2005.03.31
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学校の授業でここまでできる!デジタル表現の可能性

「デジタル表現と子どもの学び そして教師の確かな手だて」をテーマに、3月20日(日)、東京千代田区の全共連ビルで「D-project春の公開研究会」が開催され、授業の手助けとなるプロジェクトの成果が発表された。

パネルディスカッション
リーフレットを作成して
募金を呼びかける

 D-project(デジタル表現研究会)のDには「デジタル」と「デザイン」の2つの意味が込められている。その言葉が示すように、D-project ではITに振り回されることなく、様々なメディアを活用して授業にデジタル表現を取り入れていくには、どうすれば良いかを提案している。そのD-projectが進めている多くのプロジェクトの成果を発表する場となるのが「D-project春の公開研究会」。

◆ それぞれのプロジェクトから披露された活動の集大成

D-projectの柱となるのは、企業や団体が協賛しながら、先生や子どもたちが動かしているプロジェクトとなるが、今回の公開研究会では「プレゼンテーションプロジェクト」、「GLOBAL SCHOOLプロジェクト」、「ユニバーサルデザインプロジェクト」、「連画・絵のリレープロジェクト」、「マニュアル実践活用プロジェクト」、「気軽に!デジタル実践プロジェクト」、「ユネスコ・リーフレットプロジェクト」、「デジタル表現コンテストプロジェクト」の8つのプロジェクトの成果が披露された。

最初のパネルディスカッションでは、そのプロジェクトの代表の先生がパネラーとなって、自分のプロジェクトの見どころをアピールしていった。
 そして、午前中に行われたプロジェクト発表会では、7つのプロジェクトから活動内容が報告されていった。

「マニュアル実践活用プロジェクト」が紹介したのは、中学校でのドラマ科の授業について。現代の子どもと未来の子どもが入れ替わるという内容のドラマを生徒に制作させたが、この授業はイメージを湧き出させる力をつけさせるのがねらい。言葉だけではない表情や身体の動きを使った表現で、相手の気持ちを理解してメッセージを伝える授業へと結びつけていった。

 「ユネスコ・リーフレットプロジェクト」が進めているのは、書き損じのハガキを集めて募金するための働きかけだが、そのために取り組んでいるのはパソコンを使ったリーフレットの作成。会場では生徒の作品が展示され、良いと思った作品への投票も行われていた。こうした取り組みは生徒の意識を高めることにもつながり、実践した学校では生徒の方からスマトラ沖地震の津波の援助もしたいとの声があがるようになったという。
 


 

◆ ワークショップに参加して授業で使える動画づくりに挑戦

 そして、D-projectのプロジェクトと並ぶ、もう一つの柱がワークショップ。実際に授業で使える知識を先生に身に付けてもらうためのワークショップを展開しているが、公開研究会では午前中に中・高生版、午後に小学生版の動画ワークショップが開催された。

教室に集まった先生に向けて、まずは動画コンテンツを作るためのソフトの使い方を説明。誰に何を伝えたいか、こだわった点はどこかなどをワークシートに記入して、それにしたがって幾つかの画像を組み合わせていく参加者たち。2人1組になってノートパソコンを使いながら、画像に合わせてアフレコ機能で自分の声も取り込んでいく。2時間程度のワークショップだが、最初の1時間は説明となり、実際に作品を作り上げるのは約1時間という限られた時間。それでも参加した先生方は5分程度の動画コンテンツを完成させていった。この完成品は午後からのポスターセッションで紹介されたが、トリミングや、速度を変えたりしながら、見事な作品に仕上がっていた。

◆子どもたちが考えたオリジナル文具を自分たちでプレゼンする

 「ユニバーサルデザインプロジェクト」の集大成として行われたのが「子どもプレゼン」。それぞれの学校の子どもらが、自分が考えたオリジナルのユニバーサルデザイン文具を紹介していくというもので、本当に商品化できそうな、おもしろいアイデアの文具が登場した。

 今回のプレゼンが変わっていたのは、午後からの本番の前に、午前中に行われたリハーサルも一般に公開されたということ。この公開リハーサルでは即座にアンケート結果が集計できる内田洋行の「エデュクリック」が使われ、リハーサル見学者はリモコンを使って、「このプレゼンを見て商品が欲しくなったか」といった質問に回答していった。
そうしたアンケートの結果を参考にしながら子どもたちは午後からの本番に臨んだが、リハーサルと違って見学者も多く緊張感も高まる。それでも物怖じすることなく、時にはユーモアも交えながら、自分たちが考えた文具のプレゼンを進めていった。

そこで出てきたのは、爪を汚さずに外側の紙をはがせる「らくピリクレヨン」や、シャツの形をした消しゴム「シャツけし」など、大人では考え付かない秀逸なアイデアのものばかり。その中でグランプリを受賞したのは、神奈川県綾瀬市立土棚小学校の「モチフト」。くぼみをつけて持ちやすくしたマジックペンで、あえて商品化する際の問題点を洗い出したことが受賞につながった。

◆ポスターセッションで興味ある発表を見て回る

 午後からの実践ポスターセッションは、1つの会場で6つのブースに分かれて、同時に発表が行われるというもの。同じ発表が2回行われるといっても、全ての発表を見て回ることは至難の業。参加した先生方は、自分の授業に役立ちそうなポスターセッションを選んでいくのだが、つまらない発表だと他のセッションに移動されてしまうので、発表者もうかうかしてはいられない。実践の成果を多くの人に伝えようと熱の入った発表となった。

 「携帯電話の教育利用」について報告を行ったのは、千葉県柏市立旭東小学校の佐和伸明先生。子どもに持たせるのに問題視されることもある携帯電話だが、あえてFOMAの機能を学習に利用するという試みがなされた。調べ学習で分からないことがあったら携帯電話で取材したり、ゲストティーチャーにテレビ電話で資料を見てもらったり、交流学習の相手先とテレビ会議のように携帯電話を使うなどの場面で用いられた。パソコンのテレビ会議システムと違って面倒な設定が必要ないのが携帯電話の利点だという。

 国語と情報という観点から「教室で身につく表現力」をテーマに発表を行ったのは石川県金沢市立大野町小学校の辻和久先生。Web学級日誌と1分間スピーチを活用して、書く力と話す力を身に付けさせ、子どもの表現力を高めていったという。Web学級日誌を使っているうちに、限られた文字数に伝えたい情報を書き込むため要約する力もついてくる。また、友達に見て欲しいということから相手意識も芽生えていくとのことである。

 また、このポスターセッションでは大人に混じって小学生や中学生も発表を行った。「絵のリレー」について発表したのは、旭東小学校の4年生の女の子2人組。前の人の絵からアイデアを受けて、次の絵をパソコンで描いていく絵のリレーだが、どんどん付け加えて楽しい絵になっていったとのこと。

「絵のリレー」についての発表
小学生も大人に
混じって発表

事例を報告してくれた児童は、来年度は別の学校に転校してしまうそうだが、新しい学校でも絵のリレーができたらいいと語っていた。

 今回の公開研究会のまとめとしてD-project会長の中川一史先生は、「学力は基礎的な知識・理解の実態的学力だけでなく、思考力や表現力といった機能的学力との関連が大事」と語り、教師に求められているのは「ねらい」「学習内容」「しかけ」のバランスが取れた授業のデザイン力だと、参加した先生方にアピールした。

(取材・文/田中雄一郎)

マニュアル実践活用プロジェクト
中学でのドラマ科の
授業について発表
ユネスコ・リーフレットプロジェクト
会場に展示された子どもが作成したリーフレット

動画ワークショップ
授業で使える
動画コンテンツを作成

公開リハーサル
リハーサルでは
「エデュクリック」で
プレゼンを評価
らくピリクレヨンについてのプレゼン
自分たちが考えた
文具をプレゼンでアピール
ポスターセッション
携帯電話の
教育利用について報告
 
中川先生
研究会のまとめについて
語る中川一史先生

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