2007.02.20
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

新人危機管理コンサルタント奮闘記(vol.1) 不審者、知らない人ってどんな人?

子どもたちにとって、「不審者・知らない人」とは、どんな人を指すのでしょう? あなたは具体的に説明できますか?

みなさん、こんにちは。
クライシスインテリジェンスの須藤です。学びの場.comでは昨年の「学校の危機管理:夏休み特集」以来の登場です。今回から、私が当コラムを担当させていただきますのでよろしくお願いします。第一回は、私が子どもの安全や学校の危機管理に関わって初めて感じた疑問である「不審者・知らない人」についてお話しようと思います。

 近頃子どもが巻き込まれる事件が多発しています。2005年に発生した栃木の事件は未だ解決されていません。そのような中、テレビや新聞、雑誌などで「不審者」という言葉を多く耳にします。でも、いったいどんな人が「不審者」なのでしょうか。

 確かに真夏にロングコートを着ていたらかなり怪しいし、校庭で体育の授業をしている時に生徒に向かって外からカメラを構えている人がいたらその人は怪しいのです。でも、一見普通の人、見た目は怪しいとは思われない人が罪を犯していることが多々あります。そういう人にも気をつけなくてはいけません。外見だけではわからない場合もあるのです。簡単に使っているこの言葉、子どもたちへの説明は案外難しいものでした。

子どもは”不審者”が何かわからない

私達が行っている防犯ワークショップでは子ども達といっしょに、不審者や知らない人がどんな人なのかを考える時間があります。「不審者ってどんな人?」「知らない人ってどんな人?」そう問いかけたとき、子ども達から返ってくる答えは、「サングラスをかけて、マスクをしている人」「全身黒い服で帽子もかぶっている」という、いかにも外見上怪しい人でした。でも、そんな人、本当にいるのでしょうか? マスクやサングラスなんて、花粉症の方々にとって必需品。季節によってはそんな人たちが街には沢山います。その人達、全てが不審者なのでしょうか…。

 さらに、「会ったことがなければ知らない人だけど、一緒に遊んだり会ったことがあれば知っている人」だと考えた子どももいました。この考え方をすると、公園でよく遊んでくれるお兄さんは子ども達にとって知っている人になるのでしょう。

 以前、子どもたちを放課後預かって遊び場を提供する施設(学童みたいなものです)で働いていた時のことです。そこでも、スタッフは子どもたちが帰宅する時には「不審者に気をつけて帰ってね」と声をかけていました。もちろん私も同じように声をかけていました。

 ある日、子ども達に「不審者ってどんな人?」と聞かれた時、咄嗟に出た言葉が「知らない人」でした。しかし、よく考えてみるとただ「知らない人」と言っても、子ども達にとっては道行く殆どの人がそれにあたります。すると子どもは「じゃあ知ってる人だったらついていくね~」と笑顔で帰ろうとしました。本当は私が言いたかったのはそういうことではありません。慌てて「知っている人でもついて行かないで、真っ直ぐ家に帰ること!」と子ども達に約束させ、帰宅させました。

 ある学校の保護者の方からも、「子どもの行動範囲は知っていても、そこで遊んでいる時に誰と会っているかまで全てはわからないの」、「公園でいつも一緒に遊んでくれるお兄さんがいるらしいけど、どこの誰なのかわからないのよね」等々というお話を聞いたことがあります。この時、子どもにとっては顔見知りであり、知っている人だとしても、親からすると知らない人ということも有り得ると実感しました。

大切なのは”何”に気をつけなければならないか

「不審者」や「知らない人」がどんな人なのか、それはその状況によって異なると思います。大事なのは言葉の定義ではなく、“何”に気をつけなくてはいけないのかということ。子どもがいつも一緒に遊んでくれる人がいると親に話し、親が挨拶をした時、こそこそしたり、その場から立ち去ろうとすれば、その行動に不信感を持つでしょう。そうなれば子どもにとっては遊んでくれるいい人であっても、必ずしも「知っている人=安心できる人」にはならないのです。

 子どもが遊びに出かける時、「車に気をつけてね」とおっしゃる方は多いでしょう。しかし、この言葉が、子どもにとってどれほどの意味があるでしょうか? それよりも「信号が黄色になったら渡ってはだめよ」とか「交差点の手前では絶対に止まってね」と言ったほうが、子どもにとっては理解しやすいはずです。

 「不審者や知らない人に気をつけて」という言葉も同じです。確かに便利な言葉ではありますが、この言葉を使うことで、一番大事な「何に気をつけるのか」が曖昧になってしまっては意味がありません。抽象的な表現では子ども達には伝わらないのです。大人でもその言葉の説明は難しいくらいなのですから。

 「不審者」「知らない人」、これらについてどうイメージするか、子ども達と一緒に、ぜひ一度考えてみてください。私自身これからも考え続けます。答えはたくさんあるはずですから。それを一つでも多く見つけ、子ども達の安全について考えていこうと思います。

(文:須藤綾子)

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

pagetop