2016.03.01
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きょうだい間で学力差がある時、どう対応する?

第82回目のテーマは「同じ環境で育った兄弟なのに学力に差があります。なぜでしょう? どうサポートすればよいでしょう?」です。

同じように育ててきた兄弟に学力差がある

あるお母さんから「兄弟を、同じような環境で、同じように育ててきたつもりでしたが、なぜか兄より弟の方が、勉強が得意。これから高校受験で、2年前に兄が落ちた高校を弟が受けると言っているのですが、受かった場合に兄がショックを受けないか心配です」との相談を受けました。

同じ親から生まれ、同じご飯を食べ、同じ幼稚園や小学校、塾等に通っていた兄弟姉妹に、学力差があるのは不思議に思う、という方は結構いらっしゃるようです。今月は、きょうだい間で学力差がある場合、どう対応すればよいかを考えます。

きょうだいでも、子どもは一人ひとり違うもの

本来、小学校段階の勉強は、努力すればどの子にもできる内容で、学力差は生まれにくいはず。ただ、そのためには、本連載で何度かお伝えした通り、就学前からの親の適切な働きかけが必要だと思います。例えば、子どもに絵本を読み聞かせたり、読ませたり、その中で自分の意見を言わせてみたり、ということを日常的に行います。それにより、聞く耳を育て、集中力を養い、臆せず質問する力がつくようになるでしょう。あるいは簡単なドリルを毎日少しずつ解かせ、「頑張るとできるようになる」という達成感を味わわせます。そうした勉強する楽しさや喜びを幼いうちに体験すれば、それが下地となり、学校に上がってからも自然と勉強に向かう姿勢が身につくと思います。

質問者の方は、「同じように育てたのに」とおっしゃっていますが、実は子どもは同じ親から生まれても一人ひとり全く違うものだと思います。従って、同じように育てても、上の子に通じたことが下の子には通じないという場合もあるでしょう。ですから、集中力を鍛えるにしても、兄はパズル、弟は料理というように、その子が興味を持った遊びや作業で行うのがコツだと思います。

我が家の3人の息子もそれぞれ違ったタイプでした。長男はわりと落ち着いていて、それほど苦労しなくても勉強ができるタイプ、一方次男は元気で走り回るのが大好きな子だったので、「なぜ勉強が必要か」をわかりやすく教えました。三男は色々なものに興味があるタイプでしたから、勉強する時と休む時のメリハリをつける等、時間配分の手助けをしました。

特に、次男に教えた「なぜ勉強が必要か」については、他の子にも説明しました。人間は進化して賢くなり、文字を残して様々な情報を伝え合うようになったので、文字が読めなければ、社会に出た時に誰かにだまされたり、生計を立てるための仕事ができなかったり、ということが起きてしまう。また、自立して生きていくためには、今は90%以上の人が高校を出ているから、それは目指すべき、といったことです。就学前でも、わかりやすい言葉で話せば伝わりますし、目的がわかれば子どもも勉強に向かいやすくなるでしょう。このように、それぞれの個性をよく把握した上で、働きかけをすれば、小学校時代の勉強ではそれほど差が出ないと思います。

その子の得意分野を伸ばすよう応援する

中学高校になると段々と学習内容が難しくなり、学力に差が出てくることもあるでしょう。そんな時は、その子の得意分野を把握して、伸ばしてあげてはいかがでしょう。例えば、テストの点はあまり振るわないけれど、この子は文章を書かせたら、すごくセンスの良いものを書くという時は、作文や論文をどんどん書かせて、得意分野にするのです。すると、子どもは自信を持つようになり、不思議なことに、他のあまりできなかった教科まで徐々に成績が上がることがあります。逆に、一度落ちこぼれのレッテルを貼られてしまうと、子どもは「どうせ自分は落ちこぼれだし…」と思い込み、負のスパイラルに陥ってしまうかもしれません。その子の個性を生かし、伸ばせるものは伸ばす。それがその子に合った道を見つけることにも、学力アップにもつながるのではないでしょうか。

質問者の「兄が落ちた学校を弟に受験させるべきかどうか」という問題については、もし弟が本当にそこを目指しているのであれば受験させるべきだと考えます。目標を低くすべきではないでしょう。留意すべきは「兄がコンプレックスを抱かないようにする」こと。例えば、兄の偏差値に合った学校を一緒に探してあげます。その中から兄が興味のある、あるいは得意な分野を、思う存分勉強できる学校。その道の研究では定評のある教師がいる学校。ユニークな教育メソッドを実践している学校……等々、兄にとってメリットのある学校をピックアップし、学校見学も一緒に行ってあげるのです。校内の雰囲気を見たり、在校生や卒業生に話を聞いてみたりしてもよいでしょう。子どもがコンプレックスを持つかどうかは、親の態度次第だと思います。親が応援しているという態度が、本人をやる気にさせる一つの要素と言えるでしょう。また、絶対にきょうだいを比較しないことも大事でしょう。その子それぞれに良さがあることを認め、その子に合った人生を一緒に探してあげるのが、親の務めだと思います。

学力はその子の能力の一部。どの子も学力だけでは計れない素晴らしい能力を持っているものです。親はそれを受け止め、どの子に対しても一番の応援者になってあげたいですね。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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