学校から家庭、地域へ!学校ホームページで広がる輪
更新がない、つまらない、先生の負担になるばかり...。学校HP(ホームページ)のことをそう考えている人はいないだろうか。しかし、うまく機能すれば、学校の情報公開にこれほど役立つツールはない。今回は、学校HPの普及に尽力されている静岡大学 情報学部 情報社会学科 助教授の堀田龍也氏とともに、学校HPを保護者や地域とのコミュニケーションツールとして、有効活用している2校を取材した。
最近、学校の情報公開が話題になっている。HPを持つ学校も急増中だ。しかし、多くの学校HPは、学校の沿革や校訓などの学校案内的な内容にとどまり、熱心に更新している学校でも、せいぜい運動会や総合学習などの大きなイベントを掲載するのがやっとではないだろうか。また、HPの制作や更新の専任の先生がいないために、情報担当の先生が授業の合い間に時間を捻出して作業に携わっている場合が多く、一人の先生に負担が集中する、その先生が転任したら更新が止まってしまう、などの問題もよく耳にする。 しかし、誰でも簡単にHPが作成できるシステムを導入し、学校のHPを、保護者や地域とのコミュニケーションツールとして、有効活用をしている学校もあるという。今回は愛知県小牧市立光ヶ丘中学校と京都市のノートルダム学院小学校の2校を取材した。 |
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●「更新がない」のは「教育活動も止まっている」ように見える… 最初に紹介するのは愛知県小牧市立光ヶ丘中学校。平成2年に開校したばかりの若い学校である。平成16年に校長の玉置崇先生が赴任して以来、HPは毎日更新している。
●学校HPが地域コミュニケーションの拠点に 校内の活動だけでなく、地域の活動、おやじの会、PTAなど保護者主体の活動も掲載している。今まで回覧版くらいでしか知られなかった、ボランティア活動やもちつき大会などの小さなイベントが写真入りで紹介される。写真には、近所の知人が登場することもある。親近感がわくし、活動の普及にもつながる。学校HPが地域コミュニケーションの拠点となっているのである。
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●緊急連絡網としても有効 次の事例は、京都市の私立ノートルダム学院小学校。同校で、HPを担当するのは情報科の井上朋美さん。一般企業でSEとして働いていたが昨年学校からの要請を受けて母校である同校の情報部門を担当することになった。
緊急連絡もHPで行うためには全家庭にパソコンとインターネットが完備していることが理想。現在の普及状況はどうなっているのだろうか。 |
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「昨年7月より、給食献立表はホームページでのみ発表し、ペーパーレスとしました。同時に各家庭にパソコンとインターネットの導入を呼びかけたのです。強制はできないので、希望者には従来どおりの紙での連絡を継続。継続を希望したのは23家庭でした」 コンテンツとして最も頻繁に更新しているのは「今週のノートルダム」。校内の教育活動を逐次報告している。 「私立なので行事はかなり多い。すべてを紹介したいのですが、なかなか追い切れていないのが現状」 井上さん自身も週20時間のコンピュータの授業サポートを担当しているため、更新には苦労されているようである。 また、各学年やクラスごとの活動は、担当の先生がそれぞれ入力し、井上さんは、誤字脱字のチェックや承認の作業のみでいいので負担が分散できる。修学旅行やスキー合宿など、井上さんが同行しない校外活動の情報は、現地から、写真付携帯電話で撮った写真と文字原稿を担当の先生が送ってくる。それを井上さんが即座に編集して公開。無事に着いたかどうか気を揉んで待っている保護者たちに好評だという。 |
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● 児童・生徒の個人情報は守れるか? 両校とも、簡易にHPが制作できるシステムを導入し、ほぼ毎日更新が可能、校内のすべての先生が発信できる、ということが共通点。また、保護者との距離が縮まるという効果についても同様である。しかし、問題となるのは児童・生徒の個人情報の問題。 ノートルダム学院小学校では 光ヶ丘中学校では ●コンテンツマネジメントシステムとは ところで、両校とも、頻繁に更新するためには、コンテンツマネジメントシステム(CMS)を導入している。CMSとは、数社から製品が出ているが、簡単に言うと、HTMLの知識がなくてもHPを作成でき、更新も自動でできるソフト。情報を更新するたびにリンクを貼りかえる、という従来の面倒な作業を必要としない。複数の人がページの情報を入力でき、最終チェック担当者が承認をすることによって、ページが公開される仕組みになっている。 学校向けに特化している製品としては、オープンスクールCMS(内田洋行)、EDUCOM(エドウェル)、キュートスタッフ(スズキ教育ソフト)、TS@SCHOOL(富士通)などがある。 ●学校HPへの新たな期待 更新がない、つまらない、先生の負担になるばかり…だった学校ホームページ。うまく機能すれば、学校の情報公開にこれほど役立つツールはない。 「学校のことを知りたいけど学校は何も知らせてくれない」「学校にもっとかかわりたい、でも何をしたらいいかわからない」。こんな不満を持つ保護者がいる一方、学校側でも「おたよりを配付して情報公開しているのに読んでくれない」「保護者のボランティアが欲しいが、どう協力を求めたらよいかわからない」と不満を持っている。学校HPはこうした両者のすれ違いを一気に解消してくれる。 また、地域へも情報の受発信の輪を広げることで、都市化によって崩壊した、地域コミュニティの再生にもつながるだろう。単なる学校案内から、地域コミュニケーションの拠点に。学校HPの新たな局面が拓けそうである。 (聞き手/静岡大学 情報学部 情報社会学科 小牧市立光ヶ丘中学校のHP ノートルダム学院小学校のHP 堀田龍也先生の研究室のHP |
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