2016.05.03
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新人教師の五月病、対策は?

第84回目のテーマは「新人教師が五月病に陥らないためには、どうしたらよいでしょうか?」です。

新人でも、いきなり始まるクラス運営

新人教師が五月病に陥り、休職や退職に追い込まれるケースがあります。一般企業では、2~3か月の新入社員研修などがありますが、教師は大学を卒業したばかりの、社会経験のない初任者が4月からいきなりクラス担任になることもあり、40人近い子ども達に加え、その保護者、先輩教師などとコミュニケーションを取りつつ、同時に慣れない授業準備や膨大な事務作業に追われます。重責によるプレッシャーや忙しさによって、精神的に追い込まれ、5月の連休後に職場へ復帰しづらくなるケースも珍しくありません。特に五月病を発症しやすいタイプは、就職しても「この仕事でよかったのかな」と不安が残っている人や、仕事への理想が高い人、感受性が高い人などが多いようです。

今月は、こうした新人教師の五月病について、本人と、保護者や周囲の関係者達がどう対策すればよいかを考えます。

やりがい=大変な仕事、最初の1年は思い通りにはならないもの

まず、新人教師の方に伝えたいのは、憧れて志した教師という職業であっても、1年目は自分の思い通りにいかないもの、ということです。どんな職業でも、最初の1年は仕事がスムーズに進むことは、まあないでしょう。ましてや、教師は多くの人が憧れる職業。公立学校の教師であれば公務員であり、やりがいと安定の両方が揃っている仕事です。プロスポーツ選手などもそうですが、皆が憧れる職業に、楽な仕事はないと思います。教師の仕事はもともと大変なものだということはわかっていてください。

新人教師は何かうまくいかないことがあると、人のせいにしたがる傾向があるでしょう。「学級運営がうまくいかないのは、私のクラスに特別やんちゃな子がいるからだ」「モンスターペアレントがいるから大変」「どうして同じ学年の先輩教師はあんなに怖い人ばかりなのだろう」などなど。このように考えていると、他者が変わらなければ今の状況は変わらないわけですから、打開策は当然のこと見つからないでしょう。従って、最初の1年は「人のせいにしない」ということを心掛けてください。何かうまくいかない時は、「自分に足りない所はないか?」「今はとにかく頑張ってみよう」という心持ちでいる方がよいと思います。そして、わからないことは、他の教師にとことん聞いてみましょう。これは新人ならではの特権です。

私の友人で、教師だった人達は皆、充実した職業人生だったと話します。教え子がいるということはこの上ない財産であり、たとえ自分が死んでも、児童生徒達に伝えたこと、教えたことが後世に遺るという意味では、本当に尊い仕事なのだと思います。そのことを覚えておき、上記のような気持ちで仕事に臨むことも、五月病の予防になるのではないでしょうか。

親は多くを求め過ぎない、先輩教師はメンターとして支える

では、新人教師の周囲の人達には何ができるでしょうか。保護者の中には、自分の子どもの担任が初任者だとわかると「ハズレくじをひいた」と言う人もいると聞きます。そういう保護者は教師に多くを求め過ぎではないでしょうか。「教師には読み書きを教えてもらう、それ以外の教育は家庭でやろう」くらいに考えてはいかがでしょう。読み書き程度は新人教師でもきちんと訓練を受けてきていますから、十分に教えられると思います。子どものしつけから始まり、あれもこれも学校で、と考えず、教師と親は“子育ての協力者同士”と考えてみてください。また、子どもにも「先生の良い所はこういう所だね」など、前向きな話をしてほしいものです。もちろん人間同士ですから、合う合わないはあるでしょうが、親が合わないからといって、それを子どもに話し、教師に対して先入観を持たせるのは良くないと思います。

先輩教師の方々には、今の若者の傾向をわかった上で対応してほしいと思います。例えば、最近の若者は、褒めて育てられてきた人が多いので、喝を入れられたり、冷たくされたりすると、すぐに沈んでしまいます。ですから、少しでも改善できたことは、できるだけこまめに褒めて励ましていくと、叱られてへこんで、職場に出てこられなくなるというような事態は避けられるのではないでしょうか。

管理職の方に提案したいのは、各新人教師に一人ずつ、何でも相談に乗るメンターをつけるという方法です。面倒見がよく、信頼もおける先輩教師がメンターについてくれれば、新人教師も精神的にかなり救われる部分が多いと思います。私もスタンフォードの大学院生時代に、学生のメンターがついてくれて、とても助けられました。メンターは個人的な事情、例えば私の場合、子どもがいるということも知った上で生活や勉学の相談に乗ってくれるので、とてもありがたく、そういう人がいてくれると思うだけで、精神的に楽になったのを覚えています。学校現場はどの教師も忙しいでしょうから、事細かに新人の相談に乗ることは難しいでしょうが、心の支えになってあげることを主目的にメンターを務めてあげれば、それだけでも新人教師は必要以上に追いつめられないのではと思います。

現在学校にはスクールカウンセラーが配置されていますから、新人教師は学期に最低1回は必ずカウンセラーと面談することにしてはいかがでしょう。「困ったらカウンセリングを受ける」とすると、「まだ自分は大丈夫だ」と思ってなかなか面談に行かず、気づいた時には五月病になっていたというケースもありますので、とにかく全員に面談を課して、何か予兆があれば早めに対処するのが良いと思います。

新人教師本人の心構えと、周りの方々の応援や協力によって、どうぞ五月病を回避してください。

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アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

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構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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