2019.12.18
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切手で考える和食 【食と文化】[小5・学活]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。今回は「切手で考える和食」です。

授業情報

単元:切手で考える和食
テーマ:食と文化
教科:学活
学年:小学校5年

1 ふるさと切手で自己紹介

授業は、「今日は、みんなのよく知っている栄養士の平良先生と藤本と一緒に勉強します。よろしくお願いします」の言葉から始まりました。「ところで、藤本はどこから来たでしょうか」と聞くと、子どもたちはキョトンとしています。「では、ヒントを出します。切手って知ってますか」と聞くと、「知ってる」「手紙に貼るやつ」と口々に元気な声が帰ってきます。「都道府県を紹介した切手があります。この切手から藤本先生がどこから来たか、考えてください」と、ふるさと切手(地方自治法施行60周年記念シリーズ 兵庫県 平成25年1月15日発行)の下半分を示します。そこには、メリケンパーク、出石の辰鼓楼、新舞子干潟、淡路・灘黒岩水仙郷の図柄の切手が載っています。
さすがに、子どもたちには難しかったようで、「どこだろう」、「この港はどこかな」と呟いています。次にシートの上半分、コウノトリと姫路城の図柄を見せると、「姫路城だ」、「世界遺産だ」、「だったら兵庫県かな」と元気な声で兵庫県であることをみつけてくれました。こうして、ふるさと切手をもとに自己紹介を行い、切手に関心をもたせることができました。

2 沖縄県なら何がふるさと切手に

今度は、このふるさと切手シリーズの沖縄県版には、何が切手に載っているかなと聞きます。子どもたちがペアになって話し合い、発表です。「首里城が載っていると思います。世界遺産だから」、「沖縄の守り神だからシーサーだと思います」「美ら海水族館には、たくさんの人が来るから」のように理由をつけて発表していきます。「ハイビスカス」「青い海」「サーターアンダギー」などどんどん発表が続きます。
子どもたちの発言を受けて、先ほどのふるさと切手から(沖縄県 発行日 平成24年4月13日)紹介します。そこには、首里城と組踊(くみおどり)、首里城 守礼門(しゅれいもん)、琉球紅型(りゅうきゅうびんがた)、琉球舞踊(りゅうきゅうぶよう)、デイゴ、川平湾(かびらわん)(石垣島(いしがきじま))が載っています。子どもたちからは、「やっぱりそうだ、デイゴだった」などにぎやかな反応が返ってきます。こうして、地域の特徴を取り上げた切手に関心をもつことができたようです。和食を考える次の活動につなげることができました。

3 和食の切手と出会う

今度は、「切手には、和食が載っているものもあります。どんな年中行事と食べ物、食べ物は行事食というんだけど、それが載っていると思いますか」と聞きます。「和の食文化シリーズ 第2集 年中行事」(和食切手)から、ひな祭りの図柄を見せると、「ひなあられだ」「給食にも出てくるよ」と反応。ひなあられは、行事食であり、ひなまつりは、年中行事であることを確認して、年中行事と行事食について話し合いを進めます。和食切手から「端午の節句」、「七夕」「重陽の節句」などの年中行事の図柄をもとに行事食を確認していきます。

4 地域の和食を探す

続いて、栄養士の平良先生から学校給食には和食(郷土料理)を献立にしていることを紹介します。中身汁は、豚の肉を使ったお祝いの時に食べる汁、イナムドウチは、旧正月に欠かせない豚肉を使用した汁物、そんな話をすると、子どもたちは、「食べた」「おいしかった」と口々に言っています。「4月の進級祝いに中身汁は給食に出しましたね」と栄養士が話すと、子どもたちは嬉しそうに頷きました。
こうした和食には、みんなでお祝いしたり、幸せを願ったりする意味があることを確認して、藤本が「和食切手にうるま市のみんなはどんな郷土料理を載せたいかな」と聞きます。自分たちの地域にある郷土料理について話し合い、ホワイトボード・シートに記録します。子どもたちは、行事の時に食べるんだ、給食に出るものがいいな、お祝いの時に食べるのはなんだろうと話し合いながらホワイトボード・シートに書いていきます。当日は、栄養士の先生方の研修会も兼ねていましたので、子どもたちの話し合いにも積極的に加わっていただきました。

5 地域の和食が給食に登場

子どもたちの話し合いが終わり、自分たちで選んだ和食を発表します。発表するたびに、そうそう、それもいいなあと互いの気付きを大切にしています。子どもたちの日常生活にある和食に目を向けることができたようです。
続いて、児童が選んだ和食の中で、栄養士がすでに給食の献立として取り入れている「ウンケージューシー」「アーサ汁」「ミミガーウサチ」「沖縄そば」「ウムニー」「ボロボロジューシー」「クーリジン」を確認します。
最後に、「切手で□を考える」の中に入る言葉を考えます。「和食」「食べ物」「給食」の言葉が出てきました。
授業後、二人の男の子が、「ヤギ汁もあるよ」と言ってくれました。「どんな時に食べるの」ときくと、「みんなが集まった時に食べる」と教えてくれました。和食は、特定の食べ物を示すものではなく、長い時間それぞれの地域の風土に合わせて食べられて来たものであることに気付いてくれたようです。
それには平良先生が郷土料理を学校給食に登場させてきたこれまでの実践の積み上げがあったからです。本授業の様式は、全国どこで実践可能であると思っています。なお、「和の食文化シリーズ」の第1集は「一汁三菜」、第2集は「年中行事」、第3集は「生活に根ざした米料理」、第4集は「和菓子」をテーマにデザインしています。いずれも授業化できる教材です。

授業の展開例
6年生家庭科 地域の郷土料理を調べて調理してみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文・写真:藤本勇二

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