2003.11.18
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情報化時代の授業スタイルとは? 柏市立逆井中学校

「2005年度には、全ての小中高等学校等からインターネットにアクセスでき、全ての学級のあらゆる授業においてコンピュータを活用できる環境を整備する」の掛け声のもと、進められている教育の情報化。情報化先進校の、柏市立逆井中学校の授業の様子を取材した。

 
 

 
 
 
 

班に分かれて、それそれ調べてきた内容を、これから発表!
 
 
生徒一人一人がパソコンを使って発表する。
 
 
 
 
 
 
 
 

GISソフトで、柏市と沼南町の間にある手賀沼の源流を遡る。
 
 
 
 
 
自分なりのまちづくりについての考えをワークシートにまとめる
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

今回の授業を担当した小菅由之先生。逆井中学校の学校Webでは、毎日更新で、手賀沼の写真を撮影しアップロードしている。これらの画像は自由利用マークつき。

 2005年度を目標に、進められている教育の情報化。環境整備は順調だが、問題はコンピュータを使ってどのような授業を構成するか。調べ学習の時に、インターネットで検索するだけでは物足りない。次々と教材メーカーから教材ソフトが出ても修得に時間がかかるようでは日常の授業には不向きだ。そんな声も聞こえてくる中、千葉県柏市立逆井中学校で、フライトシミュレーションソフトを使った授業をすると聞いて、見学におじゃました。

●普通の教科で、普通教室で、普通にパソコンを使う

 今回見学したのは、3年生の公民の授業。単元は「わたしたちのまちづくり」。
この授業を、社会科の小菅由之先生は、平成15年8月に持ちあがった地元柏市と沼南町の合併問題を題材に構成することを思い立った。その理由を小菅先生はこう語る。
「将来のよき公民を育てるのは社会科教師の使命だと思っています。合併問題は、身近なところから政治に関心を持てるまたとない題材。政治的なことはわからなくても、まちづくりについて自分なりに考えて欲しかった」
 また、逆井中学校は平成13年より柏市の情報教育の指定を受けている。パソコンやインターネットを活用して、どう授業を構成するかも課題だった。
「地域を知るために何かいい素材がないか探していたら、たまたま日本地図センターのGISソフト(FirstGIS:日本全国の地図画像または衛星画像の3Dシーンを空を飛んでいるように閲覧することができる)を見つけた。使用が簡単で、だれでもすぐに実行できるところがいいですね」
このソフトは日本地図センターのサイトから無料のデモ版がダウンロードできる(取材当時の情報です)。
 小菅先生は、そのソフトを取っ掛かりに、

(1) 地理的特徴をGISソフトや地形図を使って知る
(2)インターネットやガイドブックで歴史や観光名所などの特色を知る
(3)双方の利点、悪い点を整理し、合併によってどのような町ができるか考える
(4)新しくできる町の紹介を仮想HPをつくる

という流れで授業を構成した。
 見学当日は、生徒たちの発表日。逆井中学校では、「普通の教科で、普通教室で、普通にパソコンを使う」ことを目標としているというというだけあって、すべての生徒が、ノートパソコンを使って、よどみなくプレゼンテーションしてくれた。


FirstGISで見た柏市と沼南町の地図画像。衛星画像に切り替えることもできる。

●パソコン教室で一斉授業という時代はもう終わり

 逆井中学校で、生徒にアンケートをしたところ、8割の家庭にパソコンがあり、インターネットを使える環境があるという。また、パソコン室に40台のパソコン、普通教室にも各2台ずつのノートパソコンが設置され、プロジェクタなどの機器も揃っている。柏市には、情報化推進委員会があり、学校現場からの要望も上がりやすい。また、情報のセキュリティについては市が一元管理してくれる。情報化の環境はもう充分と言えそうである。

「逆井中では、ただパソコンを使う、という段階はもう終わっていると考えています。スキルについては、教師を上回る生徒も少なくありません。生徒から、インターネットで調べるだけだと、多くの情報がたやすく集まってしまうのでつまらない、という声もあがるようになってきています。」

また、パソコン教室で一斉にインターネット検索をする、という授業スタイルの時代はもう終わっている、と小菅先生は語る。

「生徒たちにとって、インターネットは調べるだけでなく、発表の場として当たり前に利用されるようになっています。そうなると、模造紙に書いて発表するだけの時とは違って、当然全国から見られるし、二次利用もされるでしょうから、正確な情報を載せなければならない。また、プライバシーや著作権のことも考えなければならなくなってくる。こういうことも、自然に授業の流れの中で指導しています」

 生徒たちの作品は、逆井中学校の学校Webで公開され、学校Web上の写真や資料は、他の人が自由に利用できる学校間自由コピーマーク(文化庁提唱のマークの一つ)をつけている。

 もう一つ、小菅先生が留意していることは、パソコンを使うこと自体が目的にならないようにすること。

「パソコンを使う必然性があり、使うことによって飛躍的に理解が高まる授業でなければならないと思っています。今回の授業で、地域を知るためにGISソフトを使いました。足で歩くには時間が足りない、2次元の地図ではリアリティがない。その問題を見事にクリアできるのがこのソフトでした。操作が簡単ということも大きなポイントです。ただ、このソフトは楽しいので、パソコン上で完結しないように、地図帳やワークシートをできるだけ利用して追学習するようにしています」

 普通に、必要なときだけスポット的にパソコンを使い、あとは従来どおりノート、手足を使った授業をする、それが、小菅先生の考えるこれからの授業のあり方なのである。

●ソフトの充実など、まだまだ課題も

 情報化先進校の逆井中だが、問題点はまだまだいくつかある。

「まず、授業に沿って簡単に使える軽いソフトがもっと欲しい。セットアップが簡単なことも条件です。学校ではインストールをだれがするのか、インストールによって不具合が出たらどうするのか、という問題があります。あと、ソフトにかかる経費。学校だと40ライセンス必要なのでかなり高額です。学校予算での購入は難しい。ハード的な面では、デジカメやスキャナなどの周辺機器を接続するときのわかりにくさ、接続によってトラブルが発生すること。学校WEBのデータ量が大きくなって、このバックアップをどうするかも課題です。教員には異動があるので今から頭が痛い問題です」
 これらの課題はどこの学校でもぶつかる問題である。また一学校で解決するのは難しい問題でもある。情報化が一過性の打ち上げ花火で終わらないためには、企業がもっと学校現場を知ることも必要なのかも知れない。

(取材・構成:学びの場.com)


逆井中学校のホームページ
http://www.sakasai-j.kashiwa.ed.jp


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