2001.10.19
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墨田区立墨田中学校の試み「ふれあい学習」

7月6日金曜日、墨田区立墨田中学校にて、ふれあい学習が行われました。 1年生は車椅子、手話を通じたボランティア活動の体験を、2年生は、「職業を知る」ことを目的として、墨田区在住の東京都伝統工芸士*西山鴻月さんのお話をお聞きしました。

■ 学校を地域に開こう

 墨田中学校の実践する「ふれあい学習」は、学校を地域に開こうとして始まった試みである。「地域の人材を学校へ」「学校から地域へ出て体験を」「地域と共に学習を」という3つのステップからなっており、第1ステップでは、地域の人を講師に招き講演を行う。第2ステップでは、1学年ではボランティア活動を、2学年では職場訪問を、3年生では、上級学校調べを行う。そして、第3ステップでは、防災訓練や体験入学など、地域ぐるみのイベントを行っている。


■ 一過性のイベントではなく、継続的な運動として

 墨田中学校のこうした活動は、「総合的な学習」の典型と言われているが、始まったのは「総合的な学習の時間」という言葉すらなかった5年前、平成8年のことである。墨田中学校では、「ふれあい学習」の試みが、一過性のイベントやトピックスで終わることなく、授業改革や授業改善の一環となるよう取り組んでおり、現在では、継続的、日常的な活動として定着しつつあるという。


■ 地域と学校のコラボレーションで行う「ふれあい学習」

 学びの場.com取材班がお伺いした7月6日(金)には、1学年では、車椅子の体験と手話の講習が、同愛記念ホームボランティア「テクテク会」、手話サークル「すみだ」の方々の協力で、行われた。講師への連絡業務、機材の手配など、運営面は地域の(財)ボランティアセンターが行った。(財)ボランティアセンターによると、墨田区には小中あわせて42校あるが、墨田中学校に刺激を受けて、福祉を授業に取り込む学校が増えて来ているという。


■ 地域の人材を講師に招いて

 2年生は、「職業を知る」ことを目的とし、墨田区在住の、押絵羽子板職人、西山鴻月氏による講演が行われた。ビデオによって、押絵羽子板の作られる様子が紹介された後、羽子板作り一筋に生きてきた鴻月氏の人生や、座右の銘などが語られた。「あなたたちも日本の伝統や文化をもっと誇っていい」という言葉は生徒たちの心に刻まれたに違いない。
鴻月氏は、仕事場としている「羽子板資料館」に見学に訪れる、多数の小中学校の生徒にも、日本の文化の大切さを伝え続けている。これらの活動は、氏にとってどのような意味があるのか、聞いてみた。
「なにも職人になれ、と言っているのではないのです。今の子どもたちは、学校でサラリーマンになるための勉強しかしていない。私の仕事を見て、それ以外にも、いろんな職業の選択肢がある、ということを考えるきっかけとして欲しいのです」
今年80歳になる鴻月氏だが、「まだまだ社会に貢献していくつもり」と頼もしいお言葉をいただいた。


  ■ Eスクエア地域企画プロジェクトのモデルに

 現在、墨田中学校の「ふれあい学習」の活動がモデルとなって、「みんなで作る! 社会人講師実践映像データベース@東京」というプロジェクトが進行中である。これは、平成13年度Eスクエア地域企画プロジェクト(http://www.edu.ipa.go.jp/E-square/h13/koubo_2.html)にも選ばれており、財団法人科学技術融合進行財団、とうきょうED(東京の公立学校の情報化を進めようという問題意識を持った人たちの研究会)、社会人ボランティアの方々が中心となって、人材のデータベース構築、Webサイトの構築を行っている。完成予定は来年の1月。この構想が実用化すると、一地域に閉じたのではなく、全国規模での地域と学校のコラボレーションが実現することになる。


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