友達の考えで深まる歴史の見方(後編) 子ども自身が学びをつかみに行く授業に

前編では、生駒市立生駒南第二小学校6年生の複線型授業「人物から探る飛鳥・奈良時代」の様子を紹介した。後編では、授業者である仲林政子先生に、授業づくりに対する考え方がどのように変化してきたのかと、その背景にある思いを聞く。
教師が学びを支え、子ども自身が学びを進める授業へ

生駒市立生駒南第二小学校 仲林 政子 教諭
――「自ら考え、仲間とともに深め合う子どもの育成」を校内の研究テーマに授業づくりに取り組んでこられたと伺いました。その中で、授業づくりに対する考え方はどのように変化していったのでしょうか。
仲林 政子 教諭(以下、仲林) 以前は、教材研究を大切にし、子どもたちが「楽しい」「分かった」と感じられる授業をめざしてきました。子どもたちが興味を持って学べるように、知識を分かりやすく伝えるスライドを作ったり、歴史では「戦国大名ゲーム」のような活動を取り入れたりするなど、教材や活動の工夫を重ねてきました。
本校の研究テーマや生駒市の「伴走・越境型研修」の中で、「教師が準備したものを届けるだけでなく、子どもたち自身が問いを持ち、自分で学びをつかみに行ける授業とはどのようなものか」と考えるようになりました。
子どもたちが「これは、どうなっているのだろう?」「なぜこうなるのだろう?」と疑問を持ったとき、教師が答えを示すだけではなく、自分で調べたり、友達と考えたりしながら学びを深められる環境を作りたいと感じました。私自身、教材研究をして見つけたことがあると、すぐに伝えたくなるのですが、そこを少し待つことで、子どもたち自身が発見する喜びや学ぶ楽しさにつながるのではないかと考えるようになりました。
点数だけでは測れない、学びに向かう力を育てる

――その思いが今回の授業にもつながっているのですね。ポイントは、「子どもたちが主体的に学ぶ」という点なのでしょうか。
仲林 はい。子どもたちには、学びに対して「自分が知りたくて学んでいる」という感覚を持ってほしいと思っています。「自分たちが授業をつくっている」「自分たちが学びを調整している」「自分のために学んでいる」「友達が困っていたら、その子が分かるように関わる」そうした主体的に学ぶ姿を大切にしています。
もちろん、学習内容を理解し、知識や技能を身に付けてほしいと思っています。さらに学校での学びを通して、「新しいことを知るのは楽しい」「友達と一緒に考えることで新しい発見がある」などと感じる経験も、これからの人生を支える大切な力になると考えています。これから先、学習や生活の中で難しさを感じる場面があったとしても、自分で学び続ける力や周りの人と協力しながら乗り越えていく力を身に付けてほしいと思っています。
以前は、学習の成果をテストの点数だけで捉えがちでしたが、昨年まで共に研修部として研究テーマについて語り合い、今年度からは生駒市教育委員会指導主事の橋本 泰介(はしもと だいすけ)先生や、「伴走・越境型研修」で出会った方との学びを通して、子どもたちが大人になった後の姿まで考えながら、授業を作ることの大切さに気付きました。そこが自分自身の変化だと感じています。
自由進度学習との出会いから、自己調整学習へ

――生駒市の「伴走・越境型研修*」で、特に印象に残っている学びには何がありますか?
*市内小・中学校に勤務する教員の希望者が、市外の参加者も交えながら、学校や立場の枠を超えて、対面・オンラインで共に学び合う場。担当の学校支援課教育政策室 若松俊介主幹らが、教師一人一人の悩みや「やってみたい!」という思いに寄り添い、共に考え、試行錯誤を支援する。昨年度は若手からベテランまで130人(市内70人)が参加。今年度は3年目となる。
仲林 初めて知ったことがたくさんありました。たとえば、子どもが自分で学習の進め方を選ぶ自由進度学習も、3年前にこの研修で初めて知りました。最初は「自由進度って何だろう」というところからのスタートでしたが、子どもが主体的に学ぶとはどういうことなのか、教師はどのように関われば良いのかを考えるようになりました。
実際に取り組む中で、悩んでいることや自分の取組を同僚であった橋本先生に話すと、「それは自己調整学習につながる 取組ですね」と教えてもらいました。自分が試行錯誤しながら取り組んでいたことを、自己調整学習という視点から捉え直すことができ、そこからさらに学んでみたいと思うようになりました。
――自己調整学習は、具体的にどのように進めたのでしょうか。
仲林 当時、3年生を担任していた頃は、今日の学習のゴールをみんなで確認し、その後は、自分に合ったやり方を選べるようにしました。同じ問題をもう一度やる子もいれば、教科書を見ながらまとめる子、少し難しい問題に挑戦する子、友達と一緒に考える子、先生と確認する子もいます。大切にしたかったのは、「みんな同じやり方」ではなく、「今の自分にはどんな学び方が合っているかな」と考えながら学ぶことでした。とにかく試行錯誤の連続でした。同僚の先生方や、伴走・越境型研修で出会った先生方との実践交流や悩み相談も励みになりました。
――授業を変えていく中で、子どもたちに変化はありましたか。
仲林 少しずつ変わってきたなと感じています。以前は分からないことは先生に聞く子が多かったのですが、今では「これ、なんでこうなるのかな」と友達と話したり、一緒に考えたりする姿が増えてきました。本校で実践している学習アンケートも活用しながら、教職員でこうした子どもたちの学びを振り返る研修を続け、子どもたちの姿に教えてもらいながら、授業づくりに挑戦しています。
本校は、小規模校の特色を生かした教育を行う小規模特認校です。日頃から学年を越えて関わる機会も多く、異学年で学び合うことを大切にしながら、そうした学びの場をさらに広げようとしています。今年度から1~3年生、4~6年生に分かれて探究的な学習を行う「二小タイム」も始めました。そうした関わりが学び合いの土台になっているのかもしれません。上級生が下級生を気遣ったり、下級生が上級生に憧れたりする姿も自然に見られます。「わからないことをそのままにせず、誰かと一緒に考えてみよう」とする子どもたちの姿が増えてきたように感じています。
――研修部長として、教員同士の学びの場づくりでは、どのようなことを大切にされていますか。
仲林 今年はミニ研修もしています。今日のような研究授業も「全体チャレンジ授業」、研究討議も「授業ミーティング」と数年前から呼び方を変えました。
完璧な授業を見せる場ではなく、挑戦を共有する場にしていきたいと思っています。授業をした先生が「チャレンジしてよかった」と思えること、そして、参観した先生も「ちょっとやってみようかな」と思えること。そんなふうに、先生たちの学びが次の実践につながっていく場にしていきたいという思いがあります。
教室の学びを、生活や社会で生かす力へ

――今後、挑戦してみたいことはありますか。
仲林 算数や国語、社会などの教科で学んでいることが、生活や社会の中のいろいろな場面とつながっていることを、子どもたちにもっと感じてほしいと思っています。
昨年、算数のテストの裏にある、学んだことを生活場面で活用する問題に取り組んだ子が、「先生、こういう問題を教えてほしかった」と言いました。その時、知識として教えるだけではなく、それを使って考えたり、生活の中で生かしたりするところまでつなげることの大切さに気づかされました。
知識・技能として学んだことを、生活の中で生かせる力につなげたいと思っています。今年度は、教科で学んだことを実際に使いながら考える学習にも取り組んでいます。5月に行った「屋台フェスを成功させよう」という学習では、算数の単元で学んだ分数のかけ算やわり算、5年生で学んだ分数のひき算や帯分数を使い、必要な材料の量を考えたり、仲間と相談したりしながら、屋台づくりの計画を立てました。
さらに、担任が設定した課題に、班の仲間と相談しながら対応していきました。「どうする?」「こうしたらいいんじゃない?」と話し合う中で、友達の考えを聞き、自分一人では気付かなかった見方に出会うこともありました。そうしたやりとりを重ねながら、班で考えを広げ、課題を乗り越えていきました。一人でじっくり考える時間も、仲間と学び合う時間も大切にしながら、「学んだことが役に立った」と実感できる学びを、これからも子どもたちと一緒につくっていきたいと思います。
記者の目
今回の授業で印象的だったのは、仲林先生が、子どもたちの小さな変化を丁寧に見取ろうとしていたことだ。「くらしによゆうのない時代だった」と書いていた子が、友達との交流を通して「助け合って暮らした時代だった」と考えを深めていった。黒板に書かれたキーワードを手がかりに、自分の考えを進めようとする子もいた。子どもたちの変化をもとに、授業のあり方を更新していく。ここにこそ、学ぶ楽しさを実現するヒントがあるように感じた。
子どもたちが学びを深める道筋は、一人ひとり違う。だからこそ、「どの子も学びを深める」授業をめざして、生駒南第二小学校の教育は、これからも変わり続けていくのだろう。
取材・文・写真:学びの場.com編集部
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