2020.02.19
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ふゆやさいはおもしろい 【食と季節】[小1・学活]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。今回は大阪市教員、松井香奈先生の授業「ふゆやさいはおもしろい」です。

授業情報

単元:ふゆやさいはおもしろい
テーマ:食と季節
教科:学活
学年:小学校1年
時間:1時間
便利になった世の中。スーパーに並ぶ野菜は、この季節しか食べられないということも少なくなりました。そのため、子どもたちから冬の食べ物としてイチゴが出てくることも珍しくありません。旬の食べ物を食べるということは、栄養価の側面だけでなく、冬を味わい、そして季節感を味わうことにも繋がります。1年生にとって難しい旬という言葉を扱わないで、冬に出来る野菜やその特長を知り、味わって食べることに繋がってほしいと考え、授業を行いました。あわせて、子どもたちが季節に目を向けるには、その足場となる経験や活動といった学びが必要となります。今回は、生活科の「ふゆのしるしみつけ」(冬のものをみつける活動)と繋げて冬の野菜について授業を行いました。その1時間の授業を報告します。

1.夏野菜と冬野菜はちがう?

用意したのはトマト、ナス、キュウリ、ダイコン、カブの野菜の掲示物。その掲示物を一つずつ手にとって「これは夏野菜?冬野菜?」と子どもたちに尋ねます。「トマトは夏ー!」「国語の教科書にも載っていたよ!」「となりのトトロにも夏野菜でトマトが出てくる」「なすびは、難しい」「冬そうでもある(冬野菜かも知れない)」「なすびも、夏!」と、子どもたちは見たことのある野菜を自分の経験と結びつけて仲間分けをしていきました。

2.ちがうところはどこだろう?

次に、「夏野菜と冬野菜の違うところはどこかな」と問いかけます。「緑色が夏野菜には多そう」「葉っぱになるのと土にできるのの違いかな」など、班になって話し合うことで次々と意見が出てきました。
  • 「夏野菜は葉っぱが多くてツルに野菜ができる。冬野菜は土に野菜ができる」
  • 「夏野菜の方がさっぱりした味の野菜が多くて、冬野菜はあたたまる味の野菜が多い」
  • 「夏野菜は葉っぱの部分が少ないけど、冬野菜は葉っぱの部分が多い」
  • 「夏野菜は上に伸びて育っているけれど、冬野菜は下に伸びて育っている」
  • 「夏野菜は皮を剥かないで食べられる野菜が多いけど、冬野菜は皮を剥かないと食べられない野菜が多い」
  • 「夏野菜は日に当たるところが赤・紫・緑になっていて、冬野菜は日が当たらないから白色が多い」
  • 「夏野菜はつるつるしてる感じで冬野菜はざらざらしている」
子どもたちは、夏野菜と冬野菜を比較することによって、野菜の特徴を捉えることができました。また、これまでの生活科でツルがあるアサガオや、チューリップを育ててきた経験から、野菜のでき方に興味をもって話し合っていました。

3.夏と冬のちがいは?

次に、「夏野菜と冬野菜の育ち方の違いがたくさん出てきたね。どうして野菜の育ち方が違っているんだろう」と聞きます。
  • 「風も気温も暑いのが夏で、風が冷たくて寒いのが冬」
  • 「夏は太陽がいっぱい当たる。冬は太陽があんまりでない」
  • 「夏は夜になるのが遅くて、冬は夜になるのが早い」
  • 「冬には雪が降る」
  • 「冬は風が吹く」
冬と夏の季節の違いを話し合っていると、子どもから「野菜はあったかいところが好きなんじゃない?夏は暑いから、太陽の上の方に伸びていて、冬は寒いし太陽がないから土の温かいところになると思う」との意見が出てきます。それを受けて、「ほんとだ。夏野菜は太陽みたいな色をしていて冬野菜は雪みたいな色をしている」という子、「夏野菜は夏によくスーパーで売っていて、冬野菜は冬に売っている!」と気付く子もいました。季節に合わせた野菜ができることに目を向けることができたようです。

4.ふゆのやさいは○○○○

最後に、「ふゆのやさいは」のあとに続く言葉を子どもたちと考えました。以下のような言葉が出てきました。
  • かぜをひかない。
  • 白色が多い。
  • 冬の給食によく出てくる。
  • 赤色や紫色などが少ない。
  • おもしろい。
  • あまりツルで育たない。
  • スーパーでそのまま売っている。夏野菜は、パックか袋に入っていることが多い。
「ふゆのやさいは」のあとに続く言葉を考えることによって、子どもたちがそれぞれ本時で学んだことを確認することができました。今回の授業は生活科の実践と結びつけることによって、冬の季節をより豊かに知る機会となったようです。

授業の感想

  • ふゆやさいはふゆにたべるとおいしいものがおおくて、なつやさいはなつにたべるとおいしいとわかった。
  • ふゆやさいはふゆのきゅうしょくによくでてくる。ふゆやさいは土にできるのがおおくて、したにのびる。なつやさいは、上ではなのなるのがおおいってわかった。
  • みんながいってくれたから、ふゆやさいはふゆにたべるとげんきになるってわかったよ。
授業の展開例

○冬野菜を使った料理を調べてみましょう。
○野菜の特徴を生かしたオノマトペを使って詩を作ってみましょう。

松井 香奈(まつい かな)

大阪市教員
文化的な食、社会的な食を教材化することを通じて 授業実践に取り組んでいます。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・写真:松井 香奈

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