情報と付き合っていくかを、今日は考えていこう。」

「何でも信じる人」と「何でも疑う人」を比較する

電子黒板に、左端に「何でもうたがう」、右端に「何でもしんじる」と書かれた一本の矢印が映し出された。両端は極端な二人で、子どもたちは自分がその間のどのあたりにいるかを考える。

「今の自分は、どのあたりだろう?ワークシートに書き込んでみよう。」

ワークシートへの書き込みのあと、手塚教諭は次の質問をした。

「一番右端の人?」
「じゃあ、この真ん中あたりは?」

手塚教諭が矢印の上を指さすたびに、手が挙がる。「何でもうたがう」の端に近いところに1人。あとは中央のあたりに集まり、「何でもしんじる」の側には、ほとんど手が挙がらない。

第1時には、架空の記事をそのまま本当のことと受け取っていた子どもたちが、4時間の学習を経て、「全部うそ」でも「全部本当」でもない場所に自分を置いている。疑う側に振れてはいても、極端には寄らない。その感覚が、矢印の上に表れていた。「みんなは、何でも信じる、何でも疑うではなく、真ん中寄りを選んだ人が多かったね。」

そこで、手塚教諭は、次の問いを出した。

「何でも信じてしまう人のいいところ、心配なところ。逆に、何でも疑ってしまう人のいいところ、心配なところ。グループになって意見を出し合ってみよう。」

子どもたちはグループでワークシートの表を埋め、全体で意見を出し合った。

子どもたちから出た意見

●何でも信じる人
 いいところ:楽しい情報が広まる、いいことを知って自分のためになる、知識がふえる
 心配なところ:情報にだまされる、かんたんにひっかかる、きけん、まちがった知識がふえる

●何でも疑う人
 いいところ:れいせいに(おちついて)考えられる、情報にだまされない
 心配なところ:楽しい「おもしろい」がなくなる、本当のことを知れない、本当とうそがごちゃごちゃ

「知識が増える、いい言葉だね。情報を取り入れれば、たくさん知ることができるね。」
「『全部を疑ってしまうと、楽しくなくなる』と言ってくれたけど、よく考えたら、ドラマや映画も作り話だよね。もちろん、事実に基づいているものもあるけれど、完全な作り話も多い。でも、ドラマや映画は、そういうものだと私たちは受け入れているよね。」

何でも信じる人の心配なところとして、別の児童は魚釣りにたとえた。悪い気持ちで情報を発信する人が釣り人で、何でも信じる人は、簡単に釣られてしまう魚だという。抽象的なことを自分の言葉で具体化しており、学びの深まりがうかがえた。

ほかにも、身近なことに例えて自分の考えを説明する子、友達とは違う角度から意見を言う子など、13人それぞれの見方が飛び交う時間となった。

ニュースを見たとき、まず“自分”は何をする?

「『何でもしんじる』と『何でもうたがう』の良いところを取り入れた『真ん中の人』は、ニュースを見たときに、まず何をすると思う?」

子どもたちからは、次の3つの考えが出た。

  • まず本当かどうか考える
  • まず一回受け入れる
  • ほかのメディアで調べる

「何で調べる?」と手塚教諭が問い返すと、「本」「インターネット」「新聞」「テレビ」と次々に手が挙がり、「公式サイトや専門のサイトを見る」という声もあった。

手塚教諭は「メディア」とは情報を伝える媒体であることを確認し、ほかのメディアで調べるという子どもたちの意見を後押しした。その上で、先生の意見として一つ付け加えた。

「だれかと相談するのもいいんじゃないかと思うの。自分より詳しい人に聞くというのも大事だよね。みんなだったら、お母さんとかお父さんとかになるかな。」

情報との上手な付き合い方を自分の言葉でまとめる

授業の終わりには、本時で学んだことを「情報とのつきあい方カード」にまとめた。

「自分でたしかめる」
「自分の頭でほんとうか考える」

前時までの「フェイクニュースの種類」や「怪しいポイント」をまとめたカードと比べると、子どもたちの言葉は、情報の性質を説明するものから、自分がどう行動するかを述べるものへと変化していた。

3年生の子どもたちが、疑うことと受け入れることの両方を自分の言葉で語れるようになった背景には、手塚教諭が学生時代から重ねてきたメディア・リテラシー教育の研究と、実践の積み重ねがある。

後編では、研究を始めたきっかけ、情報をただ「怖いもの」と思わせないための試行錯誤、そして生成AIの学習や学校全体でのカリキュラムづくりへの展望を聞く。

取材・文・写真:学びの場.com編集部

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