2004.07.06
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生産者の思いよ届け! 社会科で"食育"の取り組み 新座市立東野小学校

学びの場.com読者のみなさんが「学びの場.com特派員」として、レポートするこのコーナー。今回は埼玉県新座市在住のペンネーム東野花子さんから、久々の投稿です!


岩木先生と3年3組の子どもたち 

 新座市立東野小学校では、独立行政法人日本スポーツ振興会等の委嘱を受けて平成15年・16年度の2年間にわたり、食の研究を実施している。昨年度には、保護者参加による、クッキングコンクールを実施し、カラダにいい手作りおやつ4点が優秀作品に選ばれた。今年は、子どもたちが小麦を栽培し、収穫してできた小麦粉で、郷土料理の手打ちうどんを作る計画もある。こうして子どもたちは“食”に対する関心を高めつつあるようだ。そんな中、地域の農家の方をゲストにお迎えし、社会科の授業を行うというお話をお聞きし、さっそく取材に出かけてみた。


学区探検で子どもたちが作った地図


こんなりっぱな人参は、どうやってできるのかな?

 

 授業を行うのは、3年3組の担任岩木友子先生と34人の児童たち。単元「わたしたちのくらしと市の人々のようす」の中の「農家のしごと」が今日の授業のテーマ。

 教室には、大きな学校周辺地図が貼ってある。地図には、前の授業で行った『学区探検』で撮ってきた写真が子どもたちの手によって貼られている。この近辺は、最近マンションや戸建住宅の新築が相次いでいるが、ぶどう園や、にんじん畑など、まだまだ畑が多く残っている。

 「この畑、広いよねー」
岩木先生は、1枚の写真を指して子どもたちに問いかける。
 「一体何が作られるんだろうね」

 「人参!」「さつまいも!」子どもたちから口々に声があがる。いつも通学したり遊んだりする界隈の畑なのに、子どもたちは意外に何がつくられているかまで関心はないようす。

 「今日は、この大きな畑の持ち主の清水さんに来ていただきました。」
 「ええ~!」と驚きの声があがる。 30年前、東野小学校ができる前までは、学校の敷地も清水さんの山林だったと聞いてまたびっくり。清水さんは、東野小学校に通う児童のお父さんでもある。


「清水さん、この畑では何が作られるのですか?」
「人参です」

新座市は、人参は、新座市の特産品なのである。
 


栽培カレンダーに、種まきから出荷までの過程を書き出す


人参について一番知りたいことは…


栽培カレンダーの下に、知りたいことを書いた短冊を貼る


みんなの知りたいことがズラリ!

  さて、子どもたちは、栽培カレンダーを見ながら、人参を出荷するまでにどんな過程があるのかを考える。

「にんじんはどうやってできるのでしょう。2年生でプチトマトを作ったときのことを思い出してみて」と岩木先生。

「種を植える!」「土を耕す」「水をやる!」「肥料をやる!」「収穫する!」「売る!」「草取りをする!」
子どもたちから次々に手が挙がる。

「それだけかな? 他にないか清水さんに聞いてみましょう」

 土寄せ、消毒、間引き、といった、プチトマトの時にはなかったことが出てくる。ひととおり、種まきから出荷までのプロセスがわかったところで、次なる課題。

「人参について、知りたいこと、調べたいことを考えよう!」

子どもたちは、配られたプリントに人参についての疑問を書き、その中でも一番知りたいことを短冊に書いて、黒板に貼る。

「種はどのくらいの大きさですか」
「水やりはどうして7,8月しかしないのですか」
「水はどこから持ってくるのですか」
「間引きはどうしてするのですか」
「土のやわらかさはどんなですか(固いと人参が下に伸びられないのでは?)」
「10月は何をやっているのですか(栽培カレンダーの10月欄が空欄なので)」
「肥料は2回しかやらなくて大丈夫ですか」
「消毒は3回も必要ですか」
「消毒しないとダメなんですか」
「一つ何円で売るのですか」

などなど、そういわれてみれば、大人も知らないような疑問がいっぱい。消毒に関する質問が多かったが、なんとなく消毒は体にわるいのでは、と子どもなりに気になるのだろうか。

 「たくさんの疑問が出たね。これらについて、これからみんなで調べていきましょうね。」
 


お話をしてくださった清水栄一さん

 さて、本授業のメインイベントは、清水さんからのお話。
「農業は天気にとても左右されるので、なかなか計画どおりには行きません。計画が7割、勘が3割くらい。毎年同じやり方でできるものではないので、おじさんは毎回毎回1年生のような気持ちで農業をしています」
子どもたちの「人参について知りたいこと」にも触れながら、日々の農作業で行っている工夫や苦労について話していただいた。また、新座市では清水さんの畑が始めて認定されたという“特別栽培(減農薬栽培)”や“エコファーマー(環境にいい農業を行う農家)”についても話していただいた。農家では、ただ畑で作業するだけではなく、広く資料を取り寄せて、よりよい農法や肥料について研究を重ねているのだと知り、大人の私にも大変勉強になった。
 「おじさんは、みんなが安心して食べられる人参、食べてみたら、『あれ、人参ってこんなにおいしかったの?』と思えるような人参を作ろうとがんばっています」
と清水さんは締めくくった。

 

 この授業は、全10時間のうちの1時間目。この後、農家見学を行ったり、並行して総合的な学習で「農業体験」を行ったりしながら、農家の人たちの育てる工夫や、収穫から出荷への工夫を知り、生産者や自然への感謝の気持ち、“食材”を大切にする心をはぐくむのが狙いだという。子どもたちの、食卓にのぼる人参への思いもこれから変わることだろう。

 しかし、子どもたちの食生活について、責任を負うのは我々大人。子どもたちの意識改革の前に、私たちも、“食”について考え直すべきかも知れない。


 

東野小学校のホームページ

(学びの場.com特派員:東野花子)

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