2011.11.17
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

登米市立登米小学校 教諭 皆川 寛 「あれから8ヶ月~ろうそく1本のありがたさを忘れない~」

第十九回は、宮城県の登米市立登米小学校 教諭 皆川 寛さんの執筆です。

あの大地震から8ヶ月が経過しました。余震は以前に比べればだいぶ少なくなりましたが、それでも数日おきにテレビ画面で地震速報を目にします。震災の爪痕は大きく深く、物理的にも精神的にも震災以前の状況に戻るには相当な時間を要する状況です。それでも、目の前の子どもたちの笑顔を守るためにも、1時間1時間の授業を大事にしながら、毎日を過ごしています。そんな毎日の中で、ふと思い出すことは、「今を生きること」に必死だった震災直後の生活のことです。あの時のことは決して忘れてはいけないし、みんなで共有し続けなくてはいけません。

3月11日、激しい揺れの後に待っていたのは、「すべてのライフラインが絶たれる」という今までに経験したことのない非常事態でした。電気、水道、ガス、固定電話、携帯電話が一切使えず、ガソリンの供給さえも停止しました。大都市のように交通網が十分整備されていませんから、移動すら思うようにできません。もちろん、郵便や新聞、宅急便もストップしました。自宅では、蓄えていた少量の水と携帯用ガスコンロで食事を作り、家族でろうそくを囲んで食事をし、暗くなったらラジオを聞きながら布団に入り、余震のたびに目を覚ますという生活が1週間ほど続いたのでした。当時は、この状況がいつまで続くのか分からず、とても不安な気持ちで過ごしていたことをはっきりと覚えています。2週間後に行われた卒業式で学級の子どもたち全員と再会、「みんな生きていて本当によかった」と喜び合いました。

あの時は、必要最小限のエネルギーで「今を生きること」に必死でした。ろうそく1本のありがたさを家族でかみしめる貴重な時間でもありました。そして、それまでの自分の生活を振り返り、どれほどのエネルギーを無駄に使っていたのかと思い知らされました。

10年後、20年後、目の前の子どもたちが社会人として日本を支える存在になったとき、どんなエネルギーを選択し、どんな生活を送るのでしょうか。よりよい「選択」をするためには知識が必要です。子どもたちに知識を与えたり、正確な情報を得る方法を伝えたりするのは、わたしたち大人の仕事です。満ち足りた現在の生活の中では、エネルギーについて無関心になりがちですが、今回の大震災の教訓と自分で得た知識をもとに、子どもたち自身が未来の姿を思い描き、仲間と議論し、力を合わせて行動してほしいと願っています。ろうそく1本のありがたさを忘れずに・・・。

学習発表会で学習成果を発表する登米小の子どもたち(10月29日)

学習発表会で学習成果を発表する登米小の子どもたち(10月29日)

平成23年11月11日

【参考URL】
登米市立登米小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop