2026.08.10
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「生理」を通して、自分の生き方を考える(後編) 10代からキャリアとの両立も学ぶ

前編では、相模女子大学中学部のさまざまな角度から「命」と向き合う「マーガレットタイム」での特別授業「生理のしくみと体の変化」の様子をリポートした。
後編では、相模女子大学中学部 副校長 堤真美氏、出張授業を行った、mederi株式会社 代表取締役 坂梨亜里咲氏と、産婦人科医 郡詩織氏へのインタビューを紹介する。

学校インタビュー

自分自身が「かけがえのない」存在であることを実感する時間

赤ちゃんとふれあう体験の様子

――学校独自のカリキュラム「マーガレットタイム」について教えてください。

堤先生 自己肯定感と自己実現の育成が根幹にあります。命と向き合いながら、自分を知り、自分の生き方を考える機会にしてもらいたいと思っています。 中学生は、人と比べてしまい、自分に自信を持ちにくい時期です。だからこそ、「あなたの存在そのものに自信を持っていいんだよ」というメッセージを伝えたいと考えています。

――mederiさんの出張授業は今年で4年目ということですが、依頼しようと思ったきっかけを教えてください。

堤先生 生理の悩みを抱える生徒が多く、生理を前向きに捉えてほしいという思いがありました。そうした中でmederiさんを知り、医学的な知識だけでなく、女性の生き方という視点からも話をしていただけると感じ、お声がけしました。この授業は、希望する保護者の方にも参加いただいています。

――今日の授業内容について、どのような依頼をしましたか。

堤先生 女性のライフステージにはさまざまな選択肢があります。その中で、生徒たちが主体的に自分の生き方を考えられるようなメッセージを伝えていただきたいとお願いしました。 また、運動部で活動している生徒も多いため、運動と生理の関係についても触れていただきたいとご依頼しました。

――通常の保健の授業と比べて、どのような違いがありますか。

堤先生 体のしくみを学ぶだけでなく、生理を通して自分の生き方を考えるきっかけになることが大きな違いだと思います。誰もが付き合っていくものだからこそ、自分の人生の大切な要素の一つとして向き合う機会になっていると感じています。

――高等部卒業までに、他にもプレコンセプションケア(性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、将来のライフプランを考えて、健康管理を行うよう促すこと)の授業を計画していますか。

堤先生 中学3年生では、大学生と一緒に思春期講座を行っており、人を好きになる気持ちや、自分の意思を尊重することについて学んでいます。 高等部では、性感染症などについて学ぶ保健講座を実施しており、今の自分を大切にすることが、将来や命のバトンにつながることを伝えています。

講師インタビュー

生涯に約450回ある「生理」とうまく付き合う

mederi株式会社 代表取締役 坂梨亜里咲氏

――今日の出張授業について、工夫した点を教えてください。

坂梨氏 生理ケアグッズを紹介する際は、馴染みのあるナプキンだけでなく、タンポンや月経カップ、吸水ショーツなども紹介しています。生理用品にはさまざまな選択肢があることを知ってもらいたいためです。また、生徒が参加しながら学べるよう、Q&A形式を取り入れています。

郡先生 今日は中学1年生で、生理が来ている人も半分いるかいないかくらいだと思うので、できるだけ分かりやすい言葉で伝えることを意識しました。難しい言葉は噛み砕き、小学生にも伝わるように話すことを心がけました。

――生徒さんたちの反応はいかがでしたか。

坂梨氏 タンポンの存在は知っていても、使い方が分からない生徒さんが多い印象でした。保護者世代にも「中学生が使っていいのか」と迷う方は多いと思うので、やはり中学生にはまだ浸透しにくいのかなと感じます。

――学校への出張授業を始めたきっかけを教えてください。

坂梨氏 会社を立ち上げた背景にも重なりますが、私自身が不妊治療を経験したことがきっかけです。その中で、学校で卵子の数やピルについて十分学んでこなかったことに気付き、性教育から変えていかなければならないと感じました。

当初は出張授業のマッチングサイトに掲載していましたが、さまざまな学校からお声がけいただくようになりました。

――今回は女子校でしたが、共学だったり、もっと上の学年の場合は内容を変えていますか。

坂梨氏 授業内容については、小学4年生から高校3年生まで一律ではなく、学年や学校側のご要望に応じて調整しています。特に中学3年生以上では、性感染症や避妊方法についても取り上げてほしいというご要望をいただくことが多いです。

また、学校の先生は普段の学校生活でも関わる身近な存在であるため、心理的な距離の近さから、性や身体に関するテーマについては話しにくさを感じる生徒もいると思います。一方で、外部講師であれば、フラットな立場として話を聞きやすく、相談しやすい面もあると感じています。

卵子凍結も選択肢

産婦人科医 郡詩織氏

――女性アスリートなど大人向けの出張授業についても教えてください。

郡先生 女性アスリート向けの講座では、ピルはドーピングにならないことや、体重調整で生理が数か月止まってしまったら受診して欲しいことを伝えています。

坂梨氏 また、将来的には子どもを持ちたいけれど、今は競技に集中したいという場合には、卵子凍結も選択肢と紹介しています。大人向けの健康セミナーや、生理痛体験をしてもらう男性向けの社員研修なども行っています。

――若年層への性教育・健康教育について感じる課題を教えてください。

郡先生 今はSNSなどを通じて多くの情報に触れられる一方で、危険と決めつけるなど、誤った情報や偏った情報が広がりやすい時代です。だからこそ、産婦人科医として正しい知識を発信していくことが大切だと感じています。

坂梨氏 日本のピルの普及率は2019年に3%だったのが、現在は6%ほどまで増えました。欧米では10~30%ほどです。働く女性だけでなく、10代のピル利用者も年々増えており、生理トラブルに対する選択肢の一つとして受け入れられてきたと感じています。

ですが、まだ十分とは言えません。若い世代だけでなく、避妊目的のイメージが強い保護者世代にも正しい知識を届けていく必要があると思っています。保護者に「そのくらい我慢しなさい」と言われて受診できないケースもあると聞きます。

――今後、挑戦してみたいことなどを教えてください。

郡先生 現在、当社の低用量ピル利用者は20代と30代が中心ですが、ピルを卒業した後は、更年期などの悩みが出てくる時期でもあります。産婦人科医として、そうした世代の方々へのサポートについても、今後考えていきたいですね。

坂梨氏 生理は約40年付き合っていくものなので、その期間を少しでも快適に過ごせるようサポートしていきたいと思っています。また、更年期はキャリアが輝く時期でもあります。女性がライフステージの変化によって可能性を狭めることなく、健康もキャリアも自分らしく選択できる社会を実現したいです。

記者の目

今回の特別授業の取材で印象的だったのは、保護者も見学していたことだ。授業参観のように大勢ではなかったものの、保護者が生徒と同じ内容を学ぶことで、家庭では話しにくい性教育について話し合うきっかけになると感じた。
SNSを通じてさまざまな情報があふれる今だからこそ、正しい知識に触れる機会の重要性はますます高まっていくだろう。

取材・文:学びの場.com編集部 写真提供:相模女子大学中学部、株式会社mederi

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