2002.07.09
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パワーポイントで表現。「自分の生きる価値」 東京都北区立赤羽台西小学校

赤羽台西小学校の総合的な学習の時間。パワーポイントを使って思い思いの作品を作る6年生たちを取材した。

 赤羽台西小学校では、総合的な学習の時間を利用して、6年生を対象に、パワーポイントを使ったプレゼンテーションの授業が行われた。
 同校は、東京都教育委員会「東京の教育21」情報教育研究指定校であり、また文部科学省の「次世代ITを活用した未来型研究開発事業」実施校にも選ばれている。



■「生きる力」を身につけるために情報教育は重要


 授業を担当したのは、図工の野間俊彦先生。野間先生は、同校の情報教育、平成14年度の研究主任も担当されている。

 「自ら課題をみつけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力」すなわち「生きる力」を身につけるために、インターネットによる情報収集、調べたことをコンピュータでまとめること、それを人にわかるように発表する=プレゼンテーションすることは基本的な技術、と野間先生。

 今回の授業では、特にプレゼンテーションに焦点をあて、2時間×5回の10時間の構成で『自分の価値を見つけよう』をテーマに、発表する内容を考え、パワーポイントで制作し、みんなの前で発表する。

 「自分の価値をみつける、つまり、生きる価値を見つけるということによって、自分を大切にするということに気づいて欲しい。自分を大切にするのは友だちだって同じだ、だから友だちも大切にしよう、ということに気づいて欲しい。それが今回のねらいです」

 児童たちの手許には、10個の四角い枠と矢印が描かれた紙が広げられている。紙の一番上には、今回のテーマが「自分の価値を見つけよう」と大きな文字で書かれている。最初の4つの四角の上には、「タイトル」→「自分の思いや願い」→「なぜそう考えたか」→「そのためにどんなことをするか」と書かれている。児童たちは、前回までの授業で、その流れに沿って、これから作るプレゼンテーションのストーリーを考えてきた。今回は、それをパワーポイントで制作するのだ。


■自分が世の中に対して何ができるのか、考えに考えた

 パソコンは2人に1台を交代で使用する。1人が制作している間、もう一人は操作について、また内容について相談役になる。児童たちは席に着くと、馴れた手付きで自分のデータを開き、作業にとりかかる。文字を入力するだけでなく、お絵書きソフトで絵を描いて、その絵をパワーポイントに貼り込んだり、あらかじめ赤羽台西小学校のホームページ上に用意されている素材集から写真やイラストをダウンロードして貼り込んだり、表現方法は各自それぞれである。インターネットにアクセスし、これから書こうとする内容について調べる子や、引用するために画像をダウンロードする子も。

 テーマ的には、「地球からゴミをなくす」「二酸化炭素をへらす」などの環境問題や、「世界から戦争をなくす」「絶滅の危機にある動物を救う」「恵まれない子どもたちを助ける」などグローバルな問題を取り上げた児童がほとんどで、「世界をマンガ王国にする」など、子どもらしい発想はむしろ少数派。

 「未来のOSを作る」というテーマで制作中のYさんは、「高齢者や身体の不自由な人も自由に操作できるOSの開発が夢」。大人顔負けのしっかりしたビジョンが描かれていて、驚かされる。
 「本の街をつくる」というテーマで制作中のHさんは、
「最初は、先生が言う、『自分の価値を見つけよう』というテーマ自体がよくわからなかった。でも、よーく考えて、それって、自分が世の中に対して何ができるのか、ということを書けばいいんだってわかった。私は本を読むのがとても好きだから、みんなが本を好きになってもっと読むようにするにはどうするかを考えました」
と語ってくれた。


苦しむことも「自ら課題をみつけ、自ら学び、自ら考える」ための大切な過程

 人間が危険な仕事をしないですむように、ロボットを作る、というテーマのNくんは、お絵書きソフトで、自分の考えたロボットの絵をサラサラと何枚も描いている。
 「本当はこんな絵を描いたら怒られると思って先生に隠れて描いてたけど、見つかっても怒られなかったし、逆にほめられた。この絵で世界が救われるんなら何枚でも描くよ」

  テーマで大ぶろしきを広げてしまって、最後の1枚、「そのためにどんなことをするか」のところで行き詰まる子どもたちも。しかし、そうやって苦しむことも、「自ら課題をみつけ、自ら学び、自ら考える」ための大切な過程なのだろう。

 「小学生には難しいテーマだったかなと思います。自分は何のために生きているかなんて、大人だってすぐに答えられる人がどれだけいるでしょうか。でも、答が出なくてもいい、こういうことについて悩んで、考えるきっかけになればいいんです」

この授業の最後には、それぞれ作ったものをみんなの前で発表する。

「今回のテーマを本当に自分のこととしてとらえられている児童はもしかしたら半分もいないのかも知れない。でも、他の子どもたちの発表を見ることによって、自分には何が足りなかったのか、気づくいてくれると思います。また、今回児童たちそれぞれが選んだテーマを見ることによって、この子はこういうこにとに興味があるんだ、という、互いの日頃知らない一面を見る事にもなった。そういうことが、他人を大切にする、という意識につながるのではないでしょうか」

(取材・構成:学びの場.com)

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