2021.12.15
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産官学が連携した先進的統合型プログラミング教育(前編) 1人1台+ロボット教材「toio」1セットで実現できる学び

千葉県流山市は2020年9月に「流山市GIGAスクール構想」を策定。東京理科大学、内田洋行、ソニー・インタラクティブエンタテインメントと連携し、2021年7月に4校で、小学校から中学校まで一貫したプログラミング教育を開始した。各社の役割として東京理科大学と内田洋行が小中学校向けのカリキュラム案を共同開発。また、内田洋行は小中学校の総合的な活動の時間や技術、理科などで活用できるtoioの教材開発を行う。toioの開発・発売元であるソニー・インタラクティブエンタテインメントが機材と技術サポートを提供する。
その成果として、東(あずま)小学校での授業を11月15日(月)報道陣に公開。基礎から応用まで幅広く対応するロボット教材「toio」を用いた3年生の総合的な学習の時間と5年生の算数の公開授業や、先生と子どもの声をリポートする。

授業① 3年 総合的な学習の時間

PCを使用しないアンプラグドプログラミングでロボットを動かす

3年生の授業では、プログラミングの基礎の指導が行われた。教材として使用されるのは、内田洋行が東京理科大学、ソニー・インタラクティブエンタテインメントと共同開発した「toio(トイオ)アンプラグドセット」。パソコンを使用せずにプログラミングを学習する低学年向け教材だ。カードを並べてプログラムを作り、その上にキューブ型のロボットを置くと自動的にプログラムが読み込まれる。さらにビジュアルプログラミング用マットにロボットを置くことで、プログラムが正しいかどうか確認することができる。「順次処理」「繰り返し」「条件分岐」の基本を学習できるのがポイントだ。

授業のねらいは「思い描く動きの実現に必要な様々なカードの役割について理解し、プログラムする」。東京理科大学の学生2名が授業のサポート役を担った。

導入ではスクリーンにホウキや洗濯板など昔の道具が写し出された。これによって昔と現代の道具の違いに気付き、「身近にある機械はどのように動いているのか?」という疑問を導き、プログラミングにつなげていく。

この日は数種のルートを題材に、前時に学習した内容を活用してゴールまで進むにはどのようにプログラムを組めば良いかという問いが出された。

ルート2-1はスタートからゴールまで3つのマスがある。「いっぽすすむ」というカードを3枚使っても良いが「くりかえし」を使えば、短くできることに気付かせるのが狙いだ。さらに「アクション」を使うルート2-3 、2-4にも挑戦し、ものを拾うプログラムにも取り組ませる。並べたカードにロボットを置き、プログラムを読み込ませ、マット上で実際に走らせる。上手くプログラムされていればゴールへ進む。これらの活動を通して、プログラムには複数の方法があり、ロボットを自分の思い通りに動かすことの楽しさや達成感を体感させ、プログラミングに関心を持って探究する態度を育てていく。

授業者:三澤 志緒里 教諭より

流山市立東小学校 三澤志緒里教諭

ほとんどの子がルート2-4まで進めたので大成功だったと思います。冒頭で昔と現在の道具を紹介することで、プログラミングが身の回りにあるということを意識させました。国語や算数が苦手な子どもでも全員足並みそろえて取り組めるのもプログラミング授業の特徴と感じています。今のところ得意・不得意が見えにくいという感触ですね。1人1セット配布しているので、子どもの新たな才能を発掘できる貴重な機会にもなるかもしれません。

児童の声
  • カードがカラフルでわかりやすい。自分の頭でじっくり考えられるのが楽しいです。
  • もともとプログラミングは苦手だったけれど、ロボットを動かすのが楽しいので前よりもずっと好きになりました。
  • たくさんあるカードの中から選ぶ作業が面白い。自分で考えたプログラミングをロボットで動かして試してみる時にいつもワクワクします。

授業② 5年 算数

ロボットに正多角形を描かせる

5年生の授業では「toioビジュアルプログラミングセット」を活用してロボットを動かした。正多角形のプログラミングをパソコンで作成し、ドットのある専用マットの上で走らせるというもの。パソコン上でのシミュレーションとは異なり、考えたプログラミングを可視化できるのが特徴の一つだ。

本時のめあては「正多角形の性質をもとに、プログラミング教材を使って作図する」。導入では前時までに学習した正五角形と正六角形の作図の仕方、その性質などを振り返った。

今までは一つの角度から回転する角度を計算で求めており、また辺や角の数が多くなるに連れて、くりかえし(反復)の数値を変えていた。続いて外角の和とそれぞれの角の数の関係が紹介された。「外角の和は360°」「正多角形の一つの外角は、360°÷角の数」という法則を使うことで、計算が圧倒的に簡単になることが伝えられた。

そして「このような法則を用いて正七角形を作図するには、どのようなプログラムを組めば良いだろうか?」という問いが出された。繰り返しや外角を使って各自プログラムしていく。プログラミング作成は約10分とじっくり時間が与えられた。完成したプログラムはスクリーンショットを取り、パソコンから教諭に送信する。また、作ったプログラムをもとに、ロボットを動かして、正しく動作するか確かめていく。

続いて正七角形の外角は51.428…となり、計算で求めると多くの時間を要してしまうこと、さらに四捨五入した数値でプログラムすると正確な図形が作図できないことが鈴木教諭より説明された。たとえば、回す角の大きさを51°にすると正七角形に隙間が生じてしまい、52°にすれば線が交差してしまう。そこで、商は少数だけでなく、分数でも表せることが紹介。これを踏まえ「toio」の「演算」の中に、360/7と入れて正確な正七角形を再び各自で作成した。

授業の最後には、正七角形は「繰り返し」「外角」「演算」を使ってプログラムすることで、速く、正確に作図できるというまとめがスクリーンに投影された。プログラミングは便利で効率的であることが強調された。子ども一人ひとりがまとめの文章を自ら声に出すなど、その積極性が伺えた。

授業者:鈴木 昂平 教諭より

流山市立東小学校 鈴木昂平教諭

「toio」導入前はパソコンの画面上でプログラミングが実行されるだけでしたが、今では自分の考えがロボットとして動くので、“面白み”を感じながら学ぶ子どもが圧倒的に多くなりました。プログラミングを間違えると、ぐるぐる回ってしまったり、止まってしまったりします。失敗したという感覚が得られるからこそ、成功した時の喜びがより大きいように見受けられます。「toio」を使うと子どものやる気の度合いが全く違うので、今後も色々な単元で採用していきたいですね。

児童の声
  • ブロックを組み合わせていくところが楽しい。プログラミングが完成してロボットがきちんと図形を描いた時はすごく嬉しくなります。今までは図形を描く時はコンパスや分度器が必要だったけれど、toioがあれば簡単に作成できるので楽です。
  • プログラミングの問題を解決していくのは大変だけど、ロボットできちんと図形を描けた時は達成感を味わえます。ロボットは自分の指示で動くから、何を間違えたか、どうすれば正解なのかがわかるので気に入っています。
  • 色々なものを組み合わせて作っていくので、toioを使うのは楽しい。自分でしっかり考えて、答えを出せた時が一番うれしいです。

後編では、報道関係者との質疑の模様をリポートする。

取材・文:学びの場.com編集部 写真提供:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

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