インターネット句会で俳句を楽しむ 東京都中野区立第八中学校
"世界で一番短い詩"俳句は現在、静かなブームとなっている。今ではインターネットで投句や選句を行い、いつでも、どこにいても気軽に参加できる。このような便利なツールを手に入れた俳句は、HAIKUと呼ばれ、世界中に広がり、親しまれている。今回は、東京都中野区立第八中学校1年生の俳句の授業に伺った。地元の専門家を招いて話を聞いたり、インターネットを利用した句会の様子をレポートする。
ずらりと並んだ生徒たちの俳句 ゲストの青柳先生(左)と 国語科の加藤先生(右) みんなで推敲してみよう
”継続は力なり”
この言葉を忘れないように! みんな、選んでくれるかな? ドキドキの投句 実際の投句画面(右)と 投票画面(左) 票を投じる姿は 真剣そのもの 上位に選ばれた句は どんなところがよかった? こちらは『俳句教室』 |
■“よく観て、感じること”が俳句の第一歩 「俳句を作る人間として、ぜひ皆さんに覚えてもらいたい言葉があります。それは、“継続は力なり”です。これは生きていくうえで一生かかわる言葉だと思います。「俳句は物を“みて”考え、言葉で表します。同じ“みる”でも違いがあります。例えば、“見る”、これはさーっとみるだけ。すぐに忘れてしまうようなこと。次に“視る”は、視察の視、細かくみること。そして、“観る”。これは、観察って言葉からもわかるように、深くみる、考えながらみること。花がきれいだと思ったら、なぜきれいなのか?色がいろいろあるから?日の光が当たっているから?というような感じで深くみることです。“観る”ことは、感動すること。これが俳句の第一歩です」 ここで、青柳先生から挨拶句が披露される。挨拶句とは、どこかへ出かけた時、その土地のことを感じて詠む句のことだと説明する。 高天へ とどけ 八中俳句会 「このように詠んでみましたが、“高天へ”は“秋天へ”でもいいかもしれないし、“とどけ”は“ひびけ”や“とどろけ”でもいいかもしれないね。このように詠んだ句をもう一度、いろいろな角度で考えてみることを“推敲”と言います。この句をみんなにも推敲してもらおうかと思います。いいと思う方へ手を挙げてください」 「まず、はじめの部分、上五は“高天へ”がいいと思う人?“秋天へ”がいいと思う人?」 高天へ ひびけ 八中俳句会 同様に青柳先生が詠んだもう一句についても多数決で推敲する。 鈴虫が リーンとなくと 秋告げる (R.Mくん) 「この句は、季語が二つで、“季重ね”と呼ぶんだけど、よく見ると“鈴虫”に重点が置かれているね。このようにどちらかにポイントがあれば俳句として成り立ちます」 紅葉が 夕日と一緒に 笑ってる (H.Kくん) 「紅葉が実際に笑うことはないけど、この人には笑っているように感じたんだね。これはおもしろいね」 他にもいくつかの句について講評し、最後に青柳先生からこんなお願いが。 この授業以前に、インターネットを利用して俳句に関する調べ学習も行ったというが、自分たちが作った俳句について直接、専門家から講評を受けることで、調べた内容をより深く理解できたのではないだろうか。 「青柳先生からお話をお聞きすることで、俳句の専門家ならではの幅広い知識を教えてもらいました。今日のお話を参考によりよい一句を詠んでもらい、投句してもらう予定です」と加藤先生。 ■初めての句会に緊張が・・・ まずは各自、パソコンに向かい句会システムの投句画面に考えてきた自作の句を投句する。「では皆さん、投票してください」という加藤先生の合図で一斉に投票に入る。投票画面から自分がよいと思った句を三つ選んで投票する。投票の際、作者の名前は表示されないので、誰の作品かはわからない。一句一句画面を見つめて選考する生徒たち。友だちはどんな句を入れたのだろう?自分の句は選ばれるかな?自分の句に入れてしまおうかな?そんなちょっとした緊張の中、投票も完了。投票はリアルタイムで結果に反映する仕組みになっている。 「おおーっ」早速、投票結果を見て、歓声があがる。 枯れ葉舞う 色鮮やかな 雲の下 (K.Aくん) 「みんな、前回詠んだ句よりよくなった感じがするね」と加藤先生。 最後は自分の句についての説明と、上位に選ばれた句はどんなところがよかったのかをワープロでまとめた。例えば、Uさんは自身の句について、「もみじは、赤くて人の手のようだから、“赤い手”。その手が、1つの木から色んな方向にむかって伸びようとするすがたから“四方にのばす”。この2つをつなげてこの俳句をつくりました」と説明する。上位に選ばれた句については、「その情景が目に浮かぶよう」「表現力がある」という理由を挙げた生徒が多かった。中には「優しいUさんらしさが出ていた」という意見も。 今回利用した句会システムについては、特に操作に困った生徒もなく、授業後の感想でも「一人一人が気に入った作品を投票できるのがよかった」、「みんなで投票しあい、良いところ悪いところなどを指摘しあって、自分の感性をより磨くことができる、システムだと思いました」と好評だった。 ■俳句を通じて豊かな心を育てたい 最後に、加藤先生は授業をこう振り返った。 (取材・編集:学びの場.com) |
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