2016.01.05
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

子どもがお手伝いをしない。どうすべき?

第80回目のテーマは「子どもが小学生になったのでお手伝いをさせることにしたのですが、なかなか続きません。どうすれば続けられるでしょうか?」です。

子どものお手伝い、「続かない」「手を抜く」「反発する」

小学校低学年の子どもを持つ保護者から、「お手伝いがなかなか続かなくて困っている」という悩みを聞きました。高校生の子どもを持つ保護者からは、「風呂掃除を頼んでも嫌がる。あるいは、浴槽の水を抜いただけで『やった』と言うので注意したら、『私の仕事じゃない!』と怒り出した」という話も聞きました。

子どもに一つのことを責任持って続ける大切さを知ってほしいと思い、お手伝いをさせる家庭が多いようです。しかし実際は、続かない、適当に済ませる、嫌がって反発する……といった子どももいるでしょう。今月は、お手伝いの教育的意義について考えてみようと思います。

「お手伝い」という概念は変。家事は家族全員の仕事

まず、「お手伝い」という習慣は、私の知る限り日本独特のものだと思います。海外では、家事は家族皆で行うもの。「子どもがお母さんを手伝う」という考え方はあまり聞いたことがありません。例えば、アメリカでは働く女性が多く、家事を家族で分担することは当たり前でした。視察したアジアの国々では、子どもは一人前に家事をしていました。アフリカ諸国では、水を遠くまで汲みに行くなど、家事に時間と労力が非常に掛かるため、力仕事は大人が担当し、それ以外の子守りなどは子どもがやっていました。香港生まれの私自身も、上の兄や姉の見様見真似で家の仕事をやっていたものです。多くは弟達の子守りでした。恐らく、「お母さんを手伝う」という考え方は、家事≒母親の仕事という習慣が根付いている日本だけかもしれません。

家事は、生活上必要なこと。誰もやらなかったら大変なことになります。家族全員が役割分担をして、こなしていくべきものでしょう。ただ、幼い子どもにはまだできないことが多いので、親が代わりにやってあげているだけのことと、私は考えます。また、毎日の食事作りを親が担当することが多いのは、各人が自分の分だけ作るよりも、まとめて作る方が時間的にも経済的にも効率が良いからでしょう。ということは、母親がご飯を作ってくれたら、「本当は自分がやるべきことを、やってくれてありがとう」という気持ちを持つのが自然なことだと思います。

「子どもにお母さんのお手伝いをさせる」というスタンスを改め、そもそも家事は家族全員が何かしら担当して行うもの、という前提を持つ所から始めてはいかがでしょう。

幼い頃から簡単な家事を任せる

では、どんな家事を担当してもらいましょうか。子どもは2~3歳から両親の見様見真似で色々なことに挑戦し始める傾向があります。従って、簡単なことで、子どもでも100%達成できるようなことから任せてみましょう。例えば、食卓を拭く、箸を並べる、カーテンの開け閉めなどです。「自分でできた」という経験から、子どもは自信を持ち、次の意欲につながるでしょう。逆に、最初から重い皿をたくさん持たせるなどのハイレベルなことを任せると、落として割ってしまうなどの失敗の可能性が高く、自信喪失してしまうかもしれません。とは言え、任せるからには最後までやらせることが大事でしょう。

ゆくゆくは、掃除、洗濯、炊事など家事全般ができるようになることが目標です。このため、「○○ちゃんはお風呂掃除」と役割を固定しない方がよいでしょう。徐々に色々なことを任せ、習得させ、生活力が身につくようにし、将来、子どもが独立した時に日常生活を困ることなく暮らしていけるようにしたいものです。

「子どもの仕事は勉強。家事なんてしないで、あなたは勉強だけをしていればいいのよ」と言う親御さんもいますが、小学校の勉強など時間もかかりませんし、勉強だけできればよいとは思いません。家事が一通りできるようになることも、子どもの将来には必要不可欠でしょう。

小さい頃から「家事は家族皆の仕事」という意識を持たずに中学生、高校生になってしまうと、その時点から家事をやらせることはなかなか難しいでしょう。今まですべての家事をしていた母親が急に、「今日からこれはあなたがやって」と言っても、「どうしてお母さんの仕事をやらなくてはいけないの? お母さんがラクしたいだけじゃないの?」と子どもは言ってくると思います。幼児の頃から「親のお手伝い」という意識ではなく、家の仕事は一家総動員でやるもの、という考え方や習慣を子どもに伝えるようにしてはいかがでしょう。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望・気になることなど、お寄せください!

「アグネスの教育アドバイス」では、取り上げて欲しいテーマ、教育指導や子育てで気になることなど、読者の声を随時募集しております。下記リンクよりご投稿ください。
※いただいたご意見・ご要望は、企画やテーマ選びの参考にさせていただきます。
※個々のお悩みやご相談に学びの場.comや筆者から直接回答をお返しすることはありません。

pagetop