2022.01.22
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みんなで喜ぶ給食献立を考えよう [小3・総合的な学習の時間]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。
第180回目の単元は「みんなで喜ぶ給食献立を考えよう」です。

授業情報

テーマ:学校給食

教科:総合的な学習の時間

学年:小学校3年生

兵庫県芦屋市朝日ヶ丘小学校3年生の子どもたちは、3年生になるまでに自分たちで朝ごはんを考えたり、おせち料理の意味を考えたりと、食に関する学びを積み重ねてきました。3年生になり、初めての総合的な学習の時間が始まるにあたって、身近にあっても深くは考えたことがない学校給食を題材にすることは、学年の子どもたち全員が主体的・協働的に取り組みやすいのではないかと考えました。

そして、実際に自分たちが給食献立を提案する、その過程で給食献立を考えてくれる人、調理してくれている人の思いに少しでも触れてほしいと考えました。一食の献立ができるまでの時間や、込められた願いに少しでも目を向けることができるように、授業を構想しました。

1.給食室の先生からの提案

単元の導入は、栄養教諭に依頼しました。栄養教諭は、子どもたちにとって、食に関するプロです。そのプロの先生からの課題の投げかけは、子どもたちの学習意欲の向上につながると考えたからです。栄養教諭は、次のように提案してくださりました。

栄養教諭から子どもたちへの提案

◆3年生は、これまでに食に関わる勉強をしてきたと聞きました。全校生が喜ぶ給食献立を考えてくれませんか。
◆全ての提案が採用になるかはわかりません。
◆11月の学校給食の献立を考えてほしいです。食品を注文したり、準備したりしないといけないので、9月までに提案してください。

提案を聞いた子どもたちの振り返り

「給食の先生の話を聞いたときは、驚いた。これからがんばりたい」
「朝早くに来て給食の準備をしてくれたり、栄養のことを考えてくれたり、給食の先生は、すごいと思った」
「これからの総合学習が楽しみ。でも、不安もある。アレルギーのこととかも考えたい」

2.給食献立について知る

学習を進めていくにあたって、「何を」「どのように」学習していくのか、子どもたちと共に検討しました。また、学習が始まってからも、子どもたちの意見がでた場合には、内容を入れ替えたり、順番を変えたりなど、その度に学年全員で話し合って考えました。以下は、最終的な単元計画です。

単元計画

①単元名・目標を決定する。
②栄養についての学習
③朝小(朝日ヶ丘小学校)献立一覧作り
④グループごとにテーマを決める。
⑤グループでオリジナル給食献立を考える。
⑥提案する準備をする。
⑦給食の先生に提案する。

①単元名・目標を決定する

学びの足跡が残るよう、 学習履歴を廊下に掲示

学年から司会者を募り、進めました。「単元名」は、「学習の内容が分かる短く簡単な言葉で」ということを共有した上で、全員から単元名に入れたいキーワードを募集しました。それらを司会者が集計し、多かったキーワードを使って、いくつか単元名の案を考え、学年全体に提案して多数決で決定しました。また、「目標」は、2つ立てることを全員で共有しました。一つは「友だちと関わりについて」、もう一つは「学習内容について」としました。これらも、キーワードを募集し、決定していきました。
以下は、話し合いで決定した「単元名」と「目標」です。

単元名と目標

単元名 みんなで よろこぶ給食献立を考えよう
目標1 みんなできょう力して、たすけ合おう
目標2 全校生がよろこぶ給食を考えよう

単元計画や単元名、目標を子どもたちに考えさせることで、学習課題が少しずつ子どもたちのものになっていきました。

②栄養についての学習

栄養教諭による授業

栄養についての学習は、「全校生が食べるのだから、赤黄緑とか考えないといけない」という目的で、子どもたちにとって外せないものでした。
どのように学ぶのかは、「家の人にきく」や「5年生や6年生にきく」「本やインターネットで調べる」などの意見も出ましたが、「近くにプロの先生がいるのだから、給食の先生にお願いしたら、一番わかりやすく教えてもらえそう」という意見から、自分たちで栄養教諭に依頼し、授業をしてもらいました。
給食献立に必要な三大栄養素やタンパク質、脂質などについて、知ることができました。

③朝小献立一覧作り

協力してタブレット作業

朝小献立一覧作りは、学習用端末(タブレット)を活用しました。子どもたち自身で過去1年間の学校給食の写真を学校HPから保存し、献立表を見ながら写真に料理名を入力していきました。
「これは、ひな祭りの献立だね」や「デザートがあるとうれしいな」「これ、すごく美味しいよね。いっぱい野菜も入っている」など、口々に話しながら学習を進めました。

3.グループでオリジナル給食献立を考える

④グループごとにテーマを決める

朝日ヶ丘小の学校給食の一覧

給食献立の工夫(行事食があること、地域の食材を使っていること、お椀やお皿の使い方など)を学習した後は、実際に自分たちで献立を作っていきます。
まずは、「行事食」や「外国の料理」「先生に人気メニュー」「和食」「全校生の人気メニュー」「図書コラボ給食」など、各グループでテーマを決めました。

⑤グループでオリジナル給食献立を考える

他学年にアンケート依頼

次に、テーマにそった献立を考えました。本やインターネットで、改めて情報収集を行いました。その過程で、インド料理で使われる食材や、ホワイトシチューだけでなく、ビーフシチューというものがあることを知ったり気づいたりしていきます。また、相談できる友だちがいる安心感から、子ども同士の対話も途切れませんでした。

テーマによっては、他学年や先生にアンケートやインタビューを実施しました。アンケートやインタビューの方法については、学年全員で学習しました。これらの活動を通して、食についての知識や関心がさらに深まっていきました。

4.給食室の先生に、オリジナル給食献立を発表

⑥提案する準備をする

オリジナルの献立が決定し、最後にそれを提案していく準備を始めます。教師によるプレゼンテーションのモデルを子どもたちに見せ、資料の作り方や話し方を学年全員で学習しました。
そして、学習用端末(タブレット)を利用して、資料作りを行いました。提案の際、以下のことを必ず内容として含むことにしました。

①テーマと、そのテーマ設定の理由
②オリジナル献立と、そのメニューを選んだ理由や願い
③メニューを調理する際の食材や調理方法についての調理の先生へのお願い
④オリジナル献立についてのアピール

⑦給食の先生に提案する

栄養教諭に提案

提案の内容として、その理由や根拠を考えさせることで、学習の目的を再確認させました。資料を作成していく過程で、その提案理由が不明確なものについては、グループで再度オリジナル献立の内容を変更しました。
そして、栄養教諭の先生に思いを込めてオリジナル献立の提案を行いました。しかし、どのグループも採用はされませんでした。事前に、栄養教諭と話し合い、金額面や、栄養面、調理の時間等について指摘してもらえるようお願いをしてしました。そして、改めて提案日を設定しました。
以下は、提案を終えて栄養教諭からアドバイスをもらった時間の振り返りです。

栄養教諭からアドバイスをもらって

○提案するのは、とても緊張した。給食の先生に「黄色(三大栄養素)が多い」と言われた。それについて、考えられていなかったから、直していきたい。
○友だちと連携プレー(発表について)ができた。まだチャンスがあるから、みんなで相談したい。
○鯛が高いことを知った。違う魚を調べたい。

提案が成功しなかったことが、新たな課題を引き出して、多くの子どもたちにとって学習課題が、自分のものになっていきました。休み時間等に、栄養教諭に詳しいアドバイスを聞きに行ったり、調べ学習に立ち返ったりするなど、意欲的に活動する姿が見られました。

第2回提案日は、栄養教諭からのアドバイスによって、変更した点のみ発表しました。そして、数日後に採用グループの発表を栄養教諭より行いました。全員で手を合わせて期待をふくらませました。オリジナル給食献立が採用されたのは、5つのグループです。5つのグループの学習は、まだ続きます。教師から、「いろんな人の協力でこのオリジナル給食できたのだから、お昼のニュースを作って、みんなの活動を知ってもらうのはどうかな」と提案しました。この提案にも、子どもたちは「やったあ」と言って前向きに取り組みました。ニュースは動画で残し、学校でオリジナル献立が出るときに、各教室で放映しました。以下は、それぞれの動画の内容です。

お昼のニュース動画の内容

①自分たちが総合学習で学んだこと(他グループの写真等使用)
②テーマと、そのテーマ設定の理由
③オリジナル献立と、そのメニューを選んだ理由や願い
④全校生へ呼びかけ

5.学習を終えて

11月の献立表を楽しみに待っていた子どもたち。配られた時には、採用されたグループも、そうでない他のグループを大喜びでした。たしかに採用してもらえるように、オリジナル給食献立を考えてきたのはどこのグループも同じです。しかし、子どもたちの振り返りを読んでいると、結果だけではなくその学んできた過程に価値を見出していました。また、保護者の方にも単元の学習を終えて、子どもたちにメッセージをもらいました。その言葉も、この単元の学習を価値付けてくれました。

以下は、子どもたちの単元最後の振り返りです。

子どもたちの単元最後の振り返り

○今日いよいよ給食の先生に結果を聞きました。選ばれたグループも選ばれなかったグループもあります。でも積み重ねがとても大切だと思いました。グループで喧嘩とかもしたけれど、栄養の勉強をしたり、話し合ったりして、その積み重ねが発揮できたのだと思います。いろいろなグループの献立が聞けて面白かったです。きなこパンが学期に一回しか出ないことも初めて知りました。

○この学習で学んだのは実行力です。なぜならみんなで計画を立てたり給食室の先生にお願いに行ったりと、みんなで給食室の先生がやっていることを頑張ってやろうとしたそのチャレンジがすごいと思うからです。

○自分が好きなものを入れても、栄養がないことがあるから難しいと思いました。給食室の先生に三大栄養素を教えてもらって、それが揃わないといけないことを初めて知りました。第一回提案の時はアレルギーのある子が全然食べられない献立だったので、第二回のときには工夫をしました。採用されて嬉しかったです。

○これからも、栄養を気にしながら食べ物を食べたり、家の献立を考えたりしたいです。

○献立1つを考えるのに、たくさん時間がかかりました。給食室の先生はとても大変だと言うことを知りました。なぜなら、アレルギーや栄養を考えなくてはいけないからです。

保護者の方からのメッセージ

○献立の中にデザートの梨を入れるとお金がかかることから、梨をサラダに入れるように変更するなどお金の事まで考えられていたことに感心しました。「うまくいかなくても楽しかった」「考える力が身に付いたし、次に生かしたい」と思ってくれていることが、この学習で学んだことだと思います。

○この学習が始まってから、買い物について行きたいと言って、一緒にスーパーへ行ったり、夕食の献立を一緒に考えてくれたり、今まで全く興味を示さなかったことを自分から積極的に知ろうとしてくれたことが嬉しかったです。学習は終わりましたが、家で料理を手伝ったり、メニューを考えたりしたいと言ってくれたので、引き続き一緒に楽しみましょう。

○家でタブレットを使って発表をしてくれた時はびっくりしました。苦手な食材も美味しく食べられる工夫を考えたのは、素晴らしいです。採用はされませんでしたが、今度一緒に苦手な椎茸を入れた餃子を作ってみましょうね。

以下は、本単元で使用したOPPによる振り返りシートです。

授業の展開例

〇給食の献立に込められた栄養士の思い(よく噛んで食べよう、地域の食材に関心を持ってほしいなど)を献立の写真や献立表をもとに話し合います。

辻川 暁  

芦屋市朝日ヶ丘小学校教諭
授業づくりでは、いかに学習課題を子どもたちにとって「自分事」にしていくかを大切にしています。学習課題を「自分事」として、主体的に活動する充実感を味わうために、今回の単元では、単元の導入を栄養教諭に依頼したり、単元の進めるにあたって司会者を子どもたち任せてみたりしました。
これから取り組んでみたい食のテーマは、食の視点から考えるSDGsについてです。「まだ食べられる食べ物」が多く破棄されています。子どもたちと「食品ロス」について考える機会をもっていきたいと考えています。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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