2005.03.01
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ITを活用して授業力をアップさせる 2005年の教室を考える会

教室にパソコンやプロジェクタが入ってくると、授業の形も変わってくる。そこで教師や企業の枠を超えてIT環境の活用を考え、これからの授業のあり方を探ろうということで結成されたのが「2005年の教室を考える会」。その活動は、昨年末に幕を下ろしたが、2005年からは、これまでの活動を踏まえて各地方支部で展開されていくことになる。その第1弾となる「2005年の教室を考える会 関東支部 公開研究会」が、2月5日、内田洋行 東京ショールームC3で開催された。

懇親会
懇親会

 オープニングのあいさつを行ったのは、金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授の中川一史先生。これまで中川先生は、静岡大学情報学部助教授の堀田龍也先生とともに、会の活動をリードし続けてきた。なぜ、今IT活用なのかについて中川先生があげたのは次の3点。

(1) 教育の情報化推進計画により、学校や教室のIT機器が増えてきた。 中川先生
中川先生
(2) 学校に限らずプライベートな部分でもITに接する機会が増えている。
(3) ITを活用することは授業力アップの強い味方となってくれる。

 また、今回の研究会に参加するメリットとして、「ITを今より、ちょっとだけ使ってみようかなという気持ちになる」「ちょっとだけ授業力アップにつながる」「ヒューマンネットワークを広げられる」といったことをあげ、あくまでも、これから学校でITの活用を考えている先生の後押しをしていく立場であることを表した。

◆参加型のワークショップで、新しい授業の形を提案
 この日、行われたワークショップは、国語「IT活用で集中力UP!国語の授業に一工夫!」、社会「見せることから わかる授業へ」、算数「こんなとき、あなたならどうしますか?」、体育「『筋肉』だけじゃない!体育の授業にひと工夫!」。この4科目においてITをどのように授業で活用していくかが披露された。このワークショップは、休憩をはさんで同じものが2回行われたが、参加者はどの授業を見たいか、自分で選んでいった。忙しく動き回り4科目全て見て回る人もいれば、腰を据えて同じ科目を続けて見る人もいるなど、ここで見たことを自分の学校に持って帰ろうという熱意の感じられる活気あふれるものとなった。

◆グラフの描き方を書画カメラで映し出す
 算数のワークショップを行ったのは埼玉県所沢市立荒幡小学校の寶迫芳人先生。「子どもたちにグラフの描き方を説明する時、どうしますか?」と参加者に問いかける寶迫先生。それに対して用意しておいた拡大コピーを見せるなどの答えが返ってくるが、こういう時こそ書画カメラを使えば手間が省けると寶迫先生は説明する。グラフを描いていく手順は、ワークシートを重ねていくことで、的確に伝えることができる。これならば紙は汚れないので、何度でも利用できるのに加え、振り返りの学習も簡単に行える。

 また、子どもに発表させる時も書画カメラは有効なツールになるとのこと。普通ならば画用紙か発表ボードに描いてもらうのだが、子どもに大きな図を描かせるのは、どうしても時間がかかってしまう。それが書画カメラを使うことで、子どものノートを瞬時に拡大して映し出すことができる。こうした投影機能の使い道として、展開図も口で説明しただけでは、イメージがつかめるものではないが、書画カメラの上で組み立てる様子を映し出せば、一発で分かってもらえる。

 続いて寶迫先生は、「コンパスを使って円の描き方を教える時は、どうしますか?」と問いかける。学校にあるような指導用のコンパスは大きくて使いにくい。やっぱり子どもと同じものを使った方が説明しやすいと指摘する。そこで、寶迫先生は、書画カメラの上で普通のコンパスを使って円を描いて映し出す。これで、円の描き方は子どもに伝わるという。これと同様のやり方で、三角定規を2つ使った平行線の描き方も教えることができるという。

◆跳び箱の授業をデジカメで撮影
 体育のワークショップを進めていったのは、目黒区立中根小学校の土屋亜矢子先生。体育の授業でIT機器を使う機会など、無いように思われるが、土屋先生は意外な活用法を見せてくれた。例としてあげたのは5年生の保健「けがの防止」について。デジタルカメラを子ども達に渡して、学校や町の危険と思われる場所を撮ってきてもらう。その撮影した画像をテレビに映し出して、どこが危険だと思ったかを子どもに発表させる。これで危険な場所を子どもに理解させるのと同時に、デジタルカメラの扱い方やプレゼン能力の向上につながっている。その他にも、日直の子どもに、デジタルカメラを持って帰ってもらって、家で撮影した画像を、朝のスピーチで発表させているという。

 また、跳び箱の授業ではデジタルカメラの動画機能を活用している。この日も、土屋先生が跳び箱を跳ぶところを、デジタルカメラを渡された参加者が撮影していたが、静止やコマ割りで跳んでいる場面を見せられるので、跳び方のどこに問題あるかが、すぐに説明できる。短い場面を撮影する時は、ビデオカメラよりデジタルカメラの方が、すぐに頭出しができるので、使いやすいそうだ。
 それ以外にも、うまく跳び箱の試技が跳べない先生のために、正しい跳び方が動画コンテンツで紹介されているホームページがあるので、そうしたものが見本として使えるることなどを教えてくれた。

◆ITの活用は、ちょっとした工夫が大事
 国語や社会のワークショップも、算数や体育の授業同様に、それぞれITをうまく取り込んだ形の授業を見せてくれた。その締め括りとして中川先生は、ITを活用した一工夫の7つのポイントを紹介してくれた。
 

(1) 「効果」と「手間」のバランスが大事
(効果があっても手間がかかってはダメ)
(2) 「アナログ」と「デジタル」の良い関係を
(3) わからないことはすぐ聞こう
(4) 使うちょっと前に行動(デジタルカメラの充電のチェックなど)
(5) 「指導と「環境」は考えどころ
(6) ITはオールマイティーではない
(7) ヒューマンネットワークを最大限利用しよう

 2005年の教室を考える会は、今後は各支部会ごとの活動が展開されていくことになるが、関東支部会の中心となって尽力してきた渋谷区立笹塚小学校の松橋尚子先生は、「ITに詳しい先生など、周りがサポートしてくれたおかげで、ここまでやってくることができた」と語る。これからの展開については、未定だが、それぞれのメンバーが得たものを、まわりに広げていきたいとしている。

(取材・文/田中雄一郎)
 

算数
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体育
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松橋先生
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