子どもたちの探究心に灯をつける国語授業デザイン(前編) 真に生きて働く言葉の力を育てる

「子どもの可能性を伸ばす!」を理念に掲げる教育サークルREDS大阪主催の筑波大学附属小学校の溝越勇太先生を講師に迎えたセミナー「子どもたちの探究心に灯をつける国語授業デザイン」が、2025年7月19日に阿倍野市民学習センターで開催された。リポート前編では、探究型国語授業の視点と俳句学習の模擬授業の様子を紹介する。
【講師】
筑波大学附属小学校 溝越勇太先生
【プログラム】
講座1 「子どもたちの探究心に灯をつける」
~国語授業における探究型授業デザインとは~
講座2 「研究発表会の授業づくり裏側を大公開」
~教材分析から単元化までの過程「スイミー」を例に~
講座3 「クラス全員が話したくなる!聞きたくなる!」
~トークトレーニングを生かした学級づくり~
講座1「子どもたちの探究心に灯をつける」
国語授業における探究型授業デザインの3つの視点

「探究型国語授業」では、教科書をなぞるだけの受け身な学びにとどまらず、授業後も子どもたちが主体的に学び続けられるよう授業を設計し、学びの場を教室の外へと広げていく。講師の溝越勇太先生(筑波大学附属小学校教諭)は、「探究型授業」に取り組み始めたきっかけに子どもたちからの「先生、今日の授業何やるの?」という発言があったと話す。
「『音読は何回すればいいですか?』『何を話せばいいですか?』といった質問を受けて、学びが受け身になっている現状に気付かされました。その反省を踏まえて、私の授業では子どもたちが自ら課題を見つけ、解決していく『探究型授業』を行っています。」(溝越先生)
「探究型国語授業」を「教室での国語の学びを地域社会の諸課題を解決するために組織された社会活動に生かすこと〈地域貢献・社会参加〉を通して、真に生きて働く言葉の力を育てることを目指す国語授業。」と定義し、以下のの3つの視点を意識して授業をデザインする。
- 「指導内容」:SHARPにする
学習内容を項目ごとに分け、教科の本質を掘り下げて探究する視点を持つ。 - 「指導方法」:STORYを持たせる
学びの文脈を意識し、教室内の学びを地域や社会の課題解決に結び付けられるストーリーを設定する。 - 「授業展開」:DRAMAを意識する
より深い学びを引き出すために、授業の中に2つの山場と谷間を設定。最初の山場で小さな達成感を得させ、その後あえて迷いや疑問を感じさせる谷間を経て、最後に「分かった!」という大きな山場へと導く構成を工夫する。
【探究型授業デザインのポイント】
- 答えのない問題を解決(しようと)する状況・場を設定する。
- 教室での国語の学びを地域・社会のために「使う」経験をする。
- 教室の中、授業の中だけで完結しない学び(授業をきっかけに実際の地域の問題を解決していく学び・学びのストーリーづくり)。
地域貢献・社会参加の実践事例として「ハッピー絵本プロジェクト」が紹介された。子どもたちが絵本作家となり、オリジナルの絵本を制作する。絵本作家や出版社の編集者など外部の専門家を授業に招き、取材の仕方や制作過程を学ぶ。最終的には、地域の人々や幼稚園の子どもたちへの読み聞かせなどを通じて、社会に貢献することを目指す実践型プロジェクトとなっている。
模擬授業:俳句学習「ニセモノはどっち」
受講者全員が「ニセモノの俳句」を探す模擬授業に参加。「指導内容」をSHARPにするために「ニセモノ」という、子どもたちの関心を引く言葉が意図的に選ばれている。
<一つ目の山場>
伊藤園お~いお茶「新俳句大賞」の入賞作品を含む2つの句を提示し、どちらが「ニセモノ(作例として下手な句)」かを、考える課題が出された。
提示された句
- 妹は こわがらないよ きもだめし
- 妹は 歌って歩く きもだめし
------------------------------- - タンポポの あたたかい色 寝てしまう
- タンポポの きれいな黄色 寝てしまう
受講者からは自身の意見とともに、「言葉がストレートすぎる」「想像を広げられないから面白みに欠ける」といった感想が挙がった。
<谷間>
次に一つの句のみが掲示された。
- うれしくて もう一ど見る 雪だるま
これは「ニセモノ」かを受講者に問いかけた。比較対象がないため多くの参加者から「判断が難しい」という声があがる。その後、もう一つの選択肢に以下の句が掲示され、2つを比較したうえで考えるよう促された。
- ねるまえに もう一ど見る 雪だるま
最終的に、ニセモノとして紹介されたのは以下の句だった。
- 妹は こわがらないよ きもだめし
- タンポポの きれいな黄色 寝てしまう
- うれしくて もう一ど見る 雪だるま
<大きな山場>
一番好きな俳句を選び、その作者になりきった作文「なりきり作文」を書く。
「この授業のねらいは、『ニセモノはどっち』という問いを通じて、俳句の表現技法を学び、感情語を使わない表現に気付かせることです。子どもたちがつい多用しがちな『うれしい』『たのしい』などの単調な感情語を避け、行動や情景を豊かに描写する力を育むことを目指しています。」(溝越先生)
後編では、スイミーの「絵本プロジェクト」とトークトレーニングの実践紹介をリポートする。
取材・文・写真:学びの場.com編集部
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