2007.04.17
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新人危機管理コンサルタント奮闘記(vol.2) 防犯パトロールってどうしたらいいの?

防犯パトロールを効果的に、長く続けるコツとは? 新人危機管理コンサルタントの須藤綾子がお話しします。

こんにちは。新たな旅立ちの季節がやってきました。ご入学・進級おめでとうございます。私も皆様が安心して暮らせる環境づくりに少しでもお役に立てるよう、一歩一歩前に進んでいこうと決意を新たにしています。さて今回は、防犯パトロールについてお話しましょう。

 町内会やPTAなど地域と協力して子どもや町の安全を守るという活動をよく目にします。最近は、新聞やテレビでもよく取り上げられていますよね。

「自分たちの町や子どもたちの安全は地域のちからで守っていく」という想いや活動は、これからの時代、ますます必要になっていくでしょう。
 とはいえ、ただ闇雲にパトロールを行えばいいと言うものでもありません。安全のための効果的な活動を、より長く続けるためには、ちょっとしたコツのようなものがあると思うのです。

大事なのは“はじめること”

ある学校で見かけたパトロール(?)風景です。伺ったのはちょうど下校時間。校門には「防犯パトロール」と書かれたジャンパーを着て、腕章をつけた地域の方々が集まっています。一人、また一人とその人数は増え、およそ20名が集まりました。
 私は「どうやって下校を見守るのかな」と興味津々に、その様子を眺めていました。しばらくして警察の方が到着し、まずは全員集合で記念撮影! そうこうするうちにチャイムが鳴り、子どもたちが下校を始めました。
 集まった皆さんが、準備する間もなく子どもたちの下校が始まってしまったのです。これではパトロールというより、お出迎えだなぁと正直、思いました。

 このようなことは実は珍しくありません。地域の皆さんが新たに防犯活動を立ち上げた場合、はじめはだいたいこんなものです。大切なのは「子どもたちを守りたい」という想いで、多くの人が集まってくれたこと。これだけで何もしていない地域よりはるかに素晴らしい町づくりへの一歩を踏み出したといえるでしょう。

つぎに大事なのは“続けること”

前述の例は、パトロール活動としては準備不足の失敗例かもしれません。しかし、地域のメンバーの顔合わせの機会にはなりました。子どもたちにも「自分たちを守ってくれる人たちがいる」というメッセージは伝わったはずです。

 本当に大切なのは、この後になります。地域の皆さんは防犯のプロフェッショナルではありませんし、はじめから効率のよいパトロールを行おうとしても無理があります。1回目でできなかったことは2回目で、2回目でできなかったことは3回目……と毎回課題を見つけながら少しずつ方法を変えていきましょう。警察その他の専門家や強力なリーダーの指導があれば一度に改善することも可能ですが、実際に活動を行うメンバーは殆どがそうではありませんよね

 そこで初めから高いレベルを求められるとどうでしょう。かえって嫌になってしまったり、活動を行うことに負担を感じたりしてしまうかもしれません。それではせっかくの活動が長続きしなくなる恐れもあるのです。
 最初はぎこちなくても、参加するメンバーが大きな負担感を抱くことなく、手の届く範囲で活動を続けていくうち、それが日課のようになることが、このような活動を長く続けるための秘訣だと考えます。

 以前、地域の防犯活動をまとめていらっしゃる方から聞いた話です。その地域では、防犯パトロールを、5年間継続して行っているとのことでした。毎日パトロールをしているわけではありませんが、それだけ継続できることはすごいことだと思います。なぜ5年間続けることができているのかを尋ねたところ、このような返事が返ってきました。「自分たちができる範囲でやっている」。

自分たちにできることを、無理なく

「できることを、無理なく」の例をいくつかあげてみましょう。
今日はメンバーの顔を覚えよう。
子どもの下校開始に間に合わなかった。次回からあと10分早く集合しよう。
どこに立てばよいか分からなかった。次回は地図を持って配置を決めよう。
子どもに声をかけよう。
大人にも声をかけよう。
安全上、気になったポイントを地図にマークしてみよう。

などなど、一度に全部は無理でも、一つ一つは簡単なことです。

 学校に集合できない人も、ゴミ出しや、朝夕の散歩、お庭の手入れ、洗濯物の出し入れなど、外に出る機会があるときはなるべく子どもたちの登下校の時間帯に合わせることなら出来ますよね。ちょっと勇気を出して家の前を通る子どもたちには声をかける。挨拶をするというのもいいですね。
 また、このような活動を始めるとき、子どもたちに不審者に間違われてしまう、なんていうことにもなりかねません。事前に学校と相談をし、お手紙や、朝礼で子どもたちや親御さんに紹介してもらえるといいですね。

慣れたらちょっとレベルアップ

最初は面倒くさいと思っていても、ある程度活動を続けていると、子どもたちが自分から挨拶をしてくれたり、「いつもありがとう」と言ってくれたりする場面に出会います。そうなると嬉しくなって、またまたやる気が湧いてきますね。「こうすればもっと安全になる」とか「もっと効率良くできる」といった欲もでてきます。

学校に行事の予定や下校時刻を事前に聞いておこう。
警察に近隣の事件発生情報を聞いてパトロールルートを指導してもらおう。

 など、情報を共有化することで活動の質をレベルアップすることができると思います。必要に応じて変化をさせることも重要です。季節や子どもたちを取り巻く環境が変わることで、方法を変えなくてはいけなくなることもあるでしょう。

 例えば、近くで不審者情報が入ってきた時や、何か事件が発生した時には、パトロールの回数を増やすこともあるかもしれません。今までしていた活動に、どこか無理が生じてしまい、活動が終わってしまいそうになることがあるかもしれません。他にも「今の方法で続けていいのだろうか・・・」と考えることもあると思います。そんな時は、一度活動内容を見直してみて下さい。そして、方法を変えてみたけど、元の方がいいと感じるときは、元の形に戻すことも考えられます。そのようにして、その地域にあった形を探していくことも必要なことです。

地域のコミュニティが最大の武器

地域のボランティアの方が行っている活動です。みなさんは専門家ではありません。その中で、地元の警察の方に協力を求め、学校や保護者と協力をして防犯活動をすることはとても大切なことです。

 地域の方が集まることで顔の繋がりができること。大人同士の繋がりはもちろんのこと、地域の大人と子どもが顔の繋がりを作っていくことも必要です。何かあったときに、助けを求められる人が地域にいることを、防犯パトロールを通して子どもたちに伝えていき、子どもを通じて親も地域との繋がりを作ること。これこそが地域で行う防犯活動の利点であり、最大の武器であると私は考えています。専門家であっても、その地域に住んでいなければ、繋がりを維持することはできません。

 最初に申しましたように、まずは、「防犯パトロールをやろう」「参加しよう」という気持ちが大切です。そこから、子どもたちのためにできることを少しずつ進めていき、慣れてきたら徐々にステップアップしていきましょう。
 学校と地域は、切り離すことはできません。私自身も、様々な学校を回り、地域で行う防犯活動がどのように行われているのかを見ていこうと思います。そこから色々なことを吸収し、今後も皆さんにお伝えしていこうと思います。

(文:須藤綾子)

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