2015.10.06
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失敗しない幼稚園選び、ポイントは?

第77回目のテーマは「もうすぐ入園願書受付が始まります。幼稚園は何を基準に選べばよいでしょうか?」です。

“幼稚園・三種の神器”だけで決めていい?

秋は幼稚園への願書提出の季節。最近は自治体の方針により公立幼稚園が減ってきており、大部分の保護者は私立幼稚園の中から選択する傾向にあります。私立幼稚園には、自由保育重視の園や、学科の勉強の先取りを売りにしている園などそれぞれ特徴があり、「何を基準に選べばよいか迷う」という保護者の声を聞きます。一方、“幼稚園の三種の神器”などと呼ばれる、「園バス」「給食」「預かり保育」が揃っている園は、「送迎が面倒」「毎日の弁当作りは大変」「なるべく自分の時間を確保したい」という保護者の間で人気が高いようです。

幼稚園選び――果たして、三種の神器を基準にするだけで本当に大丈夫でしょうか。今月は、幼稚園選びについて考えてみます。

一番のポイントは教職員を見ること

私が考える幼稚園選びの一番のチェックポイント、それは教職員です。教職員が幼児の発達や児童心理に関する専門性を持ち、それを活かして子どもと接しているか、その態度や人柄も併せてチェックすべきだと思います。

では、教職員をチェックするためにはどうすればよいでしょうか。とにかく希望する園へ頻繁に見学に行くことです。できれば色々なシーン、行事だけではなく、日常的な保育実践の場を見学するとよいと思います。頻繁に見学会や説明会を設けている園や、散歩のついでにちょっと覗かせてもらうことがスムーズにできる園は、教職員達の意識も高く、日々の実践に統一性があるでしょう。逆に、見学を希望しても「今日は無理です」と断ってくる園は赤信号。また、子どもと教職員との相性を見るために子連れで行ってもよいかと聞くと、「それはだめです」と断ってくる園も赤信号かもしれません。

実際に幼稚園へ見学に行ったとき、次の2点をチェックしてください。まず、全体の雰囲気がよいかどうか。威圧的な教職員が一人でもいれば、組織全体も萎縮して、どこかピリピリした空気が流れている可能性があります。逆に園長以下、全員が子どものことを第一に考え、教職員同士の連携が気持ちよくできている園であれば、子どもは伸び伸びと楽しく園生活を送っているはずです。2点目は、自分の子どもと教職員との相性がよいかどうかです。子どもはとても敏感ですから、教職員と子どもが一緒にいる機会を作れば、子どもが教職員を好きになるかどうかが見えてくると思います。よくわからなければ、帰宅してから子どもに「一緒に遊んだ○○先生、どうだった? 好きになれそう?」と聞いてみてもよいでしょう。

保護者に人気の三種の神器「園バス、給食、預かり保育」ですが、このうち園バスと給食はなくても、保護者の努力次第で何とかなるのではないでしょうか。預かり保育については、自分の仕事の時間帯や形態を再検討し、どうしても必要かどうかを判断してください。教職員の質を最優先に考え、その次に預かり保育もしてくれるかどうか、という観点で幼稚園選びを行うのはいかがでしょうか。

幼稚園で何を身につける?

最近は学科の勉強などを先取りする幼稚園がありますが、それがどの子にとってもよいこととは思いません。なぜなら、それによって「僕は○○ちゃんよりできない」と、挫折感を味わわせかねないからです。幼稚園は子どもが初めて飛び込む社会。その中で人と比べられ、嫌な思いをすると、その後、他者と一緒に何かをしていくことに抵抗を感じるようになるかもしれません。特に幼児期は、生まれ月などによっても成長に差があるのが当たり前。競争させるのは早いのではないでしょうか。一斉に逆上がりを修得する、語学や算数など教科学習的なことを身につけさせる等を重視して、その結果、子どもに優越感や劣等感を持たせるのはできるだけ避けるべきだと、私は考えます。

幼稚園時代の子どもは、父母のいない場で、新しい友達と出会い、その友達と一緒に安全に楽しく過ごせればそれで十分だと思います。そうした豊かな経験によって、むしろその子の自己肯定感が育まれることでしょう。

何か勉強させたいのであれば、家庭ですればよいのでは? 家庭で親が教えるのであれば、誰かと比較されることも、順番がつくこともなく、勉強させられると思います。

幼稚園を選ぶ際、有名な所かどうか、教育方針がどうか、カリキュラムはどうか、今までの友達はその園に行くか……等々、色々気になることでしょう。しかし、何より大事なのは教育を担っている教職員の質だと思います。大人の都合ではなく、子どもにとって最適な環境かどうかを基準に、幼稚園を選んでほしいものです。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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