2012.02.23
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登米市立登米小学校 教諭 皆川 寛 「子どもたちの心に刻み込まれた『3.11』」

第二十七回は、宮城県の登米市立登米小学校 教諭 皆川 寛さんの執筆です。

この冬は雪が多く、気温の低い日が続いた。学校周辺では、朝の最低気温が氷点下10度を下回ることが何度もあり、氷点下16度という日もあった。この地域で、これほど寒い日が続くのは大変珍しい。それでも、子どもたちは雪が降ると大喜びし、校庭にかまくらや雪だるまを作って思いっきり楽しんでいる。

あの「3.11」からもうすぐ1年。「3.11」の体験は、子どもたちの心にどのような影響を及ぼしているのだろう。2年生34名にアンケート調査した(2012年2月17日実施)。

あなたは、地震が起きると、どんな気持ちになりますか。

あなたは、地震が起きると、どんな気持ちになりますか。

あなたは、地震が起きると3月11日のことを思い出しますか。

あなたは、地震が起きると3月11日のことを思い出しますか。

平成23年3月11日に大きな地震と津波がありました。今、あなたはどんなことを思い出しますか。また、どんな気持ちになりますか。

○家の中のものがたくさんたおれて、びっくりしました。もう、じしんはこないでください。

○あんなに強いじしんがきゅうにきて、びっくりしました。すごくこわかったです。

○じしんやつなみで人がたくさんしんだのでかわいそうでした。ごはんを分けてあげたかったです。あの日、お母さんがむかえにくるまで泣きました。

○あの時、つなみがなかったら、お父さんのじっかはながされなかったのに。

○おばあちゃんがはたらいていたショッピングセンターがつなみでながされました。海の近くでした。かなしいです。

○しんせきの家がながされました。でも、しんせきはたすかりました。

○いろいろなものがおちてきて、とてもこわくて、お母さんからはなれられなかったです。

○大きなじしんやつなみでなくなった人たちのことを思い出すと、家で泣くことがあります。

○ぼくの家がつなみでながされました。そして、同じ小学校のともだちの一人がにげおくれてしんでしまいました。今は、そのことがわすれられません。ひなんじょでの食べものは、かんぱんでした。少したって、おにぎりがでました。はじめて家にもどったとき、がれきになっていて泣きました。

(一部抜粋)


子どもたちの日常の振る舞いだけを見ていると、彼らが「3.11」以降、恐怖心やつらい気持ち、悲しい気持ちを抱えているということを見逃してしまいそうになる。しかし、こうして子どもたちの思いを聞いて見ると、「3.11」の体験が心に深く刻み込まれていることが分かる。

今求められている子どもたちの心のケア。教員が子ども一人一人の様子に目を配ること、子どもとのコミュニケーションをよくとること、そして保護者との連絡を密にすること。さらには、学校全体でのサポート体制を整えること。これらのことに、これまで以上に意識して取り組むことが大事だと自分に言い聞かせている。

あと3週間で「3.11」から1年。震災の犠牲となられた方々に哀悼の意を捧げる追悼式や復興祈願祭などが各地で予定されている。一方で、私たち大人は、子どもたちの「アニバーサリー反応」への対応(※)等にも十分配慮しなくてはいけない。

失われたものは戻ってこないが、失ったものの価値や思い出、感謝の気持ちは、一人一人の心の中に在り続けると信じている。そういう思いを子どもたちにも伝えていきたいと思う。

※「アニバーサリー反応」への対応
 災害や事件・事故などが契機としてPTSD となった場合、それが発生した月日になると、いったん治まっていた症状が再燃することがあり、アニバーサリー効果やアニバーサリー反応と呼ばれている。このような日付の効果は必ずしも年単位とは限らず、同じ日に月単位で起きることもある。
 対応としては、災害や事件・事故のあった日が近づくと、以前の症状が再び現れるかも知れないこと、その場合でも心配しなくても良いことを保護者や子どもに伝えることにより、冷静に対応することができ、混乱や不安感の増大を防ぐことができる。
(「子どもの心のケアのために―災害や事件・事故発生時を中心に―」文部科学省、平成22年7月より抜粋)

平成24年2月19日

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