2011.10.20
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郡山市立大島小学校 教諭 小野 浩司 「かかわり」

第十七回は、福島県の郡山市立大島小学校 教諭 小野 浩司さんの執筆です。

10月11日、市の研修会の授業研究会がおこなわれ、図工の授業を観ていただきました。
中学年部会ということで、4年1組の子どもたちとの授業でした。
授業は、写真表現と4コママンガを組み合わせたオリジナルの題材「写真de 4コママンガ」というものです。

この授業は、ぼくがこれまで考えてきた、図画工作科の中で最も大切にしていきたい「見る」ことを意識しながら、「ひと(自分自身との自己内対話を含む)」「もの」「こと」とのかかわり(コミュニケーション)を志向した 授業はどうしていけばいいか、という問いについての一つの回答のつもりでおこなったものでした。

「ひと」「もの」「こと」とのかかわり、それは震災以降、それまでの生活の中で取り結んできた以上に多くの出会いがあり、たくさんのことに気づかされ、感じ、考えることができました。
たくさんの信じられないことを目の当たりにしてきました。たくさんの悲しい出来事にも接してきました。3月11日午後2時27分以前に戻れるなら、と何度思ったことでしょう。
しかし、それだけでなく、たくさんの心温まる善意の心にもたくさん触れることができました。この「学びの場.com」をとおして、荒畑先生、そしてアグネス・チャンさんからもそうです。
今まで当たり前と思っていたことをするだけで精一杯な中、多くの方からの温かな言葉は、張り詰めた心を何度となく癒して励ましてくれました。
それだけに、子どもたちにも何気なく接するのではなく、かかわりを意識することがたくさんできるような授業をやってみよう、市内の先生方に観ていただこうと選んだ授業でした。

子どもたちは、前の時間に撮った写真を使って4コママンガを作っていきました。器用にハサミを使って写真の不要な部分を切り取っていきます。成長のあとを感じる瞬間でもありました。
子どもたちは、真剣に制作に取り組んだだけではありません。時折、友達の制作途中の作品を見て、笑ったり、質問をしたり、感想を言ったりしていました。そして何かヒントをもらったのか、さっと戻ってまた真剣な表情で制作の続きを始めていきました。
吹き出しをつけたり、タイトルをつけたりして、どの子もとても楽しい作品を作ることができました。
アグネスさんのメッセージの中にあった「寄り添うことの大切さ」。
ぼくたち教師もとても大切にしていることです。
しかし、とてもとても奥が深く難しいことでもあります。
そして、今年、これまで以上にとても大切にしていることでもありました。

ぼくは少しでも一緒に楽しめたら、と思い、一緒に4コママンガを作って、子どもたちに見てもらって、感想を言ってもらったり、褒めてもらったりしていきました。
制作をする楽しさ、難しさを一緒に感じることで、より子どもたちの気持ちを理解することにつながるのでしょうし、一つ寄り添っていくことになるのだろうなと思ってのことでした。

授業のあとの協議会は、さんざん悩んだ挙句、指導助言者を立てないことにしました。
あくまでも一般論ですが、指導助言者を立てると、指導助言者=専門家、自信のある人、話をする人、能動的な人という認識を、人は暗に持ってしまいます。そうすると今度は暗に対比をして、自分のことを、素人、自信のない人、黙る人、受動的な人という、自分=消極的な存在という望ましくないセルフイメージをもってしまい、それを強化させてしまうことになってはいないかと考えたためです。
そこで、これからの新しいアイディア・知恵を生み出していくためには、クリアー(見通しのよい=例えば、裏でコソコソ打ち合わせをしない)で、フラット(上下関係のない)な場をつくることが大切なのではないかと考えたためです。 そこで、子どもたちが帰ったあとの協議会では、授業者の自評、質疑応答のあとは、「ワールドカフェ」を取り入れて話し合いを進めていきました。飲み物を用意し、BGMを流した午後の教室で、ちょっぴりのんびりリラックスしてもらいながらのワールドカフェを体験していきました。
今までの協議会だと、授業者、指導助言者、司会と参会の一般の先生方は向かい合う形で話し合いを進めていき、淡々と時間が過ぎていくこともありますが、どのテーブルでもとても熱心な話し合いがおこなわれ、最後の全体のシェアでも、予想していた時間をオーバーするほどの、いくつもの多様なアイディア、深い意見が出てきました。
会場を後にする先生方の表情は多くの方が笑顔で、事後のアンケートを見るまでもないかなと思えたほどでした。(実際、高評価の感想をたくさんいただくことができました。)

この時期、秋の絵画コンクールに向けた作品づくりも進めています。宿泊学習や校外学習、ミニ運動会と充実した毎日が続きます。
21日には、ニューヨーク市警音楽隊の方が来校し、演奏の披露と子どもたちとの交流も予定されています。
出会いとは、新たな世界を知るきっかけともなるものだと思います。
たくさんの出会い、かかわりを大切にしながら、少しでも多くの学びがあるよう、そして学び続けていく人となっていけるよう、寄り添い、支えていければと思いを新たにしています。

平成23年10月17日

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