2002.12.17
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未来へつなぐ小学校英語 成田市立成田小学校

成田市立成田小学校は、今年で開校130年を迎える歴史ある小学校。真言宗成田山新勝寺への参道からほど近いところにあり、周囲には古い街並みが残っている。校門をくぐると、「Good morning!」と元気な挨拶が聞こえてきた。玄関では「Welcome」と書かれた大きな色紙が来校者を出迎える。  平成8年より「小学校における外国語学習」研究開発校の指定を受け、7年間にわたって継続的に英語教育を研究してきた同校の、公開授業の様子を取材した。(11/21)



先生の呼びかけに「イェーイ」と元気に答える



 

ハンバーガー屋さんとお客さんのつもりで買い物ゲーム

 
 
英語劇を披露する6年生
 
 
 
 
 
ゲストの外国人の人達と握手。上手に会話ができた!
 
 


 

 

 教室に流れる曲はビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」。大きな声を出して歌う子どもたち。歌うだけでは物足りないのか体を動かし始める子も。大人にも難しい歌を英語で歌い切ると一斉に「イェーイ」とジャンプ。2年2組の英語の授業の様子である。
 歌で体が温まったところで、買い物ゲームを開始。ALT(外国人講師)とJET(日本人の英語講師)が実演をして見せたあと、子ども達は店員役と客役に分かれ、「May I help you?」「〇〇〇please.」などの表現を使って会話をする。大きな声で言えると、すかさず先生が「Big voiceでいいね!」と声をかける。

 体育館では、近所に住んでいる外国人の方たちや、成田山参道を訪れる外国人観光客を招いての交流会が行われていた。子ども達は、順番にゲストの人達と握手をして、自己紹介をし、好きなものは何か尋ねる。子ども達はみんな「外国人と話してみたい」「自分の英語が本当に通じるか実際に試してみたい」という好奇心で一杯。うまく話せると「通じた」と大喜びだ。

■とにかく英語を「聞く・話す」

 成田小学校の英語の基本方針は、相手の目を見て(Eye contact)、大きな声で(Big voice)、恥ずかしがらないで(Open mind)、とにかく英語を「聞く・話す」ということ。間違っても、かまわない。コミュニケーションできることが大事なのである。公開授業を見ても、子ども達は外国人に対し、尻込みしたりすることなく元気一杯。研究主任の佐藤広幸先生によると、こうした積極的な態度は、1年次からの英語学習の導入が功を奏しているようだ。
 現在、課題となっているのは、「読む・書く」学習をどうするかということ。当初、平成12年度から、全学年で「聞く・話す」に加え、「読む・書く」学習を導入をしたが、文字を意識すると、どうしても「とにかく声を出す」ということができなくなるという。そこで、現在の「聞く・話す」中心の学習に移行した。しかし、高学年になると、自然と文字も読める児童も出てくることから、児童の発達段階に合わせて、自然な形で「読む・書く」活動を取り入れていくことを検討しているという。

 授業は学級担任とALT、または学級担任とJTEの2人組のティームティーチングで行っている。学級担任が作成した年間計画をもとに、毎週の指導内容を3者で打ち合わせる。実際の授業はALTやJTEが中心になり、学級担任がアシスタントとして時々日本語で補足する。同校のALTは全部で5名、JTEは3名である。

■「毎日20分間」英語の授業を実施

 同校の英語教育の最大の特徴は、短時間でも毎日英語の授業を行うという点である。そのために、時間割を20分で1モジュールとし、通常の45分の授業は2モジュール、理科や図工など、連続して学習することが望ましい教科は3ないし4モジュールとする。そして、英語は1日1モジュールを毎日実施しているという。

「当初は週に1回45分授業を考えましたが、週に1回では前に習ったことを忘れてしまう。また、子どもの集中力が15分から20分であることを考えると、短時間でインパクトのある授業を毎日行う方が効果的なのです。」
と佐藤先生。

「45分という時間は、英語を教える側にとっては長すぎると考えています。授業中はなるべく英語しか使わないようにしていますが、45分あると、つい日本語で説明したくなります。とにかく英語を聞き、話す、ためには頭で考えたり、日本語で説明をしないことが大切なのです」

 また、20分という貴重な時間の中で、フルに英語に触れるために、色を塗ったり、はさみで紙を切り貼りするような「作業」は極力避けることもポイントだという。

■中学校との連携

 今後、英語が教科となる可能性もささやかれているが、中学校の英語学習とのつながりはどのように考えているのだろうか。

「中学校への英語学習につなげることは考えていません。そのことによって、受験勉強の低年齢化につながることも心配です。小学校では、英語に親しみ、恥ずかしがらずに大声が出せるようになることが大切だと思うのです。中学校になってから大声を出して、と言ってもなかなかできるものではありませんから」

しかし、一方で、
「小学校でここまでやできるのなら、小中で連携すれば、もっとすごいことができるのではないか」
という声が中学校の先生からあがっている。

「ですから、中学校の先生に、どんどん授業参観してもらいたいと思っているのです。小学校でやっている英語の内容を理解してもらって、それを中学校でどう発展させると楽しい授業になるか考えていただければ、われわれがやっていることもより意味が出てくるのではないでしょうか」

 成田小学校では、今までの活動が、他校でも一般化できるよう、「学習計画の明確化」「評価のあり方」「学習プログラムの系統化」「児童用補助教材の作成」に取り組んでいる。その成果として、今年11月に『英会話を楽しむ実践ゲーム集』、英語の児童用テーマブック『Let's have fun!』を開降堂より出版している。
 

 



成田小学校のホームページ 

 

(取材・構成:学びの場.com)

 

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