2005.09.27
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地震対策を学ぶ 「子どもたちのために『いい授業』を」

9月1日の防災の日に、学校で避難訓練を実施したところもあると思いますが、こうした訓練を行うのは、本当の災害が発生した際に、落ち着いた行動を取れるようにするためです。地震はいつくるか分からないものだとしても、普段から準備や心構えができていれば、ケガを防ぐことや、正しい避難行動が取れるようになります。そのためにも防災に関する正しい知識を身に付けることは必要。そこで今回は、防災関連の施設やソフト、書籍などを紹介します。

池袋防災館

地震、煙、消火、救急の4つのコーナーを体験

地震や火災などの災害に巻き込まれた際の正しい対応を、より多くの人に知ってもらおうと、東京消防庁は都内に3つの防災館を設置している。そのうちの一つ池袋防災館は、池袋駅から徒歩5分の場所にある。館内には「地震コーナー」、「煙コーナー」「消火コーナー」「救急コーナー」が設けられていて、インストラクターの指導に従いながら、4つのコーナーを2時間程度で、順番に見て回ることができる。
地震コーナー

地震コーナー

「地震コーナー」では震度6強の横揺れを実際に体験。子どもは座布団を頭にかぶってテーブルの下に潜り込み、大人は揺れが大きくならないうちに火の始末をしたり、部屋に閉じ込められないようにドアを開けたりする。こうして、大きな揺れを体感することで、とっさの時に冷静な判断ができるようになる。
「煙コーナー」では、煙が充満した通路を、出口に向かって避難する。3台のスモークマシンから出る煙は無害なものだが、簡単な迷路のようになっている通路に煙が満たされると、視界がさえぎられて思わずあせってしまう。中には行き先を見失って入り口に戻ってしまう人もいるほど。煙は上の方にいくことを教わった参加者は、高さ120cmのところにあるセンサーを鳴らさないように、身をかがめて通路を進んでいく。
消火コーナー

消火コーナー

「消火コーナー」は、大型スクリーンに映し出される炎の映像に消火器を噴出して、消火作業を行っていく。家や学校に消火器が置いてあっても、それまでに使ったことがないと、火災の時は気が動転して、うまく扱うことができない。そこで、安全ピンを抜いて、ホースを火元に向け、レバーを握って噴出させるまでの一連の手順を覚えていく。
救急コーナー

救急コーナー

「救急コーナー」では、モデルの人形を使って、人工呼吸や心臓マッサージ、やけどの手当てなど、応急手当の方法を学ぶ。救急車が来るまでの応急手当が、負傷者の生命を左右することがある。そのためにも、正しい処置の仕方を知っておく必要がある。

この体験ツアーは一人からでも参加できるが、毎日多くの人が来館するので、事前に電話で空き状況を確認しておくのが確実。定員は1グループ32名で、最大128人まで体験が可能。また、館内では首都圏を大地震が襲う臨場感たっぷりの3D映像の防災映画が上映されているほか、119番の通報の仕方が学べるコーナーなどもあり、家族で訪れ防災の意識を高めるのに最適。

 都内でこのような体験ができる施設として、池袋防災館の他にも本所防災館と立川防災館がある。

本所防災館(http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-hjbskan/index.html)は、錦糸町駅または押上駅から徒歩10分。地震体験や煙体験などに加え、レインコートを身に付けて、台風が上陸した時のような大雨や強風を体験する「暴風雨体験コーナー」がある。

立川防災館(http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-ttbskan/)は、JR立川駅北口1番のりばからバスに乗り、立川消防署前で下車。ドーム型スクリーンの防災ミニシアターでは、地震が起こった街の状況が映し出される。

池袋防災館
所在地 〒171-0021 東京都豊島区池袋2-37-8
交通 池袋駅(西口・南口・メトロポリタン口)から徒歩5分
開館時間 午前9時~午後5時
休館日 火曜日・第3水曜日(国民の祝日にあたる場合は、その翌日)、年末年始(12月28日~1月4日)
入館料 無料
駐車場 無し

静岡県地震防災センター

大型スクリーンと水槽で大津波をシミュレーション

静岡県地震防災センター

静岡県地震防災センター

静岡県といえば、東海地震が発生した際には大きな被害が出ることが予測されているが、静岡県地震防災センターでは、防災の知識を深めることで、正しく地震に立ち向かってもらうことをねらいとしている。
TSUNAMIドームシアター

TSUNAMIドームシアター

館内の展示の中でも目玉となるのは、迫力ある大津波のシミュレーションを体感できる「TSUNAMIドームシアター」。広い範囲にわたって駿河湾に面している静岡県では、地震によって発生する津波の恐怖を、多くの人に知ってもらう必要がある。そこで、400インチ相当の大型スクリーンに映し出される映像と、縦30m×横10mの屋内津波水槽に貯められた大量の水によって、リアルな津波を体験してもらい、どうすれば津波から身を守れるかが学べるようになっている。
また、地震の怖さを知ってもらうには、その揺れを体験してもらうのが一番ということで、「地震体験コーナー」では、前後・左右・上下の3方向に動く起震装置で、実際の地震と同じような揺れを発生させることができる。ここでは関東大震災や阪神・淡路大震災と同じような揺れを再現することも可能。
耐震コーナー

耐震コーナー

そして、地震に対して、どのような備えを取っておくべきか理解してもらおうと、「耐震コーナー」では、建築中をイメージした実物大の家を用意。家屋の耐震化や、家具の転倒防止、防災ベッドなどのコーナーが設けられ、地震に強い新築モデル模型が実物大で展示されている。

その他にも、東海地震で及ぶ被害の大きさや、警戒宣言発令までの流れを100インチマルチスクリーンで学べる「東海地震コーナー」や、食器棚や本棚などの家具に転倒防止対策を施した部屋と、そうでない部屋では、どれだけ被害が違うかを比べた「家庭内地震対策コーナー」、地震の際には何を準備すれば良いか知ってもらうため、可搬ポンプや炊飯器、ろ水器の実物を展示した「自主防災コーナー」などがあり、「消火体験コーナー」では、実際に家庭内消火器やビル内消火栓を使って、消火訓練が行われている。

こうした1Fの展示のほかに、2Fには地震防災の学習・研修を行うための「ないふるホール」(200名収容)、「なまずホール」(50名収容)があり、防災図書室には、地震防災対策の各種調査や、各市町村・都道府県の資料など約1万冊が所蔵されている。来館者は防災図書室の資料を、自由に閲覧することができるほか、貸し出しも行われている。

実際に足を運ぶのは難しいという人でも、センターのホームページにアクセスすれば、地震の起きる仕組みを「小学生向け」と「一般向け」に説明したコーナーを見ることができ、家庭や学校では、どのような地震対策を取るべきかが分かる。また、地図を使って行う防災訓練である「DIG」のやり方も紹介されているが、みんなで地図を囲みながら、地震で生じる被害をイメージしていくことで、自分たちのまちの防災対策を考えることにつながるという。そして、一通り地震の知識が身に付いたと思ったら、復習の意味を込めて、全部で10問ある地震防災クイズにも、チャレンジしてほしい。

静岡県地震防災センター
所在地 〒421-0042 静岡市葵区駒形通5-9-1
交通 JR静岡駅より、静鉄バス西部循環(駒形回り)線「静岡駅前(3番)」で乗車(約15分)、「駒形5丁目」で下車、徒歩2分
開館時間 午前9時~午後4時
休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
入館料 無料

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター

震災直後のまちの様子をジオラマで再現

阪神・淡路 人防センター外観

阪神・淡路 人防センター外観

1995年1月17日の早朝に、突如として襲った阪神・淡路大震災。この6,433人もの死者を出した未曾有の大災害から10年が経過したが、その経験と教訓を残していこうということで建てられたのが阪神・淡路大震災記念「人と防災未来センター」。平成14年4月に開館した「防災未来館」と、平成15年4月に開館した「ひと未来館」により構成されている。
1.17シアター

1.17シアター

阪神・淡路大震災の記録を、様々な角度から見ることができるのが「防災未来館」。1Fエントランスからシャトルエレベーターで4Fまで上がり、2Fまでのコーナーを順に体験していく。4Fに出ると、震災前のまちなみ写真展示がしてある。1.17シアターでは震災発生で都市が破壊されていく様子を大型映像で見ることができる。
震災のジオラマ模型

震災のジオラマ模型

さらに、震災直後のまちの様子を実物大のジオラマ模型で再現。そのリアルな迫力には思わず圧倒される。そして大震災ホールでは、震災から復旧していく姿が、ドキュメンタリー映像で紹介されている。

3Fで展示されているのは、被災者の方から寄せられた膨大な震災に関する資料。来館者はバーコード・ナビゲーターを手に持って、資料を見て回るが、展示物に関する詳細な解説は、映像や音声とともにナビゲーターに表示される。ここで展示されている資料は、あまりにも数が多いので、自分は何を調べたいか目的を持って、見て回ったほうが効率的。また、震災を語り継ぐコーナーでは、実際に震災を体験した人が、語り部として当時の体験を語ってくれる。

 こうした4Fや3Fの展示で見てきたことを踏まえて、学習できるのが2Fのフロア。防災情報コンテナには、行政が防災に対して、どのように取り組んでいるかがまとめられ、設置されているパソコンは、防災関連のサイトにリンクがはられている。そして、防災ワークショップでは見るだけでなく、体を使って防災の知識を深めていくことができる。

 この防災未来館と併設して建てられ、ブリッジを渡って入館できるのが「ひと未来館」。自然や人の命の素晴らしさを感じることができる構成となっており、「ブナ林の四季」では、倒れたブナから新芽が芽生え、力強く成長していく様子が美しい映像で映し出される。また、「あしたへ向かって」のコーナーでは、「今、感じていること」や「未来の自分・家族、友人に伝えたいこと」を、メッセージとして残しておくことができる。

 そして、センターのホームページでは、子どもたちに防災のことや、「人と防災未来センター」のことを理解してもらおうと、「防災キッズミュージアム」のコーナーが用意されている。このコーナーでは、子どもにも分かりやすい文章で、地震はどうして起こるのか、地震が起きたらどうすれば良いかを解説。また、「人と防災未来センター」の展示内容も、画像とあわせて、フロアごとにどのようになっているかが一目で分かるようになっている。

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
所在地 〒651-0073 神戸市中央区脇浜海岸通1-5-2
交通 阪神電鉄岩屋駅、春日野道駅から徒歩約10分
JR灘駅南口から徒歩12分
阪急電鉄王子公園駅西口から徒歩約20分
開館時間 午前9時30分~午後5時30分(入館は午後4時30分まで)、7月~9月は午前9時30分~午後6時(入館は午後5時まで)、金・土曜日は午前9時30分~午後7時(入館は午後6時まで)
休館日 毎週月曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12月31日・1月1日)
入館料 防災未来館(大人500円、高校・大学生400円、小・中学生250円) 
ひと未来館(大人500円、高校・大学生400円、小・中学生250円) 
両館とも(大人800円、高校・大学生640円、小・中学生400円)
※いずれも20名以上の団体割引あり

キミたちはだいじょうぶ?

2択クイズで防災に関する知識を確認 システムアーチ株式会社

防災ソフト 地震

防災ソフト 地震

地震や台風などの災害の怖さを、子どもに分かってもらおうと思っても、難しい言葉で説明していては、なかなか理解してもらえない。そこで、アニメやクイズを使って、防災への興味を高めてもらおうというのが、低学年向け防災・防犯ソフト「キミたちはだいじょうぶ?」のねらい。子どもやパソコンになれていない人でも簡単に扱えるように、CD-ROMを入れたら自動で起動するようになっていて、操作もマウスのみで行える。お父さんやお母さんと一緒にパソコンに向かい合って、お互いに話し合いながら、災害からどうやって身を守っていけば良いかを学ぶことができるソフトだ。
台風の被害

台風の被害

その内容は、「自然災害」、「人的災害」「安心して暮らすために」の3つのコーナーから構成されていて、ガイド役のキャット博士の説明を聞きながら進めていく。第1章の「自然災害」のコーナーで学ぶことができるのは、地震、台風、火山、津波の4つ。例えば津波では、どうして津波が発生するか、津波の速さや高さはどうなっているか、津波からの正しい避難の仕方などが分かりやすく解説されていて、自然災害に対する基礎知識と備えが、ソフトを進めるうちに身に付いていく。

第2章の「人的災害」では、防犯(誘拐)、交通事故、火災、電気、踏切、水遊びのコーナーで、それがなぜ危ないのか、危険な目にあった際には、どのようにしなければならないかを紹介。被災&死亡率No.1の交通事故については、様々な交通手段や交通機関を例に挙げて説明している。

そして、第3章の「安心して暮らすために」は、付近の危険な場所や避難場所の確認を家族で話し合っておくことの大切さを教える「家族で話してみよう」、災害時に何が必要となるかが分かる「ひなんする時の持ち出し品」、110番や119番の役割が学べる「こんな時は110番・119番」といった内容となっている。

2択クイズ

2択クイズ

また、自然災害と人的災害の各単元の最後には復習の意味を込めて2択クイズを出題。地震が起きた際には「急いで外に逃げたほうが良い」のか「テーブルの下に隠れたほうが良い」のか、海で地震にあった時に「地震がおさまったら、また遊ぶ」のか「すぐに高いところへ行った方が良い」のかといった問題に答えていくことで、教えたことをちゃんと理解しているか確認できる。
地震発生の原因

地震発生の原因

小学校1年から3年の低学年の児童を対象に作られたものなので、使用されている漢字は小学3年生が読めるものとなっており、全てフリガナが付けられている。また、音声による解説なので、幼稚園の年中や年長の子どもでも理解できる内容となっている。

学校関係者に対しては、「まずどんなものか使ってみたい」、「子どもたちの反応を見てから決めたい」という要望に応えるため、同封するアンケートに回答してもらうことを条件に1ヶ月間の貸し出し期間を設けている(送料別)。学校名や氏名、希望試用日などを、同社のサイトからメールで送れば、試用で使うためのソフトが送付される。

防災防犯ソフト「キミたちはだいじょうぶ?」
会社名 システムアーチ株式会社
OS Windows(98、Me、2000、XP)、Mac(9.2、X10.1.5、X10.2.6、X10.3)
CPU Windows(PentiumⅡ以上 推奨Pen4)、Mac(PowerPC G3以上)
メモリ 64MB以上
ハードディスク 10MB以上の空き容量
CD-ROMドライブ 2倍速以上(4倍速以上推奨)
対象学年 幼児、小学校低学年
パッケージ内容 CD-ROM1枚(Windows、Mac OS共用)、ユーザーマニュアル1冊
価格 スタンダード版(個人用):3,000円、
スタンダード版(教育):7,800円、
アカデミーパック版:60,000円

体験版 わが家の防災  本当に役立つ防災グッズ体験レポート

防災グッズを実際に使ってみて徹底検証

わが家の防災

わが家の防災

いつ襲ってくるか分からない大地震などの災害に備えて、どんなものを用意しておけばいいのか分からず迷ってしまうもの。著者である玉木貴氏は、409万アクセス更新中の人気サイト「防災グッズ体験レポート」(http://bosailabo.jp/)の運営者で、防災グッズの検証などを行っている静岡県在住の市民防災研究家。住んでいる場所や家族構成によって、取るべき防災対策は、それぞれ異なってくると、玉木氏は本書の中で説いている。
物資の救援が早い地域から遅れる地域、津波が来る恐れから、すぐにでも家から離れなければいけない地域など、住んでいる環境によって防災袋の中身も変えていくことが大事。一緒に連れて逃げなければならない子どもや高齢者の有無、さらには身を寄せる親戚知人がいるかなども考慮して、何が必要か考えなければならない。また、市販の非常用持出袋も、決して信頼できるものばかりとは限らず、中には使い道に困るようなものが入っていたりすることがあるので、気をつけなければならないと注意を促している。
体験レビュー

体験レビュー

「防災グッズ体験レビュー」では、非常食、飲料水、簡易トイレなどを実際に使用してみて、「おいしさ」や「使いやすさ」などを5段階で評価。非常時でもなければ、使うことのない防災用品は、普段は置いてあるだけで使い勝手は分からないもの。それを玉木氏が、実際に使用することで、その優れた点や問題点が、読者に明確に伝わってくる。かつてはカンパンぐらいしかなかった非常食も、今ではお米やラーメンなどバリエーションが増え、好みで選べるようになっている。それを実際に食べた上でのレビューは、具体的な内容となっていて大いに参考となるはず。
防災Part2(詳しくはこちら)

防災Part2(詳しくはこちら)

そして、この9月22日には、シリーズ第2弾となる「実践版 わが家の防災Part2 いざというとき役立つ防災グッズ体験レポート」が発売された。第1弾で好評だった著者の体験レビューでは、防災グッズに関する最新の情報を中心に、シチュエーション別の防災グッズなどを紹介。実際に被災した場合の対処行動や、シチュエーション別の防災グッズを提案しながら、著者自身の豪雨水害の被災体験をもとにした風水害対策などを載せている。また、第1弾では、防災対策初心者に向けて防災グッズの揃え方などを紹介したが、第2弾では「災害になったら実際にどうなるの? そんな時に困らないようにするには、どうしたらいいの?」といった疑問に対して、著者が独自に調査・分析したデータを、イラストや漫画を使って分かりやすく答えるなど、さらに踏み込んだ内容となっている。
体験版 わが家の防災―本当に役立つ防災グッズ体験レポート
発行 駒草出版
著者 玉木貴
判型 A5判・143P(カラー56P)
定価 1,575円(税込み)
ISBNコード ISBN4-906082-92-0C0036
地震の備えが万全だからといって決して安全とは限りません。慌ててしまって防災袋を持ち出せなかったり、防災袋の中身が役に立たないものでは意味がありません。しっかりとした知識を身に付けて、いざという時に落ち着いた行動が取れるように心がけてください。

 ※当記事の情報は、公開当時のものです。

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