全校児童13名「守れ!ふるさとのハナカジカ」 岩手県山形村立日野沢小学校
今や清流の希少種となってしまった「ハナカジカ」。その保護活動を通じて、郷土の自然のすばらしさを再確認し、環境問題や命の尊さについて考えて欲しい・・・。この飼育・放流活動をわずか13名の全校児童とその保護者とで協力して行っている岩手県の小学校にお話を伺った。
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■ふるさとに生息するハナカジカ~活動のきっかけ~ 活動のきっかけは、平成元年にスタートした村教委主催の「環境保護実践講座」。当時集まった8つの小学校区でハナカジカの観察を行うこととなった。実際、日野沢地区で観察が始められたのが平成7年。以来、今日まで継続して行っている学校は日野沢小だけとなった。平成8年度には活動母体を「日野沢森林愛護少年団」に移し、平成10年7月にはハナカジカの人工ふ化に成功。採卵した川に約700匹を放流した。以降も、継続して飼育と放流、個体数調査を行っている。
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■採卵から放流までの3ヶ月・・・重要な日々の観察記録 ここで重要なのが積算水温。これは1日の平均水温に日数を乗じたもので、これがある温度に達すると発眼したり、孵化したりするのである。子どもたちは、毎日のデータを基に発眼までに約150℃、孵化までに約300℃必要であることを発見した。 孵化した稚魚は、水換え、エサやりなど世話をしながら体長約1.5cmくらいになるまで校内で飼育される。そして、いよいよ放流の時を迎えるのである。全校児童で採卵した川へ稚魚たちを放つ。採卵からおよそ3ヶ月、大切に育てたハナカジカの稚魚たちに愛情を抱く子どもたち。たとえ800匹放流しても、成魚になるのはほんの数匹。子どもたちにとってそんな別れはつらいものだが、ここで自然の厳しさや命の尊さを学んでいるに違いない。
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■たった13名で大イベント「日野沢ハナカジカミーティング」 他にも、地元イベントでの発表や、県科学研究発表会など、発表の機会も多い。昨年は山形県で同じハナカジカの保護活動に取り組んでいる山形市立高瀬小学校での「ハナカジカサミット」にも参加した。また、各地からの視察やマスコミ取材なども殺到しているため、13名の子どもたちは、日々の飼育の合間を縫って発表準備に追われる日々を過ごしている。「ハナカジカの活動がこんなに有名になるとは、誰も考えてなかった」と安倍先生は驚きを隠せない。また、この活動を通してパソコンスキルや発表のための表現力が高まり、何事に対しても積極性が見られるようになったという子どもたちの変化にも目を見張るものがあるそうだ。
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■子どもたちも減って行く~学校存続の危機、今後の展望 「児童数は減少の一途だが、これからも継続して保護活動や研究を続けたい。可能な限り続ける。」そう言い切る安倍先生の力強い言葉にエールを送りたい。
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