2011.12.15
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利府町立しらかし台小学校 校長 永山 伸樹 「時間の経過と『風化』」

第二十二回は、宮城県の利府町立しらかし台小学校 校長 永山 伸樹さんの執筆です。

12月の声を聞き、ようやく本格復旧工事がスタートしました。
被災地で多くの施設が損壊したこと、工事の綿密な計画書の作成等の関係で11月末に文科省の査定が行われました。
いよいよ見える復興の始まりです。過日町教委から工程表も届きました。
夏に出た工程表からは大きく変わってしまいましたが、ようやく「元」に戻る目安を持つことができたのです。3学期が終わる前には『普通教室』で『1クラス1教室』での生活ができることのめどは立ちました。それに伴う作業はまだまだ数多くあり、解決していかなければならない課題も山積ではありますが、これまでの作業とは違い、「見える」分、私たちもやりがいはあるのでは、と思っています。

震災からは9ヶ月を迎えました。しらかし台小学校は『見える復興』の段階に入っていきましたが、まだまだ見えないところは被災地に数多くあります。
過日テレビで、震災後の時間の経過による人々の意識の「風化」が話題になっていました。
9ヶ月が経った今、すっかり日常が戻り普通の生活をしている人々、今なお眼前にがれきが残りまだまだ震災直後の環境で生活をしている人々との間で意識に違いが出てしまうのは仕方のない事かもしれません。
津波や地震による被災と原発事故による被災でも違うのかもしれません。津波や地震被害による被災は過去からの立ち直りですが、原発事故による被災は未来へ向かって心配が増えるものです。人々の意識が時間の経過とともに原発の方へ向き、津波や地震による被災への意識が薄くなり、風化していくのも仕方のない事なのかもしれません。
しかし、現実に大きな被害に遭い、まだまだその中にいる被災者が多くいることを忘れてはなりません。地震直後は多くの人が「継続した支援、息の長い支援」を口にしていました。

思えば平成7年の阪神淡路大震災の時、被災地から遠く離れていた私たちは、まさにその逆の立場でいました。私たちの意識が今思っているように、被災地の方を向いていたかどうかは自信がありません。
テレビでの、「この大地震はまた別のところで起きる、自分の身近でも起きるということを『忘れてはならない』」という趣旨のコメントが印象に残りました。

さて、寒い冬も本格化していきます。被災した人すべてが、安心して暮らせる日が一日も早く来ることを願ってやみません。

震災から日にちがたつと同時に、学校の23年度は残り少なくなってきます。次年度へ向けての諸準備が始まっています。今年の教育活動を評価する学校評価も保護者へのアンケートなどが集まってきています。震災があろうとなかろうと、学校としての教育活動を評価する作業はしなければなりません。果たして今年の教育活動をどう見ていくか、その日その日の対処と年間を見通した計画的な活動とこれまでにない取り組みを振り返ることはとても重要です。工事の槌音と共に進めていかねばならないことです。

しらかし台小学校の2学期の終業式は12月27日です。子どもたちには冬休みが短くなってしまうことはちょっと寂しいことかもしれませんが、長かった2学期を締めくくるため、今先生方も子どもたちもがんばっています。

ベガルタ仙台がJIの今年のシーズンを4位で終えました。ベガルタの活躍は被災地宮城に少なからず希望を与えてくれました。この原稿を書き終え、掲載された後に天皇杯の試合があります。天皇杯の優勝、ACLへの出場とまだまだ私たちに夢と希望を与えてくれています。

つらかったが忘れてはならない「2011年」から復興と希望のある『2012年』になるよう祈りたいですね。

平成23年12月12日

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