2023.06.07
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よもぎだんごをつくろう 【食と季節】

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第195回目の単元は「よもぎだんごをつくろう」です。

君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ

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「君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ」古今集 光孝天皇
貴方に差し上げる為に春の野に出て若菜を摘んでいると、わたしの袖に雪が降りかかっておりました。
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「若菜」は春に採れる食用の草のことで、この時期の七草の初芽を食べると万病によいとされていて、今の七草粥の起源になっているようです。昔から野に出て春をいただくということが行われてきました。季節は少し異なりますが、4月になって野草が若葉を出す頃に季節を味わえる活動をしましょう。

今回は、都市部でも生育しているよもぎを取り上げます。よもぎの香りを取り入れてお餅にすることは、生活の中に取り上げられてきた春の風物詩です。よもぎの旬は3~5月頃です。日本では、春に新芽を摘み、もちやだんごに混ぜたり和菓子の材料としたりしてお馴染みです。今回、大学の環境教育論の授業でよもぎだんごをつくりました。幼稚園から小・中学校、特別支援学校でも取り入れることができるよもぎのだんごを作ってみませんか?

1 春の自然に目を向ける

授業の冒頭、ネイチャーゲームを取り入れて、春の自然に目を向けます。
五感を働かせて自然を見つける「フィールド・ビンゴ」や伝統色を見つける「森の色合わせ」を楽しみながら、キャンパスの自然に目を向けていきます。

2 絵本「よもぎだんご」

『よもぎだんご かがくのとも傑作集』 (さとう わきこ)を紹介します。 サクラが散る庭で、どろだんごを作って遊ぶ子どもたちに、ばばばあちゃんが「よもぎだんごをつくろう。今からよもぎを取りに行くよ」と声をかけるところから物語は始まります。春の野原では、よもぎやなずな、よめな、いたどり、つくしなどが見つかります。「よもぎは、葉っぱの裏に毛が生えているから、よく見てごらん」。ばばばあちゃんのアドバイスを聞き、子どもたちはよもぎを摘み始めました。

この絵本をきっかけによもぎだんごをつくりたいという気持ちを引き出します。そこで、よもぎを探します。道端や公園、草原などの日当たりのよいところに群生しています。よもぎを収穫する際には立入禁止の場所などには入らないように注意します。また、経験者と一緒に収穫するようにします。

よもぎは、冬を越した葉も残っていますが、固いので、柔らかい新芽の部分、葉先から15~20センチの部分を摘みます。葉の色が瑞々しい若草色の部分を選んで指先でかるくつまんで摘み取ります。また、今回の授業では、学生の厚意であらかじめ摘んでおいて冷蔵庫に保存しておいたよもぎを使いました。「よもぎ粉」としてスーパーで販売されていたり、通販を利用したりすることもできます。

材料

【だんご】この量で40個くらいできます。

白玉粉120g/上新粉80g/砂糖(だんごに入れる分)40g/よもぎ(ゆでてしぼった状態で)100g

【きな粉またはあんこ】

きな粉適量/砂糖適量/塩少々/あんこ適量

3 よもぎをゆでる

摘んだよもぎは水洗いします。
ごみをていねいに取り除きます。

塩を入れたお湯でゆで、水にさらし、しぼります。
包丁で細かく刻み、たたきます。今回は、すり鉢で小さくしました。

4 まぜてだんごにする

白玉粉と上新粉と砂糖を混ぜ、よもぎと水100ccを入れ、耳たぶくらいのかたさにこねる。

5 ゆでる

だんごにしてゆで、浮きあがってきてから1~2分したら取り出します。
冷水に取り、だんごをしめる。
水を切ります。

きな粉をまぶしたり、あんこをつけたりしてでき上がり。

振り返り

よもぎと聞くと、草餅が思い浮かびます。お灸に使うもぐさは春、草餅やよもぎ団子になるよもぎからつくられます。絵本「よもぎだんご」でもひざを擦りむいた子どもに、ばばばちゃんがよもぎをもんで薬にしています。

沖縄でヨモギは「フーチバー」と呼ばれ、野菜や薬草として考えられていて、風邪をひいた時に雑炊にして食べるそうです。

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沖縄のフーチバーは、県外のヨモギとは違い苦味の柔らかなニシヨモギという種類です。 …… 
沖縄では古くから細かく刻んでシューシ(炊く込みご飯)に入れたり、肉汁や魚汁、山羊汁の臭み消しや薬味として食されてきました。
沖縄県農林水産物総合情報発信事業「くゎっちーおきなわ」より
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よもぎだんごをつくった学生の振り返りです。

○ よもぎ団子を最初に作るとなったとき、出来るかどうか不安でしたが大学生と先生方でよもぎを潰して団子を作ることが想像できなかったからです。現代に生きる児童で、コンビニやスーパーで簡単に手に入るよもぎ団子の過程を想像できる子は少ないのではないでしょうか。でも実際作ってみると美味しくできたのでよかったです。

○ 久しぶりによもぎ団子を作って、自然の素晴らしさに改めて気づくことができました。なぜなら、パッと摘むことができる葉っぱなのに、少し茹でるといい匂いがしてきて、さらに潰して餅に入れるとわたしの大好きなよもぎ団子が出来上がるからです。最近は既存品しか食べていなかったので、自分で作り食べる素晴らしさに気がつきました。

○普段は気に留めなかったよもぎを使って、よもぎ団子を作り、美味しくいただきました。そのおかげで、身近なところにこんなに美味しい草が生えていることがわかり、日常的に何気なく草を観察する機会が増え、よもぎ以外にも食用できる草があるのかどうかなど、植物に対して興味を持つきっかけにつながりました。

○最初はただの雑草と思っていたものが、こんなにも素敵なものに変わることを知り、身近な雑草に目を向けるようになった。売っているものを自分で作れるということがすごく嬉しかった。実際にやってみて思い通りに行かないことがあり、臨機応変に対応することが大切だと学んだ。また、誰がどの役割をすると決めずに行ったため、それぞれがすべきことや次の工程のために何が必要かを考え積極的に団子作りを進められたと感じた。

授業の展開例

〇日本各地のよもぎの活用方法を調べてみましょう。

〇地域に伝わるよもぎの活用方法を取材してみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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