栄冠は誰の手に!?「検索の女王コンテスト」 私立桜丘女子中学・高等学校
静かな図書館の中で聞こえるのは書棚を行き来する足音、ページをめくる音、パソコンのマウスをクリックする音。50名近い生徒がいるとは思えない程の静けさ。これは、私立桜丘女子中学・高等学校での「検索の女王コンテスト」の模様である。今回5回目という同イベント、始まったきっかけ、生徒たちの反響などを、イベント実行委員長の品田健先生にうかがった。
2001年11月24日、東京都北区にある桜丘女子中学・高等学校を訪れた。この日は校内で行われる「検索の女王コンテスト」秋季大会決勝戦の日。会場となるメディアリソースセンター(略称:MRC)には予選を勝ち抜いた中学1年生から3年生まで各学年2チーム、高校1年生8チーム、高校2年生と3年生がそれぞれ1チームの合計16チームが集まっていた。 各チームは開始までにパソコンを起動させ、動作確認を済ませる。楽しそうにおしゃべりしている姿は休み時間と変わらない。しかしコンテスト開始の時間が近付き、先生がコンテストのルールの説明をはじめ、問題の入った封筒が各チームに配布されると、一瞬にして緊張の糸が張り詰める。さっきまでのざわめきが嘘のように静かになる。スタートと同時にすっと席を立ち、目的とする書棚に向かう生徒、PCで検索を始める生徒と、誰とも話をすることなく目的の場所へ向かう生徒の姿に驚く。時間は40分。その間にこのコンテストの実行委員長である私立桜丘女子中学・高等学校の品田健先生にお話を伺う。 |
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このコンテストは今回で3年目、第5回の開催となる。開催のきっかけは3年前に図書館をリニューアルし、MRCとしてオープンした際、記念となるイベントをと考えたことからはじまる。MRCは図書のほか、CD・DVDなどの音響・映像設備や、PCが設置されている。テーブルやイスだけでなく、ソファや触って学べるレプリカの美術品が置かれており、お屋敷の書斎のようである。MRCの開館記念として、PCや多くの書籍を活かした企画ということで「検索コンテスト」に決定した。 問題は歴史、時事、英語など6ジャンルより合計30問が出題される。これらの問題は開催前にこのコンテストを担当する「教際化」の教員らによって考えられたもので、中学生でも理解できる内容か、過去に出題されていないかなどを検討して選ばれたものである。かつて調理科があったなごりで調理関係の書籍が多く、食事のマナーについてなどの問題が出されることもある。例えばこのような問題が出題されたので、挑戦してみてはいかがだろうか。
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【問題】 私たちが英語の時間によく耳にする、人称代名詞they-their-them。この言葉はもともと英語ではなく、イギリスを侵略した民族が話していた言葉でした。ほかにも、Derby, Rugby, window, skyなど、様々な言葉をこの言語から借りています。さて、この言葉、もともと何族(または何語)によって話されていた言葉でしょうか。
【解答】 デーン語からの借用語、またはデーン人(ヴァイキング) 書籍:ニュートンムック 古代遺跡シリーズ バイキングとアングロサクソン P.53 【問題】 17世紀、日本の有田焼の技法をまねて作られたとされるヨーロッパの陶器は、どこの国の何という陶器か? 【解答】 オランダのデルフト |
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このような問題全30問を40分間で検索し、問題の解答とその解答の出典を記入し提出する。出典は、書籍の場合は「書籍名、作者、分類番号・・・」、ネット検索の場合はURLを記入する。審査は、当日中に担当教員らによって行われ、発表される。出題された30問中、解答できるのはおよそ80%、正解しているのは70%程度になる。審査の際は、常に別解が出てくるため、ひとつひとつについて検証を行う。また、図書の取り扱いなども審査の対象にされる。その結果、上位3チームには全校生徒の前で校長先生より表彰される。 |
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事前に綿密に戦略をたてているチームもあり、検索のコツは「チーム内秘」になるそうだが、連覇しているチームの生徒によると、まず出題されている言葉を広辞苑などの辞典で調べ、キーワードとなる言葉を拾い出し、そこからネット上で、もしくは専門書にて検索をするようである。スタート時に、いかに的確なキーワードを拾い出すことができるか、1回の検索で解答にたどり着けない場合は2回3回と検索を重ねることができるか。また、公的機関や大企業の公式ページ、もしくはURLの長さの比較的短いところの方が正しい情報が多い、ブラウザのウインドウは複数開いておくといったところがコツになるようだ。書籍の場合は、日ごろからMRCをよく利用し、十進法分類やどこに目的とする書籍があるのかを把握しておくことも重要である。そのように次々にコツを見つけ出し、速やかに検索していく姿には圧倒される。大人でもここまでスムーズにはできないのではないだろうか。 コンテストの終了が告げられると、一斉に緊張が解けた生徒たちに笑みが戻る。解答用紙は元の封筒に収めて回収され、使用した書籍やPCを収納し、解散となる。満足そうな顔の生徒、思うようにできなかったのか静かな表情の生徒とさまざまである。審査の結果、優勝したのは高校1年生のチームであった。
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この学校は、1924年に創立された中高一貫教育校だったが、一時期、高校のみとなり、1996年に中学を再開し、校内の改装を行った。現在は校内に400台以上のパソコンを所有し、先生も生徒もあらゆる場面でパソコンを活用している。コンテストに参加した生徒たちをはじめ、各教室のあらゆる場面で自在にパソコンを使いこなしている生徒の姿が印象的だった。「環境は整ってきたので、次は中身(教材や取り組み)です。」と品田先生。また、他校との交流試合を希望しているそうで、その相手校を募集中である。 |
■関連サイト
桜丘中学・高等学校 http://www.sakuragaoka.ac.jp/
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