2011.08.11
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「被災から130日、一学期を終えて」南三陸町立歌津中学校 校長 阿部 友昭

第八回は、宮城県の南三陸町立歌津中学校 校長 阿部 友昭さんの執筆です。

7月19日、5月10日から1ヶ月遅れで始まった1学期が終了しました。終業式を迎えた生徒の声を紹介します。

『1学期を終えて』
震災から4ヶ月が経ち、暑さも増してきました。あの悪夢のような3月11日を乗り越えて、今日、自分は、感謝しながら毎日を過ごしています。しかし、転校してしまった友だちのことを思うと胸が痛みます。それでも、毎日不安だった3月、4月のことを思うとこれでも幸せなんだと実感しています。

遅れていた学習面は少しずつ取り戻していると思います。しかし、自分は勉強が苦手だということを言いわけにして、いつも宿題などを適当にすませてきました。テスト期間中も、勉強しなくてはならないということをわかっているのに、思いを行動に移せず、さんざんな結果に終わりました。半年後に高校受験を控えています。今のままではだめだと心から思いました。

そこで夏休みには、宿題を終わらせるだけでなく、1、2年の頃に学習した内容も復習し、他校に負けない学力をつけて2学期を迎えたいです。そして、たくさんの文房具など多くのご支援をいただいた方々の思いに応えるためにも有意義な夏休みにしたいと思います。

部活動では、体育館が使えず、津波で浸水した伊里前小学校の体育館で短い時間を大切にしながら交代で練習しました。場所がなくメンバーも減って苦しい中、顧問の先生やお借りしたマイクロバスのおかげで練習試合もたくさんしました。しかし、あっという間に中総体が来てしまいなれない中学生用コートで戦いました。結果は3位、県大会出場はかなわず、自分の部活動は終わりました。何もすることがなくなった放課後寂しくてやる気も出ませんでした。勉強にも手がつかず、放心状態でした。

そんな中、いつも目にしていたのは、ボランティアの方々でした。自分たちのために遠くから来てくれている方々でした。たくさんの有名人の方も来てくれました。そんな姿を目にしているうちに、自分のためだけでなく、この人々のためにも意地でも高校に入り、将来就職してボランティアの方々に恩返しがしたいという気持ちがわいてきました。

自分は、3月11日の震災(津災)で、命の尊さ、友だちの大切さを改めて感じました。この体験は、これからも言い伝えられ、自分たちも被災地の人間として、将来子どもたちに伝えていくのが一生涯の仕事だと思っています。あの日起こった天災は、決して忘れてはいけないことであり、復興のために来てくれたたくさんの人々の心の暖かさを知るきっかけとなりました。この先自分はどの道に進むかわかりませんが、3月11日の惨事を忘れず、支援していただいた人たちへの感謝を忘れずに歩んでいきたいと思います。その第一歩として、この夏休みの過ごし方や勉強や活動への取り組みを見直していきたいと思います。

震災後の4ヶ月で、中学生は人として生きるために何が大切であるかということの一部分を、教科だけの学習では得られない大切なことを学び、体験することができたように思います。

平成23年7月29日

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