2026.09.07
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

友達の考えで深まる歴史の見方(前編) 生駒市立生駒南第二小学校「社会科」授業リポート

奈良県生駒市では、2024年6月に策定した第3次教育大綱に基づき、一人ひとりが多様な価値観と多様なつながりの中で、「自分らしく」遊び、「自分らしく」学び、「自分らしく」生き、人生を楽しむことができるような教育への転換を推進している。小規模特認校である、生駒市立生駒南第二小学校では、今年度の研究テーマを「どの子も学びを深める複線型授業への挑戦」とし、イエナプラン教育の理念も参考に試行錯誤を重ねている。
2026年7月、6年1組の担任で研修部長の仲林政子先生による社会科の研究授業「人物から探る飛鳥・奈良時代」を取材した。聖徳太子、中大兄皇子、聖武天皇、行基の4人を手がかりに、「飛鳥・奈良時代はどのような時代だったと言えるのか」を考える全6時間の単元だ。5時間目にあたるこの日は、子どもたちが友達と意見を交わしながら、自分なりの時代の見方を深めていった。

【授業概要】

学年:小学校6年
教科・単元名:社会「人物から探る飛鳥・奈良時代」(本時:5/6)
ねらい:聖徳太子、中大兄皇子、聖武天皇、行基の4人の人物の働きや願いを比べながら、どんな世の中にしたかったのかを考え、飛鳥・奈良時代はどんな時代だったのかについて自分の考えを深める。
使用教材:教科書、資料集、人物カード、紙・デジタルのワークシート
授業者:仲林 政子教諭

友達から学び、最後は「個」に戻る

子どもたちは、聖徳太子、中大兄皇子、聖武天皇、行基の中から「推しの人物」を一人選び、2~4時間目に調べてきた。その人物が何をしたかだけでなく、どのような願いを持っていたのか、その人物がいたことで世の中にどのような変化が生まれたのかを、人物カードなどにまとめている。前時の振り返りでは、自分が担当した人物について、全員が「よく理解している」または「だいたい理解した」と回答していた。

今日の学習の見通しが持てるよう、授業の流れ(下記)を大型ディスプレイに表示し、授業が始まった。この日のめあては、4人の人物の働きや願いをつなぎ、飛鳥・奈良時代がどのような時代だったのか考えを深めることだ。

  1. 今日のめあてを確認する(1人でじっくり考える)
  2. グループで人物の働きと願いを伝え合う(班で話し合う)
  3. 4人はどんな世の中をめざしたのか話し合う(班で話し合う)
  4. 飛鳥・奈良時代を表すキーワードを書く(1人でじっくり考える)
  5. 気になる考えを持った友達と交流する(自由に意見を交流する)
  6. 飛鳥・奈良時代はどんな時代だったかまとめる(必要に応じて相談する)

4人の人物に共通する願いは?

まず、班の中で自分の担当人物について説明する。

「書いてあることを伝えるだけではなく、自分が一番伝えたいことは何かを考えてください。その人の働きや願い、その結果どうなったのか、その人がいたからこそ生まれたことを伝えてください。」
仲林先生の言葉を受け、子どもたちは人物カードやデジタルワークシートを見ながら話し始めた。

聖徳太子や中大兄皇子が国の仕組みを整えようとしたこと、聖武天皇が疫病や災害で乱れた世の中を仏教の力で安定させようとしたこと、行基が道路や橋、ため池などをつくり、人々の暮らしを支えたことなどが紹介された。子どもたちは友達の説明を聞きながら、デジタルワークシートに4人の働きや願いを書き込んでいった。

  • 人物カード

  • 交流・まとめシート

4人について共有した後、仲林先生は子どもたちに問いかけた。
「4人に共通する願いはあるのでしょうか。それぞれの人物が大切にしていたことは何だったのでしょう。話し合ってください。」

ある班では、「みんな、争いをしたかったわけではない」「平和や、人々を助けることをめざしていたのではないか」といった意見が出た。子どもたちは、「平和」「人々を助ける」「国づくり」といった言葉を手がかりに、4人に共通する願いを探っていった。

気になる考えの人に話しかけて交流

次に子どもたちは、飛鳥・奈良時代を表すキーワードをiPad(タブレット端末)に書いた。書き終えると、iPadを胸の前に掲げて教室を歩き、気になる考えを持つ相手を自分で探す。

「同じ人物を調べた人と話してもいいですし、気になる考えの人でも構いません。何か新しい発見があるかもしれません。」
子どもたちは友達の画面を見ながら、2人、3人と集まって話し始めた。

この活動は、仲林先生が「伴走・越境型研修」で経験した交流方法を取り入れたものだそうだ。気になるキーワードを掲げ、話したい相手を選ぶ中で、新たな情報を得たり、自分の取組を後押ししてもらったりした経験を、子どもたちの学びにも生かした。

ある子は、十七条の憲法に争いを避ける考え方が示されていると捉え、「平和」というキーワードを選んだ理由を説明した。友達の考えを聞き、自分の言葉を言い直したり、別の人物との共通点に気付いたりする姿が見られた。

交流を通して、時代の見え方が広がる

交流を終えた子どもたちは席に戻り、「飛鳥・奈良時代はどのような時代だったのか」を一人でまとめた。

最初は、自分が担当した人物をもとに、「安定した国をつくる時代」「暮らしにあまり余裕がない時代」など、一つの視点から時代を捉える子が多く見られた。しかし、友達と考えを交流する中で、他の人物の願いや働きにも目を向け、「安定した国をつくりたい、人々を助けたいという願いが出てくるということは、それだけ争いのある荒れた時代だったのではないか」と、時代の見方を変える子がいた。また、「暮らしにあまり余裕がない時代」という見方から、「貧しいけれど、助け合いのある平和な時代」と考えを広げる子もいた。友達の考えを手がかりに、自分の見方を広げたり、考えを深めたりしながら、自分なりに時代を捉えていった。

授業後には、「頭を使った」という声も聞かれた。一人では気付かなかった見方に出会い、友達との交流を通して時代の見え方を少しずつ広げていく様子がうかがえた。

授業者インタビュー

友達との対話も学びの手がかりにする

――今日の授業を終えての率直な思いを聞かせてください。

仲林 政子 教諭(以下、仲林) 授業が進む中で、子どもたちが自然に対話しながら考えを広げていく姿が印象に残っています。最初は、「何を話したらいいのかな」という様子の子も見られましたが、自分で交流相手を選び、対話する場面では、新しい見方に気付いたり、自分の考えを確かめたり、考え直したりしていたことが授業後の振り返りでも分かりました。対話を通して自分なりの考えを広げたり見直したりする学びにつながっていったのではないかと感じています。

本校が取り組んでいる研究テーマは、「どの子も学びを深める複線型授業への挑戦」です。子どもたちが同じ流れだけで学ぶのではなく、一人で考えたり、友達と相談したりする場面を行き来しながら、それぞれの学びを深めていく授業のあり方を模索しています。教科書や資料集を見て自分から学ぶだけではなく、友達の考えも学びの手がかりにしながら、自分の考えを広げたり、深めたり、確かめたりして欲しいと考えています。

――複線型の授業は、縄文・弥生時代の学習でも取り組まれたそうですね。飛鳥・奈良時代の授業で、変えた点はありますか。

仲林 縄文・弥生時代の学習では、「縄文と弥生時代の暮らしを比べて、今の生活に生かそう」という課題を設定し、探究的な学習に取り組みました。「道具」「暮らし」「住まい」「食べ物」の4つのコースから、自分が調べたいテーマを選び、時代の違いやその理由について、複線型にもつながる学び方の工夫も取り入れ、1人で考える、友達と対話する、一緒に調べるなど自分で選択できるようにしました。また大昔の人々の工夫をもとに、今の暮らしをより良くするアイディアの提案にも挑戦しました。

一方で、コースごとに調べたり、考えたりしたことを交流する際に、普段からよく発言する児童に発表を任せてしまう場面もあり、一人ひとりの学びの広がりや深まりを見取ることが課題として残りました。そこで今回は、友達と交流した後、最後は一人ひとりが自分の考えをまとめる時間を設定しました。対話を通して考えを広げたり、深めたりしたことを自分自身の学びとして整理できるようにしました。

また、自分で話したい相手を選ぶ場面を取り入れ、自己決定の機会を増やしました。キーワードを考えることは難しい活動ですが、自分の考えを言葉にしようとする過程で、人物の生き方や時代の特徴についての見方を整理したり、広げたりできると考えました。黒板にもいくつかキーワードを書いて、ヒントにしました。

本単元の最後の時間には、互いの考えを見たり、聞いたりしながら交流するギャラリー形式の報告会を行います。

後編では、一斉授業から、複線型授業・探究的な学びへの転換の取組について伺います。

取材・文・写真:学びの場.com編集部

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop