2020.05.11
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休校対応どうしてる?(vol.4) 緊急事態宣言延長を受けて

「9月入学・9月新学期論」も話題になる中、緊急事態宣言は、対象地域を全国としたまま、5月31日まで延長されました。13の特定警戒都道府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府)以外でも、宮城県、群馬県、静岡県、富山県、奈良県、広島県、香川県、熊本県など34県の半数では休校期間も5月31日まで延長されました。

4月17日のvol.2記事公開後にお寄せいただいた国内外88名の方からのアンケートの回答等を紹介します。ご回答ありがとうございます。

<アンケートにご協力いただける方はこちらからご回答ください。状況が日々変化しているので、複数回ご回答いただいてもかまいません。>

国の動き

5月1日に出された、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」では、「学校について、リスクを低減した上で、活動を再開し、学習の機会を保障していくことも重要。文科省において、有識者の意見 も聴取した上で、感染リスクが高い活動や場面を整理し、その対応について早急に示すべき。」とされました。

同日には、文部科学省も「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について(通知)」を出し、分散登校日の設定の際には、進路指導の配慮が必要な小学6年生や中学3年生、教師による対面での学習支援が特に求められる小学1年生を優先するとしました。

また、次のような「感染の可能性が高い学習活動については行わない」とされました。

  • 音楽科における狭い空間や密閉状態での歌唱指導や身体の接触を伴う活動
  • 家庭科、技術・家庭科における調理等の実習
  • 体育科、保健体育科における児童生徒が密集する運動や児童生徒が近距離で組み合ったり接触したりする場面が多い運動
  • 児童生徒が密集して長時間活動するグループ学習
  • 運動会や文化祭、学習発表会、修学旅行など児童生徒が密集して長時間活動する学校行事

給食についても、可能な限り品数の少ない献立にする、給食室でお弁当箱に詰める、配膳を伴わないパンと牛乳だけの簡易な給食にする、例外的に持ち帰りを実施するなどの対策案が例示されました。

臨時休校中に学校が最低限取り組むべき事項が示される

児童生徒の学習支援・心身の確認等

4月21日、文部科学省は「新型コロナウイルス感染症対策のために小学校、中学校、 高等学校等において臨時休業を行う場合の学習の保障等について(通知)」を出し、臨時休業中であっても最低限取り組むべき事項等を明示しました。
これを受けて、週間計画表や運動取組カードが配布されたご家庭もあるのではないでしょうか。
先生方の回答からは、子どもたちのために何かしたいのに、感染の拡大縮小の状況が刻々と変化する中で、国・教育委員会・学校の方針が定まらず、動けないもどかしさがひしひしと伝わってきました。保護者からは、宿題が少なく不安という回答が多く寄せられましたが、量が多くて1人ではなかなか配布された時間割通りには進まず、週末に親と一緒にこなすのが大変という声もありました。いただいた回答の一部を紹介します。
  • ここまで長期間に渡って休業になるとは考えてもいなかったので、休業中の子供たちへ学習の仕方を伝えることができなかった。直接会えないなど、市教委からの指示や制限が多く、休業後の学習や生活のフォローがとても難しい。(公立小)
  • 現場への通達が遅すぎる。インターネットニュースで 休校を知った。教育委員会の動きが見えてこない。地域や学校で子どもの学びに差が大きくあることは 学校教育への不信感につながる。学びに向かう気持ちにならない子がたくさんいる。「休校」ではなく「自宅待機」「自宅学習」という呼び方にすべきだったのではないか。(公立小)
  • 教員も学年末・新学期の2ヶ月を憂鬱な気持ちで過ごすこととなり、とても残念だった。最後の一ヶ月・最初の一ヶ月がどれだけ大切かを首相をはじめ文科省もわかっていない。また、履修できない単元があり、翌年に持ち越しとなった。カリキュラム通りに行かなかったことが大変心苦しかった。もう少し余裕を持って休業要請すべきだったのではないかと、今でも思っている。そうすれば、少しでも家庭学習をすすめることができないかと思うからである。(公立小)
  • 学校ができることは限られていることを実感した。教育委員会、管理職によって、色々な考えがあり、自由にできないことも多いことが分かった。(公立小)
  • 初任者が1年生の担任として着任しましたが、何をやってもいいのかも全く分からずに困っているようでした。子どもの情報を得ることもできていません。(公立小)
  • 自治体によって対応の差がありすぎる。(公立中)
  • 文部科学省、教育委員会の通達が遅すぎて迷惑している。対応の変更が多く、教職員は疲弊している。(国・私立中高)
  • 国や知事の指示に、教育委員会も右往左往、現場も振り回されている。(特別支援)
  • 始業式に数枚プリントを渡された後、2週間ほど何の課題も出されず、不安だった。4月中も休校になることが予想できたので、動画配信は難しくても、始業式までに教科書に沿った1ヶ月分のプリントを用意するなどして欲しかった。(保護者)
  • 小学生、中学生、高校生の子どもがいるが、同じ地域なのに、課題の配布方法が、担任の先生が家を回ってポストに投函、子どもが昇降口で受け取る、郵送で送って来るだけで会わないなど、対応がバラバラで疑問を感じる。(保護者)
  • 休校については、致し方ないことだとは思うが、オンライン授業やYouTubeでの授業配信等、対応が早い地域とそうでない地域に差が生じていると思う。校庭開放ももっと工夫して、不安な毎日を送っている子どもたちが、少しでも先生やお友達に会えるようにしてくれると良かった。(保護者)

子どもたちが学校にまた通いたいと思えるつながりを保つために

多くの学校では、週1回は電話などで先生が子どもの状況を確認するようになりました。
双方向のオンライン授業ができない学校でも、課題を出しっぱなしではなく、登校日や家庭訪問時(対面はせず、ポスト付近に封筒を置いておくという学校も多いようです)に提出すると、先生が丸付けして返却してくれる仕組みづくりが徐々に広がったようです。学習意欲を高めるには、先生が評価してくれるのが一番です。
ホームルームだけ双方向で行っている学校もあります。学習は後から取り戻せますが、昼間一人で留守番している子どもの心のケアなどは、後からでは遅いでしょう。朝の会として行うことで、生活リズムの維持にもつながります。
いただいた回答の中から、取組の一部を紹介します。

  • 授業動画を作成し、YouTubeで限定配信し、高学年については翌日にZoomで質問などを受け付けている。ただ、動画作成には膨大な時間がかかるので、授業動画配信サービスは専門家(大手の塾講師や、教育委員会など)に任せて、教員はもっと子供たちと精神の安定が図れる、学習意欲の向上が図れることを模索することが必要だと感じる。(公立小)
  • 週に1度の家庭訪問で宿題の回収と配付を行っている。日課表を渡し、Eテレも取り入れながら規則正しく学習できるよう働きかけを行っている。(公立小)
  • 図書の貸し出し等での保護者と一緒の来校を広報している。週一度、課題や連絡プリントの配付を行っている。配付の際は保護者と面談し、児童が一緒に来ることも奨励している。(公立小)
  • Googleクラスルームで課題を送っているが、送れていない家庭もある。コンタクトを取り、不安解消、教師とのつながりを重視。メッセージ動画を何回か送っている。(国私立小)
  • 始業式ではそれまでの課題を提出させ、点検して返却した。3月に1回、4月に1回2人1組で家庭訪問を実施した。(公立中)
  • 学校HPで課題提示、関心をもてる身近な題材の配信を行っている。課題は回収し、添削・アドバイスを書き込んで返却している。(公立中)
  • 以前から1人1台のiPadや提出物を管理するツールを導入していたが、ZoomによるHR、web授業の開始は5/8からになった。新1年生はiPadの郵送に時間がかかってしまい、5/22からになった。なかなか授業が始められず、申し訳なく感じている。(国私立高)
  • 電話で健康状態、家庭での過ごし方や居場所を確認したり、困りごとの聞き取りなどをしている。教員作成の動画を学校関係者限定のメールで配信もしている。(特別支援)
  • 週1回の出勤日しか家庭と連絡が取れず、課題のプリントを配るだけで児童生徒との双方向のやり取りがうまくできない。(特別支援)
  • 不登校気味だったのが、担任の先生との関わりで登校意欲が出てきたところに休校となり、心配。今回のことをきっかけに、不登校の子どもへの学びの保障も進めて欲しい。(保護者)

持ちあがりの先生の回答から

公立小学校2年生の担任をしています。持ち上がりなので、学童クラブや校庭に来ている子どもたちと会えば言葉を交わすことも、教材研究中には子どもたちの反応を想像することもできます。

始業式で、予定していた4月の登校日までの課題を学年間で作成し、渡しました。緊急事態宣言が出て登校日が中止になったので、保護者に追加課題を渡しました。

課題は、昨年度の復習を中心にプリントを作成して出しました。

①国語:1年生で習った全ての漢字(プリントをダウンロード)
②算数:単元別プリント(ダウンロード)
③生活:お手伝い名人になろう(作成)
④学活:離任式の手紙の下書き(見本を入れて)
⑤国語・算数:テストの復習(ワークテストの付録。間違いが多かったところ中心)
⑥健康観察カード(養護教諭作成)

を課題として出しました。

子どもたちに早く会いたい気持ちでいっぱいです。早く今後のことの結論を出して欲しい気持ちと新型の感染症で仕方がない気持ちとの葛藤があります。

5月、もしくは6月に学校を再開するとして、3月末までに、昨年度3月からの3ヶ月間の休校分の学習を補うのは負担が大きいと感じます。また、9月入学案も出ていますが、例えば国語は「たんぽぽ」「ふきのとう」(2年生:光村)など季節の教材を通しての学習内容が含まれています。学習の順番の考慮だけでなく、内容の検討も出てくるのではと思います。

インドネシアの英語の先生の回答から

首都ジャカルタは、5月22日までの予定でロックダウンされており、公共交通機関を利用できる人は、行政、デリバリーサービス、医療スタッフなどに限定されています。
文部省のサイトGeschoolにある授業動画が活用されています。これは以前から全土で使われており、生徒は1人当たり年間25,000ルピア(178円程度)を負担しています。先生は映らず、問題と解答の選択肢が示され、2分弱で解法を手書きしながら説明するというものです。一部YouTubeでも公開されています。
双方向のオンライン授業には、小学生低学年ではWhatsApp call(算数の九九など基本スキルの確認など)、高校ではGoogle Classroom、大学では Microsoft Teams、Webinar、Webexなどが使われています。インターネット環境やパソコンの無い学校もありますが、教師は、プリントの採点、宿題へのコメントで生徒とのやり取りを工夫しています。

対面授業の代替ではないオンライン授業を

オンライン授業では、不登校気味の子どもが一番に課題を提出してくる、いつも目立たない子どもがチャットでは発言するなど、先生との接点が平等になり、先生にとって新たな発見もあるようです。
動画を見せる場合には、確認テストを用意したり、間違い探しをさせるとモチベーションが高まるようです。

また、在宅勤務・在宅学習によって平日昼間のインターネットの通信量が3~6割増加しているので、大きな遅延が起きないように、通信量に配慮した授業をしましょうという「データダイエット」の呼びかけも話題になっています。
国立情報学研究所「4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」のたくさんの講演の中から、熊本大学システム学研究センター長・教授(日本教育工学会会長)鈴木克明先生が、2006年開設の100%オンラインの大学院:熊本大学大学院教授システム学専攻(学生の半分は関東圏在住)での知見をもとに示された「平時に戻るまでの遠隔授業のデザイン7か条」も紹介します。

国立情報学研究所「データダイエットへの協力のお願い:遠隔授業を主催される先生方へ」

情報通信回線は全国民が共有する有限の資源です。通信量が情報通信回線の限界を超えるとすべての利用者が大きな影響を受けます。1600万人の生徒・学生が、この世界的な災禍の中でも十分な学習ができるように、「データダイエット」に協力しましょう。

  1. オンライン授業は通信量(データ量)が極力小さくなるように工夫しましょう
  2. 空いた通信回線の容量は、小学校低学年などFace-to-Faceが必要となる教育や障がい者への合理的配慮など必須の分野へ使ってもらいましょう

https://www.nii.ac.jp/event/other/decs/tips.htmlより転載

平時に戻るまでの遠隔授業のデザイン7か条

  1. 対面授業をやらなくても立派な通学制課程
  2. 無理はしない
  3. 同じ形ではなく同じ価値を追求する
  4. 順序を変える
  5. 大切なのは学生が学び続けること
  6. 非同期で学生の学習活動を支える
  7. 平時になっても使えるオンラインの要素を探す → 平時が戻った後にはICT教育利用の本格化を

https://youtu.be/v_Wrmnbgaooより転載

アンケートご協力のお願い

学びの場.comでは、学校再開後の課題・対応についても引き続き情報を共有していきたいと考えていますので、是非アンケートにご協力ください。
こちら からご回答いただければ幸いです。状況が変化しているので、2回目、3回目でもかまいません。

自校での取組をもっと詳しく紹介したいという方は、こちらよりご連絡ください。

構成・文:学びの場.com編集部

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