2020.05.29
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

再開対応どうしてる?(vol.1) 学校の新しい生活様式

5月25日までに全ての都道府県で緊急事態宣言が解除され、首都圏でも分散登校が始まります。各学校では、廊下にも机を並べて隣の席との間隔を空けたり、机の周りをパーティションで囲ったりと、様々な感染症対策に取り組んでいます。隔日登校の期間中、半数は登校して対面授業を受け、もう半数は自宅で同じ授業をオンラインで受けるようにした学校もあります。

5月11日の休校対応どうしてる?vol.4記事公開後にお寄せいただいた教員や保護者、学生など51名の方からのアンケートの回答を紹介します。お忙しい中ご回答ありがとうございました。

<学校再開対応アンケートにご協力いただける方はこちらからご回答ください。>

学校再開の様子

休校期間中に登校日の無かった地域でも、分散登校が始まります。

6割以上の都道府県が「準備期間」「分散登校」「時差通学・短縮授業」と段階的に登校頻度や授業時間などを増やしながら、慎重に感染拡大しないか様子をみて、その後通常登校・通常授業としました。

たとえば神奈川県教育委員会は、6月1日から1日2時間程度の分散登校を開始し、6月末から全児童生徒が毎日登校するものの、8月末までは1コマの授業時間を40分に短縮し、在校時間を短くするというガイドラインを出しています。

アンケート結果から

  • 2週間は通学班で分けて分散登校。(公立小)
  • 学級を2分割し、午前登校と午後登校に分けている。(公立小・中・高)
  • 男女別に午前、午後の分別登校。(公立中)
  • 第1週目はクラスを3つに分けて、3年生は3日間、1、2年生は2回登校。第2週目は、クラスを2分割して、午前・午後に分けて登校。(公立中)

学校での感染症対策

文部科学省が示した「学校の新しい生活様式」

文部科学省は5月22日「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」を出しました。
レベル3は「特定警戒」、レベル2は「感染拡大注意」、レベル1は「感染観察」都道府県で、レベルの変更は都道府県知事が決定します。

「感染症対策を講じてもなお感染の特にリスクが高い学習活動」として、以下の4つの活動が例示されていますが、現在は全国がレベル1なので、授業や部活動も「可能な限り感染症対策を行った上で」通常通り行うことができるとされています。

  • 各教科等に共通する活動として「児童生徒が長時間、近距離で対面形式となるグループワーク等」及び「近距離で一斉に大きな声で話す活動」
  • 音楽における「室内で児童生徒が近距離で行う合唱及びリコーダーや鍵盤ハーモニカ等の管楽器演奏」
  • 家庭、技術・家庭における「児童生徒同士が近距離で活動する調理実習」
  • 体育、保健体育における「児童生徒が密集する運動」や「近距離で組み合ったり接触したりする運動」

下記の2つも比較的リスクが高い活動とされています。

  • 理科における「児童生徒同士が近距離で活動する実験や観察」
  • 図画工作、美術、工芸における「児童生徒同士が近距離で活動する共同制作等の表現や鑑賞の活動」

第二波が来て、再びレベル3になってしまっても、分散登校は可能そうです。

熊本県教育委員会の感染防止対策チェックリスト(例)、函館市教育委員会の児童生徒向け配付資料

アンケート結果から

  • マスクを常に着用。(公立小、公立中)
  • 校門で健康チェック。校内に入る前に手洗いの徹底。ハンドソープ、手指消毒液を大量に用意した。(公立小、公立中)
  • 放課後に机、椅子、ドアノブ、手すりなどを教師が消毒。消毒作業を地域ボランティアなどに外部委託できないか検討している。(公立小、国立小、公立中)
  • 分散登校中は1教室20人以内とし、市松模様に座らせる。(公立小、公立中、公立高)
  • 手洗い場、トイレに1m置きに待ちスポットを表示。(公立小、公立高)
  • 体調不良欠席を出席停止扱いにする。(公立小)
  • 給食は席を向かい合わせにせず前向きで、当面おしゃべり、おかわり禁止。3週間は教員が簡易給食を配膳。(公立小)
  • 実験は中止。話し合いは禁止し、対話的な学習はタブレット上で行う。(公立小)
  • トイレ掃除は教員が行う。(公立小)
  • 水道、トイレはクラスごとに指定。発熱者用の部屋を用意。(公立中)
  • 集会等は集まらず、教室で放送を聞く。休み時間もあまり動き回らず、なるべく席にいるように呼びかけている。(公立中)
  • 部活動ごとに感染症対策を明文化し、保護者に周知した。(公立中)
  • プリントの配布、回収は教師が行うか、生徒自身が持ってくるようにし、回さない。(公立中)
  • 机2つに生徒1人とし、グループでの話し合いはせず、ワークシートを回し読みさせる。(公立高)
  • 面談時はマスクとフェイスガードをする。(公立高)
  • 部室は使用禁止。教室を更衣室に割り当てる。(公立高)

ある中学校で保護者に配布された校内ガイドラインより

1 基本的感染予防対策
・厚労省資料参照『手洗い咳エチケット』指導徹底
・消毒液使用徹底
・生徒下校後の消毒徹底
・全員マスク着用の徹底
・教室内二方向換気(1~2回/1h)

2 生徒の健康管理
・毎朝検温 健康観察カード提出(教職員も)
発熱者、風邪症状者は自宅休養
・咳エチケット(マスク、ハンカチ持参)の徹底
・水分補給(水筒持参)

3 授業
・3密を避けた活動
・共用物使用後の手洗いの徹底
・実技を伴う教科
[音楽]
歌唱は3密を避け、マスク着用、咳エチケットを徹底して行う
リコーダー 現段階は行わない
[理科、美術、技術、家庭科]
共用物使用後の手洗い、消毒の徹底
調理実習は現段階は行わない
[保体]
共用物使用後の手洗い、消毒の徹底
3密を避けられない内容は現段階は行わない
マスク着用は個人判断

4 給食、清掃、休み時間
[トイレ]
・ソーシャルディスタンスを保ち、密にならないようにマークの所で待機する
・上履きごと履けるスリッパを使用する
[図書室]
・入退室時の手洗い、消毒の徹底
・席は間隔を空け静かに利用
[給食]
・全員手洗いの徹底
・当番は衛生面点検
・席は向い合わせにせず、会話も控える
・歯磨きは食事が終わり次第水道が密にならないようにする
[清掃]
・毎日加湿器を清掃する
・ゴミ捨ては、各クラス袋の口を閉めこまめにする
・清掃後、うがい手洗いを徹底する
[部活動]
3密を避け、体調管理、うがい手洗い、消毒の徹底
以下省略
[生徒指導]
・生徒の心身の状況を把握し、ケア、サポートをする
・コロナ関連に対する差別や偏見を許さない
・正しい情報の提供
・悪い情報だけに目を向けないこと、差別的な言動に同調しないこと等の指導

学習指導の遅れへの対応

丸3ヶ月間休校した地域では約200時間分の授業時間が不足しています。アンケートでは、ほぼ全ての方が「夏休みの短縮」を挙げられていました。

和歌山県や岡山県、山形市は夏休みを8月8~16日の9日間にしました。沖縄県は8月1~10日の10日間、仙台市は8月8~18日の11日間、東京都は8月8~23日の16日間と発表しています。あまり短縮しない地域でも7月末までは授業を行うようです。

高校野球の甲子園大会中止の理由として、「学業の支障」が挙げられたことも話題になりました。全国中学校体育大会、全国高校総合体育大会も中止になり、スポーツ推薦での進学への影響も心配されています。

「専門家などからはしきりに学習の遅れに関する懸念が表明されているが、学校は本来友達の交流などを通じて社会勉強を行う場であり、その機会が一時的にでも奪われることが最も問題だと思う。」という回答もありました。

アンケートの回答から

  • 夏休み、冬休みの短縮。行事を精選・縮小。(公立小、公立中)
  • 隔週で土曜日に4時間授業。(公立小、公立中)
  • 短縮した分の夏休み、冬休み期間中、塾の授業を理由に欠席する児童も欠席扱いにはしない。(公立小)
  • 朝の学習をモジュールにし時数確保。クラブ活動の時間を一部授業にする。(公立小)
  • 再開後の2週間で昨年度の未履修分をカバーし、今年度のカリキュラムは5%削減する。(公立小)
  • 基礎学習を主とし、復習は自宅課題にする。5教科を優先して時数を確保する。(公立中)
  • 7月の祝日も授業実施。オンラインで実施した内容の続きとして授業を実施する。(国私立中)
  • 自宅で予習、学校で確認の反転学習にする。(公立高)

行事等の精選

プール指導や職場体験は中止する学校が多いようです。
1学期に予定していた運動会や修学旅行は、何とか2学期以降に延期して実施しようとしているようです。
教員免許取得のための教育実習も延期、短縮されることになり、学生たちは不安な気持ちで過ごしています。

アンケートの回答から

  • 学芸会を中止し、代わりに春の運動会を秋に行う。(公立小)
  • 教室での授業参観、プール指導、体力テスト、身体測定を中止にした。(公立小)
  • 職場体験を中止した。(公立小、公立中)
  • 林間学校の宿泊日数を短縮予定。(公立小)
  • 1学期の定期テストは前年度の内容で2学期に行う。(公立中)
  • プール指導、運動会、文化祭、1学期の中間テストを中止。(公立中)
  • 1学期の期末試験、陸上競技大会中止。(公立中)
  • 5月に開催予定だった運動会は中止にするか、2学期に行うか検討中。学習の遅れを取り戻すことにやっきになっている、学習以上に行事や集団での話し合いが大切であると思う。学習はいくらでもやりなおせるが、行事や集団での話し合いなどは、今しかできない。(公立中)
  • 1学期の体育祭を2学期に、2学期の文化祭を3学期に延期することを検討している。(公立中)
  • 宿泊行事は中止。修学旅行のみ来年3月に延期予定。(国私立中)
  • 1学期の中間テスト、夏休みのオープンハイスクールを中止。修学旅行(東京方面)の行先変更。(公立高)

心のケア

文部科学省は5月27日、下記の4項目からなる「新型コロナウイルス感染症に対応した小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開後の児童生徒に対する生徒指導上の留意事項について(通知)」を出しました。
  1. 児童生徒の自殺予防について
  2. 児童生徒の不登校について
  3. 児童虐待について
  4. 児童生徒に対する差別や偏見について

夏休みの短縮、行事の中止などにより、例年の夏休み明け以上の絶望感を抱く子どもも少なくないと考えられます。
先生方も初めて会う子どもたちなので普段どれくらい元気な子なのか分からない、マスクをしているので表情が読み取れないかもしれないとコミュニケーションに不安を持たれているようです。

アンケートの回答から

  • 養護教諭が作成したコロナに関するアンケートを、学校再開後、夏季休業前、夏季休業後の計3回実施する。カウンセラー、相談員によるストレスチェックや対処法が書かれた通信の発行もしている。(公立小)
  • 定例の学校生活アンケートの中で新型コロナウイル感染や学習の遅れについて等の不安を吸い上げ,必要に応じてカウンセリングの機会を設ける。(公立小)
  • スクールカウンセラーによる授業参観。(公立中)
  • 担任と生徒の面談。行事や中総体の中止など、目に見えない敵への怒りを生徒がうまく発散させられるか、私たちがサポートする必要があると思っている。(公立中)
  • 再開初日に「心のケア」アンケートを全校実施。(公立中)
  • 休校期間中の健康・家庭学習状況、生活の変化、考え方の変化を探るアンケート「Change & Hope with コロナ」を作成し、全校生徒を対象に実施。気になる生徒は養護教諭、生徒指導部、スクールカウンセラー、コーディネーターと共有する。1年生は学校への帰属意識が極めて希薄になってしまっている。3年生は高大接続改革に加えコロナショックで進路が一層不透明になった。(公立高)

「多忙化が叫ばれて久しいが、休校になってみて、当たり前となっていたこれまでの業務量がいかに異常であるか気付かされた」「自分の子どもをみながら、自宅からオンライン授業をするのは難しい」など教員の働き方に関する回答もありました。

学びの場.comでは、学校再開後の課題・対応についても引き続き情報を共有していきたいと考えていますので、是非アンケートにご協力ください。
こちら からご回答いただければ幸いです>

構成・文:学びの場.com編集部

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

pagetop