2003.10.28
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地域と保護者、学校の危機管理

犯罪は当初、弱いものへ向けて行われ、その後拡大します。つまり子どもたちへの悪戯や犯罪を放置すると、その地域にもっと凶悪な犯罪が発生するのです。ですから地域で子どもたちの安全を考えること。は、地域の安全につながるのです。今回は地域と保護者と学校の危機管理についてお話します

先日、TBS系列の番組「報道特集」の方から依頼され、兵庫の小学校への取材に同行しました。残念ながらそのとき、同行した姿は映像にはなりませんでしたが(後姿だけすこし映っていました。)その小学校で地域と保護者と学校の連携について大変よい見本を見せてもらいました。

 その小学校が取材対象になったのは、運動会の最中、校内に日本刀を持った男が侵入し、警察に捕まったと言う事件があったからです。

 事件は運動会の最中に発生しました。日本刀のようなものを持った男が正門から侵入。それを目撃した保護者と学校長がすぐその男にぴったりとマーク、そして手の空いている保護者が運動会に来賓として来ていた駐在所の警察官に通報、警察官が男に職務質問を掛け、男は逮捕と言う事件でした。

 この事件の詳細を校長先生にお伺いしてみると大事に至らなかった要因は大きくふたつありました。一つ目は保護者や地域住民が不審者を迅速に発見、警戒し、通報できたこと。この小学校では保護者の危機管理意識が高く、運動会当日も子どもたちを守るために正門近くでバザーを開催していました。また、地域の方々も運動会を地域の活動のひとつと考えていて、駐車場の整理などに当たっており、地域で子どもたちを守るという意識を持っていました。二つ目は地域の警察官と学校とが良好な関係にあったこと。ですから、運動会に来賓として招待されていたため、通報を受けた時も迅速に対応することが出来ました。
この二つの要因から言えることは、地域・保護者・学校との連携です。この小学校では地域の人たちとの交流を図るために、日ごろから様々な活動をしていました。例えば、地域の住民が子どもたちの教育のために学校へ畑を貸し、時には作物を持ってきて「教材にして」と気軽に訪ねてくることがありましたし、子どもたちの安全のためにと地域の有志が集まって防犯用具を購入し、配備していました。また、地域の警察官は毎日、校門の前に立ち、子どもたちの安全指導をしており、大変良好なコミュニケーションが図れていたようです。さらに、保護者も学校の危機管理について意識を持っており、積極的に活動に参加していました。このように他の地域の見本となる場面が多く、そんな日ごろからの地域と保護者と学校の連携が今回の事件を大事に至らせなったのだと私は考えています。
現在、多くの学校ではこのような地域と保護者と学校の連携が取れていないのが現状です。地域の不審者情報が学校に流れない、保護者の活動を学校側が知らない、知りたがらない。学校側が行っている危機管理活動を保護者が知らないなど、よくある地域と保護者と学校の連携の現状です。これらは今2003年2月に行った、危機管理アンケートでも明らかでした。

 これからはますます、治安は悪化するでしょう。今年の上半期だけで未成年者の略取誘拐事件は104件。この数を多いと見るか少ないとみるかは皆様の判断にお任せしますが、私は危険な兆候だと思っています。

 最後に、お伺いした学校の校長先生がおっしゃっていた印象に残る言葉をご紹介します。

「この地域では子どもは地域の宝と考えています」

この言葉こそが、子どもたちを守る強力な武器のような気がしませんか?

(イラスト:たかまひびき)

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