「生理」を通して、自分の生き方を考える(前編) 相模女子大学中学部「性教育」出張授業リポート

かつては、女子だけが集められて学ぶことが主流だった「生理」。妊娠・授乳期間が減り、現代女性が10~50代までに経験する回数が昔の約9倍に増えたことで、「生理」に伴う悩みも増えている。そこで近年では、男女合同で、また男子校でも、保健体育だけでなく、道徳や特別活動などの時間を活用し、より多角的に学ぶ取組も広がっている。
そんな中、神奈川県の相模女子大学中学部では、1年生を対象に、2023年から「生理のしくみと体の変化」をテーマにした外部講師による特別授業を実施している。
4年目を迎えた今回の授業では、思春期の体と心の変化や生理との付き合い方に加え、女性のライフステージについても学び、生徒たちは自身の体や将来について理解を深めた。前編では、授業の様子を紹介する。
【授業概要】
学年:中学1年生(2クラス・65名)
教科:マーガレットタイム*(総合的な学習の時間・道徳)
テーマ:生理のしくみと体の変化について
授業者:mederi株式会社 代表取締役 坂梨亜里咲氏、産婦人科医 郡詩織氏
*同校には、週2回、教科の枠を超え、さまざまな角度から「命」と向き合う「マーガレットタイム」と呼ばれる授業がある。1年次に自分や他者の存在と向き合う、2年次に社会と向き合う、3年次に命の過去・現在・未来と向き合うことをテーマに学習し、自分の生き方を主体的に考える姿勢を育んでいる。
体と心の変化、生理のしくみについて

郡先生:まずは思春期の体の変化についてお話しします。思春期とは、成長に伴ってホルモンが分泌され、体や心が大きく変化する時期のことです。女の子の場合は女性ホルモンの分泌が始まることによって、卵巣や子宮が発達し、赤ちゃんを迎えるための準備が進みます。
体の変化としては、大きく「胸がふくらむ」「体つきが丸みを帯びる」「陰毛や脇毛が生える」「生理が始まる」の4つがあります。
また、思春期は体だけでなく、心も変化する時期です。親や先生への見方が変わったり、友人関係に悩んだり、異性への興味が湧いてきたりすることもあります。こうした変化は誰にでも起こる自然なことなので、心配しすぎる必要はありません。
次に、生理のしくみについてお話しします。生理は妊娠に向けた準備の一つです。妊娠に備えて厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、体の外へ排出されることを生理といいます。
生理が終わると、卵巣の中では卵胞という卵子のもとが育ち始めます。やがて卵子が卵巣から飛び出しますが、これを「排卵」といいます。
排卵後は、妊娠に備えて子宮内膜がだんだん厚くなっていきます。しかし、妊娠に至らなかった場合は、その内膜が再び剥がれ落ち、生理が起こります。女性の体では、このサイクルが繰り返されています。なお、生理は25日から40日周期で、おおよそ1か月に1回来るものです。
生理痛とPMS(月経前症候群)

郡先生:この生理に伴って生じる痛みを「生理痛」といいます。人によっては症状がとても強く、辛い時期になることもあります。強い生理痛が続く場合は、我慢せずに産婦人科へ相談してください。
また、生理周期が安定していない原因の一つとして、排卵がうまく起きていないことが挙げられます。卵子が排卵されなければ精子と出会うことができないため、妊娠しにくくなってしまいます。将来妊娠を考えている人にとって、生理がきちんと来ているかどうかはとても大切なことです。
なお、初めての生理の平均は12歳くらいです。ただ、生理が来る時期には個人差がありますので、まだ来ていない方も16歳まではゆったりと構えていて大丈夫です。
なお、生理が始まる3〜10日前くらいから、頭痛や腹痛、体のだるさ、集中力の低下、イライラといった不調が現れることがあります。これは「PMS(月経前症候群)」と呼ばれていて、女性ホルモンのアップダウンが原因の一つと言われています。
ただ、PMSかどうかは自分では判断しにくいこともあります。そのため、日記をつけて体調や気持ちの変化を記録してみると、自分の体のリズムがわかりやすくなります。こちらも症状がひどい場合には我慢せずに産婦人科へ相談してください。
坂梨氏:生理の悩みは外から見えにくいため、本人が不安やつらさを抱えていても周囲に伝わりにくいことがあります。
当社が行った保護者向けアンケートでも、約4割の方が「生理痛のつらさを理解してもらえなかった」と回答しています。生理の悩みとしては、「生理痛」が最も多く、次いで「PMS」「倦怠感」「食欲の変化」などが挙げられました。
だからこそ、一人で抱え込まずに安心して相談できる環境をつくることが大切だと私たちは考えています。
間違いやすい知識

続いて、「思春期の変化で間違いやすい知識」をテーマにしたクイズが行われた。ここでは、その一部を紹介する。
Q. ナプキンは付けたら1日中変えなくてもいい?
(ほとんどの生徒が「NG」に挙手)
郡先生:皆さん大正解です。ナプキンを長時間使用すると不衛生になり、かぶれることがあります。
Q. 思春期の女子でもタンポンは使える?
(「YES」「NG」ともに挙手は少なく、多くの生徒が迷う様子を見せた)
郡先生:小・中学生も使っていただいて大丈夫です。正しい位置に入れれば痛みや違和感はほとんどありません。
Q. 生理中は運動しないほうがいい?
(半数近くの生徒が「NG」に挙手)
郡先生:激しい運動でなければ、運動しても大丈夫です。ただし、体調が悪い時は無理をせず、体を休めることも大切です。
生理とうまく付き合っていくために
坂梨氏:ここからは、生理とうまく付き合っていくために大切なことをお伝えします。
郡先生:まず大切なのは、食事・運動・睡眠です。タンパク質やビタミン、ミネラル、カルシウムなどをバランスよく摂ることは、生理の状態を整えることにもつながります。また、無理のない範囲で体を動かすことや、十分な睡眠を取ることも大切です。特に10代は8〜10時間の睡眠が推奨されています。
生理痛やPMSを和らげる方法としては、低用量ピルを利用するという選択肢もあります。低用量ピルは、排卵を抑えることで避妊効果を持つ薬ですが、PMSや生理痛を和らげたり、生理周期を整えたりする効果もあります。興味のある方は、保護者の方と一緒に産婦人科医へ相談してみてください。

坂梨氏:生理用品にはナプキンやタンポン、吸水ショーツ、月経カップなどさまざまな種類があります。今日、実物を持ってきましたので、実際に触ってみてください。
タンポンは膣の中に入れて使う生理用品です。運動やプールの時に使うイメージがあるかもしれませんが、最近は日常生活の中で利用する方も増えています。交換の回数が比較的少ないのも特徴です。
生理痛がひどい場合は、痛み止めを飲むことも一つの方法です。「痛み止めを飲み続けると効果がなくなるのでは」と心配して我慢する方もいますが、用法・用量を守って使用する分には特に問題ありません。我慢せずに活用してください。
また、「生理の貧困」という社会課題についても触れたいと思います。これは、生理用品を必要な時に購入できなかったり、お金はあっても誰にも相談できずに困ったりする問題です。周りに困っている人がいるかもしれないということを知ったうえで、もし自分にできることがあれば、手を差し伸べていただければと思います。
ライフプランを考えよう

坂梨氏:最後に、今後の皆さんのライフプランについてお話しします。現代女性は、生理の不調だけでなく、仕事、結婚、妊娠・出産、育児、更年期症状など、その時々でさまざまな悩みと向き合うことになります。
そんな中、ぜひ知っておいてほしいことの一つが、不妊に悩む夫婦やカップルは決して少なくないということです。避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、約1年間妊娠しない状態を不妊といいますが、現在は4.4組に1組が不妊に悩んでいると言われています。
原因はさまざまですが、その一つが年齢を重ねるにつれて健康な卵子が排卵される可能性が低下することです。子どもを持つかどうかは一人ひとりの自由ですが、妊娠には年齢が関係することも知っておいてほしいと思います。
女性の敵は女性?
授業後には、保護者にも読んでもらい、会話のきっかけになればと、「生理トラブル対策を学ぼう!」というリーフレットが配布された。生理痛一つとっても個人差が大きく、救急車を呼んでしまうほど激しい痛みを感じる人もいれば、ほとんど感じたことがない人もいて、女性同士でも悩みを共有できないことも多い。出張授業の際に、生徒から「困っているのに、お母さんが受診させてくれない」と泣きながら相談されたこともあるそうだ。
後編では、相模女子大学中学部 副校長 堤真美氏、mederi株式会社 代表取締役 坂梨亜里咲氏、産婦人科医 郡詩織氏へのインタビューを紹介する。
関連教材情報
取材・文:学びの場.com編集部 写真提供:mederi株式会社
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