NIE(教育に新聞を)実践リポート 新聞を題材に「話す力・書く力・考える力」を高めるさいたま市立鈴谷小学校
NIE(Newspaper in Education=教育に新聞を)は、新聞を教材として活用すること。子どもたちの「読解力」低下や活字離れが指摘されるなか、その取り組みに関心が集まっている。日本新聞教育文化財団が認定するNIE実践校も年々増加し、今年度は全国538校。そこで今回は、平成18年度からNIE実践校として活動している、さいたま市立鈴谷小学校での授業をリポート。子どもたちに与える教育効果や実践のポイントについて担当の菊池健一教諭に聞いた。
NIE(Newspaper in Education=教育に新聞を)は、新聞を教材として活用すること。子どもたちの「読解力」低下や活字離れが指摘されるなか、その取り組みに関心が集まっている。日本新聞教育文化財団が認定するNIE実践校も年々増加し、今年度は全国538校。そこで今回は、平成18年度からNIE実践校として活動している、さいたま市立鈴谷小学校での授業をリポート。子どもたちに与える教育効果や実践のポイントについて担当の菊池健一教諭に聞いた。 テーマに合う記事を選んで、自分の言葉で感想をまとめる1.前時を振り返りながら、学習のめあてを確認菊池教諭はまず、前の時間の学習内容を確認。学校放送から学んだ“感想文を書く極意”としては、「感想文は意見」「3つのキーワード(なぜ、もしも、どうすれば)で意見を出す」「多く使われている言葉に注目する」「“なたもだ”(なぜ、たとえば、もしも、だから)で文を組み立てる」の4点を振り返った。 次に、「しあわせな気持ちになる記事ってどんな記事だった?」と投げかけ、「スポーツで自分の好きなチームが勝ったとき」「オリンピックやノーベル賞など日本人の活躍」「がんばっている人の記事」「新しいものが生まれた記事」など、前時の意見交換で出た視点を発表させた。 教諭は「見た人が温かく、しあわせな気持ちになるHAPPY記事を見つけてスクラップしよう」と本時の学習のめあてを提示。「20分を目標に作業をしよう」とスクラップ用のワークシートを配布し作業に移らせた。 2.各自の視点で「しあわせな気持ちになる記事」を選ぶ子どもたちは各自家庭から持ってきた新聞を見ながら、「しあわせな気持ちになる記事」を探し始めた。取材当日はプロ野球がプレーオフに入っていた時期だったこともあり、地元ライオンズに関する記事をチェックしている男子も目立った。 教諭は机間指導で、記事選びに迷っている子どもにアドバイスしていった。107歳のお年寄りが元気に暮らしている記事を選んだ子どもには、「最近こういうニュースが少ないから、みんなに紹介してあげるといいね」。ある男性の闘病生活を紹介した記事を見ながら「こういうのはハッピーな記事なのかな」と悩んでいる子どもには、「病気になっても前向きに生きている人の紹介だから、こういう記事もいいんだよ」と声をかけた。 新聞記事には未習漢字も多いため、「先生これなんて読むの?」という質問が頻繁に出る。文字だけでなくニュースの内容解説も必要。「ラムサール条約のことがわからない」という子どもの質問には、「水鳥の棲む場所を守るための国同士の取り決めのこと。6年生の社会で勉強するよ」と他教科の学習との関連も含めて答えていた。 3.“5W1H”を基本に記事を要約し、感想をまとめる子どもたちが選んだ記事は、ハロウィンのお祭りの様子、世界的な金融危機への対応、低公害車の開発のニュースなどさまざま。見出しや写真を重ね貼りしてコラージュ風にしたり、マーカーで色を塗ったり、新聞を切り貼りする作業自体を楽しみながら仕上げている子どもも多かった。 この日配布したワークシートには、日付と媒体名を書き込んで切り抜きを貼るスペースのほか、記事の要約として“5W1H”を抜き書きする欄と、記事に対する自分の感想(どんなところがHAPPYな気持ちになったか)を書き込む枠をつくっている。 新聞のスクラップ活動を始めた当初は自由に要約させていたが、内容が薄く重要な情報が抜けてしまうケースもあったことから、「要約に必要な要素をきちんと捉えさせるため、5W1Hの抜き書きをひとつのパターンとして提示している」と菊池教諭。 作業時間の後半に入ると、教諭は記事選びやスクラップ作業に手間取っている子どもを中心に支援。迷っている子どもには決断を促す声かけをしたり、必要に応じて切り抜き作業を手助けすることもあるという。 4.記事の内容と感想を友達にプレゼンテーション 授業のまとめでは数人の子どもが前に出て、ワークシートを実物投影機で提示しながら記事の内容や感想を発表した。 病気の患者、家族、支援者がパレードをした記事を選んだ子どもは、「病気と闘いながら前向きに生きているところがハッピーな気持ちになりました」と発表。ペットボトルのフタを回収して発展途上国の子どもたちにワクチンを送る活動を紹介した子どもは、「世界の子どもたちのために、たくさんの人ががんばっているところがしあわせな気持ちになりました」と自分の言葉で感想を述べていた。 最後に教諭は、この日つくった記事のスクラップをもとに、次の時間は感想文を書くことを確認。全員の作品を、外部団体が主催する作文コンテストに応募することを告げ、「このクラスから賞をもらえる人が出るといいね」と子どものやる気を刺激する言葉を投げかけて授業をまとめた。 授業者のコメント 書くための動機づけとして身近な新聞を活用今回の授業はNIEの一環として単元化したもので、考えを書くことに焦点を当てて学習活動を設計しました。感想文などが苦手な子どもでも、「しあわせな気持ちになる」という視点を持たせることで、書く題材や動機を自分の力で見つけられると思います。 5年生は今年度、朝自習の時間を中心に、気になった新聞記事をスクラップして要約と感想を書く活動や、記事を題材にしたスピーチなどに取り組んでいます。今回のように特定のテーマで記事を選ばせるのは初めてだったので、第1次に「しあわせな気持ちになる記事」へのイメージを持たせる活動を行いました。サンプル記事を見せたり、子ども同士で話し合わせたりしたところ、いろいろ意見が出ました。本時の記事選びではこのとき出た視点を踏まえ、多様な記事を選ぶことができていましたね。 作文コンテストへの応募は学習の出口としておもしろいと思います。普段とは違う発表の場があると子どもの興味も高まるので、どんな作品を書いてくれるか楽しみです。 鈴谷小のNIE活動
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