2002.08.18
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教科書をちょっぴり膨らませる算数授業 全国算数授業研究大会

8月8日~9日、東京都文京区大塚の筑波大附属小学校で、「第14回 全国算数授業研究大会」が開催され、全国から約900名の先生方が参加した。

 文部科学省が、新学習指導要領の内容を「最低基準」と発表した。現場では、「では、それをどの程度上回った授業を展開すればいいのか」という議論が喧しくなっている。


 


 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 

■現場の先生のための現場の先生による会

 今回第14回研究大会のテーマは、「教科書をちょっぴりふくらませた算数授業」。文部科学省が、新学習指導要領の内容を「最低基準」と発表し、現場では、「では、それをどの程度上回った授業を展開すればいいのか」という議論が喧しくなっている。そういった状況を受けてのタイムリーなテーマ設定と言えよう。

 主催は全国算数授業研究会(理事長:筑波大学附属小学校 坪田耕三先生)。この会は、「全国の先生方と授業を見て語り合うこと」を目的として、昭和61年に発足した。現在、理事13名、幹事44名が運営にあたっているが、メンバーはいずれも現職の先生たちである。

「子どもたちを輝かせる授業をしたい、そのために忌憚のない意見を言い合って本音で語り合おう、というのがこの会の主旨。だから、大学の先生や校長、指導主事の先生は運営メンバーにはいません。あくまでも現場の先生による現場の先生のための会なのです」と、理事の1人である滝井章先生(世田谷区立八幡小学校)。

■ちょっぴりふくらませるって?

 8日(木)、理事長の坪田先生による基調提案から本研究大会のプログラムがスタート。
坪田氏は
 「文部科学省の“指導案は最低基準”という見解に左右されることなく、算数の授業は常に“発展的”な考え方が身につくようにされているべき」と語り、
 「子どもの小さなつぶやきを見逃さず表に引き上げ、“それなら~かも知れないよ”、“もしも~だったら?”など、うまく導いていくことで、授業は少しふくらませられる」
と具体例を挙げながら提案。あちこちで、頷きメモを取る参加者の姿が見られた。

■授業はどう見るのか?

 さて、本研究大会の最大の見所は、理事、幹事の先生方にによる公開授業と、その後、公開授業の評価を行う研究協議会である。
 自薦他薦で選ばれた6名の先生による公開授業は、それぞれ、「面積」、「比」「順序数」などの単元で、教科書に載っていない部分を、各先生それぞれが工夫した教材を用い「ちょっとだけ」ふくらませた授業を、筑波大附属小の児童たちを対象に実践した。
 その後の研究協議会では、パネルディスカッションの形式で、司会者を中心に、3人のパネラーの先生と授業者の先生とで、授業の内容について討議を行った。パネラーが容赦なく授業の欠点を指摘し、授業者の先生も負けずに反論するという、まさに本音と本音のぶつかり合う白熱した会となった。会場からも活発な質問がなげかけられ、参加者の関心の高さがうかがえた。

 参加の先生方に感想をお聞きした。
「公開授業はとてもためになりました。自分の授業にも取り入れられるところは取り入れたいですね」(伊藤先生/山形県/教員歴4年)
「協議会の厳しい意見のやりとりに驚きましたが、授業ってそういう視点で見なければいけないんだ、ということがわかりました」(小菅先生/新潟県/教員歴2年)

 「当初は10人にも満たない小さな会だったのですが、ここ数年で参加者が急増。ほとんどの先生が遠方からわざわざ自費で来てくださいますから、本当に満足してもらえるような内容にしないと。来年も楽しみにしていてください」と理事の滝井先生は意欲満々。

 なお、全国算数授業研究会では、理事や幹事の先生方が執筆し、毎年多数の本も編集している。今回のテーマともなった『教科書をちょっぴりふくらませた算数授業』も、1学年から6学年まで全6冊、東洋館出版社より同時出版された(各1500円)。現場で即役に立つ具体的な授業書だ。

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