2006.05.09
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構造のしくみ(vol.1) トラス構造

みなさんこんにちは。最近、地震の話題が多く出ています。いつ来るかわからない地震に備えて、建物を強くするなど、建物の安全性について関心が高まっています。では、建物はどうして倒れたりしないのかな?今回は、建物の構造の不思議について一緒に考えていきましょう!

1ものにかかる力

ところで、みなさん「構造」っていう言葉の意味は知っていますか?「構造」という言葉を辞書でひくと、「全体を形づくっている種々の材料による各部分の組み合わせ。作りや仕組み。」(三省堂提供「大辞林 第二版」より)とあります。

構造って、ものを形作るひとつの部分や、その全体の作り方といった意味だとわかります。ものは一つ一つの部分の組み合わせからできているのです。その組み合わせを考えないと、バラバラになってしまうかもしれませんね。だから、構造はとても大事なのです。例えば建物には色々な力がかかっています。でも壊れないのは、その構造に秘密があるからです。壊れない形にしたり、いくつかの材料を組み合わせて、やっと建物になるのです。まず、建物を作る基本的な構造をみてみましょう。

力を受けても壊れにくい構造はどんなかたちか調べてみましょう。

ここに四角の柱があります。Aには上から力をかけてみます。Bには、横から力をかけてみます。Cは、二本の柱を立てて、その上に板をのせて横から力をかけてみます。ABCのどの柱が壊れないでしょうか?
ABCのどの柱が壊れないでしょうか?
A
ABCのどの柱が壊れないでしょうか?
B
ABCのどの柱が壊れないでしょうか?
C


Aです。
柱に上からの平行な力を加えても、柱は簡単に伸びたり縮んだりしません(図1)。
Aの柱は伸び縮みの力に強いことがわかります。しかし、Bのように横からの直角方向に曲げるちからを加えると柱は簡単に曲がってしまいます(図2)。曲げの力には弱いことがわかります。また、Cのように柱を2本立てて横に梁(はり)と呼ばれる板を置いても、曲げるちからに弱く、ねじれて倒れてしまうのです(図3)。
Aの柱は、上から力が加わっても倒れないことがわかりました。AとBの柱は全く同じなのに、力の「かけ方」によって、強かったり弱かったりすることがわかります。私たちの身の回りにあるものも、壊れたりしないように、力の受け方を考えて、「構造」を工夫して造られているんです。

ねらい
ものの組み合わせによって、強い構造ができることを知ってもらう。材料や量を変えなくても、形をかえる、構造を工夫することでものを強くすることができます。

発展
「家」にはどんな力がかかっているのか調べてみましょう。また、家がどんな仕組みからなっているのか調べてみましょう。

2変形しにくいトラス構造

では、壊れないものを造るには、どうしたらよいでしょうか。

家にはさまざまな力がかかっています。机、椅子など家の中にはたくさんの家具がありますよね。それらの重さが全部、家にはかかっているのです。さらに、屋根、壁、床と家自身の重さもすごく重いのです。

家にかかる力には、地震のような怖い災害の力もあります。地震の力で建物が変形して壊れるのは、建物の材料に曲げる力(垂直の力)が加わったときに起きることがわかっています。そこで地震に強い建物を作るには、材料に曲げる力が加わらないようにすればいいのです。

図4のように柱と柱の間に、梁を置きます。さらにその間に、斜めに交差したように柱をくっつけます。これは、筋交い(すじかい)とよばれて、曲げる力に対してとても強くなるのです。こんな風にして建てれば、とても丈夫な建物を作ることができるのです。ではなぜ、筋交いをつかうと変形しにくくなるのでしょうか。

柱と筋交いの間の空間は三角形に分けることができます。ここで、図4のように柱に垂直にちからFをかけると、柱を曲げるちからは筋交いがあるため、垂直な柱2本に直接加わらないで、三角形の各辺の方向の伸び縮みのちからに変わってしまう現象がおきます。柱は、伸び縮みの力に対して強いことは先ほどのクイズでわかりました。筋交いをいれると変形に対してとても強く、形が崩れにくくなるのはこの力の変化のせいなのです。このような三角形を組み合わせた構造を「トラス構造」というのです。

トラス構造を使ったものが、私たちの身の回りには沢山あるよ。どんなものでしょうか?

A. 木の電信柱 B. 橋 C. らせん階段 D.鳥居

の「橋」です。
トラス橋:橋桁が三角をならべて作ってある。

トラス橋:橋桁が三角をならべて作ってある。

橋げたの部分が、三角形を繰り返して並べて作ってあります(図5)。橋を作る場合、沢山の鉄の柱を三角形に組み、この三角形を組み合わせて力を支えています。

三角形は外から力が加わっても曲げる力が生じないため変形しにくく、しかも、中を埋める空間がいちいち必要ではないから、少ない材料で大きな空間を保つことができます。

軽くても強いものがつくれるため、橋にはトラス構造が最適なのです。もしも、橋がトラス構造ではなく、直線状の柱で作られたものだったら、力がかかっても支えきれず曲がりやすく壊れてしまいます。

3トラス構造の原点は・・・

トラス構造は軽くて丈夫なので、橋以外でも起重機のクレーンやテレビアンテナを設置する鉄塔など広い分野に使われているんですよ。もっと有名なトラス構造の建物は、東京タワーです。高さ333mのタワーは、トラス構造が集まって作られています。トラス構造が集まると、とっても大きなものが作れることがわかります。倒れないのは、丈夫で軽いせいだからだね。

生き物のなかにもトラス構造を持っているものがいます。次の動物のうち、どれがとくに発達したトラス構造を体のなかに持っているでしょうか。

A. キリン B. 猫 C. 鳥 D.かえる

Cの「鳥」です。

「鳥」の骨組みをみてみると、鳥の翼の骨がトラス構造になっているのです。骨の内側は三角形を組み合わせていて空洞がたくさんあります。空洞の部分が多いと、その分の材料の重さがなくなるからとっても軽く、飛ぶことに適しているのです。

トラス構造が軽くて丈夫だっていうのは、生き物のなかにも、もともとあった合理的な形だったんだね。トラス構造の原点は自然界から来ているんですね。自然界の形を私達人間は取り入れているのです。

鳥の羽や鳥の姿や形は、空を飛ぶ飛行機にも大きな影響を与えています。軽くしなければならないものには、共通した姿があることに気がつきます。構造の秘密がわかれば、身の回りの生き物や建物がなぜその形なのか、理由がわかるようになるよ!

次回は、「建物の構造その2 ハニカム構造」についてです。色々な構造物を一緒に考えていきましょう。


一般的な建造物だけではなく、トラス構造のような軽くて丈夫な構造について、その仕組みと身の回りの建物との接点を学習する。同じ材料によっても、組み合わせで強い建造物を作ることができるのを理解する。


身の回りには、気づかなかったたくさんのトラス構造があります。身の回りのトラス構造の建物の写真を撮ってみましょう。また、その建物がどんな形で、どのように利用されているのか調べてみましょう。使われ方とトラス構造の関係について調べてみましょう。
日本の中にある橋の形を沢山しらべてみましょう。橋の種類や、トラス構造の大きさなどをくらべてみましょう。
世界で一番大きなトラス構造を調べてみましょう。

監修:統計数理研究所 助教授 瀧澤由美 博士(工学)

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