2010.08.03
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

いまどきの子どもの男女交際、問題は?

第16回目は「いまどきの子どもたちは男女交際が昔よりカジュアルになっています。教育上、問題はありませんか?」についてアドバイスします。

異性を求めるのは健康的なことです

 最近の若い人たちの男女交際は、私が若かったころに比べて、かなりカジュアルになってきたと思います。中学生、高校生でも、恋人と付き合っている子どもがいます。性交渉も低年齢化しており、16~19歳の女子200人を対象に行った調査では、「今までに何人の人とセックスをしたことがありますか」との問いに、最少0人、最大30人、平均1.96人という結果が出ています(博報堂生活総合研究所 中村恭子 原田曜平著『10代のぜんぶ』ポプラ社 2005)。このような子どもの男女交際についてどう考え、対処すればよいのか、迷う先生や親御さんもいらっしゃることでしょう。

 男女交際を始める年齢が早まった今、それをまた以前のように遅くするというのは無理というもの。もともと異性を求めることは健康的なことなので、私は学生でも男女交際はしてよいと思います。あまりに強く性を否定すると、子どもが将来恋愛に臆病になったり、晩婚になったりする傾向があります。また中には、健康的な恋愛ができず、自分より絶対的に弱いものへの性的虐待、たとえば児童ポルノなどに走る大人になってしまう可能性もあるのです。

 とはいえ、学生時代からの恋愛を認めるからには、まずは各年代に合った性教育を行う必要があるでしょう。

性教育の土台があってこそ恋愛は認められます

 最近では、小学校低学年でも親に「○○君が好き~」と言ってくる子もいるそうですが、小学校4年生くらいまでは、その子の個性を伸ばす時期。恋愛に興味が向くと、脳の大部分がそのことで占められてしまうので、勉強や遊びなど他のことに意識が向くようにしてあげましょう。

 女の子は小学校5~6年で初潮を、男の子もこのくらいの年齢から精通を経験する子が増えてきますから、この機会に学校で性教育を始めるとよいと思います。「人を愛すること、異性に興味を持つことは悪いことではない。大好きな人ができて、結婚したら生命が生まれる。これは素晴らしいこと」という面からアプローチしていくとよいでしょう。

 中学生になったら「セックスは生命をはぐくむ行為であり、愛し合っている者同士であれば満たされる行為であること。この行為があるからこそ人類は生き延びてきた」ということを教えて、セーフセックスについて伝え、きちっと自分の身を守り、そして相手を大事にすることを教えます。

 現代社会には性に関する情報があふれていますから、子どもたちが間違った情報を手に入れてしまう可能性は大きいです。その前に、誰もが納得できるようなカリキュラムに副って、学校できちんと教えることが理想なのです。しかし、それがかなわないのであれば、家庭で、特に女の子には母親が、男の子には父親が性について教えられるようにしたいと思います。こうした話題が自然とできるような雰囲気がつくれれば、中学生以降、子どもは恋愛について何かあったとき、親に相談してくるので安心です。

 「学生は勉強が本分。恋愛なんてもってのほか!」という親御さんもいるかもしれません。ですが、人を愛するという気持ちは自然なこと。私は息子たちに「付き合ってもいいけれど、成績は下げないで」と言っていました。そして「自分よりちょっと成績のよい子と付き合って」とも(笑)。それによってお互いを高めあえればいいですよね。

「人を思いやる」ことの大切さ

 出会い系サイトや援助交際などが社会問題になっており、原因として家庭での愛情不足が指摘されることがあります。私は、当事者が中学生以上の場合、親の愛情不足を原因とするのは言い訳だと考えます。もちろん親が子どもに愛情を注ぐことは大切ですが、中学生にもなれば、一個人として自分をコントロールするべきです。

 たとえば、自分が寂しいのであれば、下級生や友だちの中で自分よりも寂しい思いをしている人を探し、その人をいたわる。人のために何かをするというのは、他者を想う、他者を愛する心理を発達させる上でとても有効です。これができると子どもはぐんと成長してくれます。

 最近は、外見がモデルのようにきれいな女の子や、流行のツボを押さえているノリのよい男の子などが、交際相手としてよいという価値観が横行してしまい、人の中身を見て付き合うことがないがしろにされているようです。若者が短期間で交際相手を次々に替えるのは、これも原因の一つではないでしょうか。心を割って付き合える相手は必ずいますから、表面的なことばかりに気を取られず、本当に自分に合った相手に出会い、お互いを尊重し合えるような素敵な恋愛経験を積んでいけるよう、大人がアドバイスしてあげたいですね。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望・気になることなど、お寄せください!

「アグネスの教育アドバイス」では、取り上げて欲しいテーマ、教育指導や子育てで気になることなど、読者の声を随時募集しております。下記リンクよりご投稿ください。
※いただいたご意見・ご要望は、企画やテーマ選びの参考にさせていただきます。
※個々のお悩みやご相談に学びの場.comや筆者から直接回答をお返しすることはありません。

pagetop