食から考える防災 ~防災バッグの中にどんな食べ物を入れたらいいかな~ 【食と防災】[小3・学活]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。今回は芦屋市立山手小学校、瀬古紗織先生の授業「食から考える防災 ~防災バッグの中にどんな食べ物を入れたらいいかな~」です。
授業情報
単元:食から考える防災テーマ:食と防災
教科:学活
学年:小学校3年
時間:1時間
1.授業づくりにあたって
最近の報道では今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は、80%と言われている。地震が起きたら自分の身は自分で守り、考えて行動すること、人と人との協力が不可欠となる。本時では、もしかしたら口にすることはないかもしれない食べ物について考えてみることが面白いが、そうした食べ物を普段食べているものから考えていくというところが子どもたちにとっては難しいかもしれない。災害に遭い、水やガス、電気が使えないという状況を想像しながら、子どもたちがどこまで非常食について考えられるかがポイントとなる。
知識として「長期保存できるもの」というのは分かるかもしれない。しかし、逆にどのようなものが長期保存できるかという具体的な例が出てこないのではないかと思う。そのようなときはグループ活動から一旦全体での話し合いに転換し、他のグループから意見をもらうようにする。それでも意見が出ない場合は「例えば缶に入っているものとか・・・(缶詰)」「甘くてどちらかと言えば硬いお菓子とか・・・(クッキーもしくはおせんべい、おかき)」というようにヒントを出そうと考えている。食品が先に出た場合には、それぞれのものが持つ利点を考えるように促し、以下のような条件が子どもたちの言葉で出てくると期待した。
- (常温で)長持ち
- 健康、元気になる(栄養価が高い)
- すぐに食べられる
- 軽い
- 持ち運べる
- おいしい(食べ慣れている)
2.授業展開
(1)導入
子どもたちが書いた作文を紹介。
「もし、今、地震がおきたら」私が毎日とっても心配しているのは大地震です。なぜかというと、すごくゆれて、たんすなどがたおれて、下敷きになったり、家族がばらばらになったりするからです。だから今、南海トラフ巨大地震がものすごく心配です。津波も心配だし、ゆれも心配です。けれど、家に防災リュックがあるので少しは大丈夫かなあとは思います。
地震のボランティア活動などにできるだけ協力して、被災地の人に元気をおくりたいです。地震って少しでも日頃の備えをしていなかったら大変なことになるから、日頃の備えをして、「おはしも」を守るようにしたいです。
- 地震や災害が起きたときのために何か対策をとっているかを思い出し、交流する。
- 教師が持っている防災バッグを見て、何が入っているかを予想する。
スリッパ、ライト、ラジオ、お金、水・・・食べ物
(2)防災バッグにどんな食べ物を入れたらいいか話し合う。
(3)各グループから出た意見を黒板に貼り、全体で防災バッグに入れたらいいものの条件をみつけていく。
- もえにくい
- 保ぞんしやすい(長持ち)
- カビがはえにくい
- 子どもも食べられる
- おいしい(すきなもの)
- そのまま食べられる
- すぐにあけられる
- えいようがある
- しゅるいが多い
- コンパクト
- 他のものといっしょに食べられる
- つめたくても食べられる
(4)学校の防災倉庫の中にどのようなものが備蓄されているか確認する。(写真を使って)
(5)ふりかえり(ふりかえりシートより)
- ぼくは、じしんたいさくをしておくべきだと思いました。なぜなら、じしんがおきたときに何も用意していなかったら、何も食べるものがなくなるからです。生きるには食べ物がひつようなので、いつも用意しておくといいと思いました。
- ぼくは、この学習をして、ライトなども大事だけれど、やっぱり飲み物や食べ物が大事だなと思いました。じしんのときにどうするかが学べてとてもよかったです。
- ぼくたちの班に出ていなかった物が他の班に出ていて、すごいなと思いました。いろんなものが非常食として使えるのだなと思いました。ぼくもローリングストック※に取り組みたいなと思いました。
- じしんやさいがいのためのバッグをおいているけれど、自分で用意しておかないとだめだなと思いました。
※ローリングストック・・・普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておくという方法。
授業の展開例
○緊急時に備えた食品の備蓄について調べてみましょう。
○ローリングストック法などによる食品の活用方法を調べてみましょう。
瀬古 紗織(せこ さおり)
芦屋市立山手小学校 教諭
低学年から高学年までどの学年も担任してきた。各学年に応じた授業展開を考え、ここ数年は1つの教科だけではなく、教科と教科を関連させた食育の学習に取り組んでいる。保護者や地域の方々の協力を得て子どもたちと一緒に楽しみながら学習をすすめることをテーマにして研究を積み重ねている。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
監修:藤本勇二/文・写真:瀬古紗織
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