2014.12.02
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子どものコミュニケーション能力を家庭で鍛えるには?

第67回目のテーマは「昨今、子どものコミュニケーション能力の低下が問題視されています。家庭でコミュニケーション能力を鍛えるにはどうすればよいでしょうか?」です。

コミュニケーション能力の低い子が増加

自分の気持ちがうまく言葉にできず、つい手が出てしまいトラブルを起こす。家族や友人との人間関係につまずき不登校になってしまう等、近年、子どものコミュニケーション能力の低下が様々な教育問題の根底にあると指摘されています。文部科学省も2010年、コミュニケーション教育推進会議を発足させ、学校教育での対応に乗り出しました。

では、子どもが育つ第一の場である家庭ではどうすればよいでしょうか。今月は、家庭でコミュニケーション能力を鍛える方法を考えます。

「今日一日の報告会」を親子で行う

コミュニケーションとは相手がいることで成立するもの。子どものコミュニケーション能力が低いのは、親が十分に子どもの相手になっていないことが原因の一つかもしれません。「学校で友達や先生と話しているから十分」と思っていませんか? 子どもが赤ん坊のときから育つ場、つまり多くの場合、家庭がコミュニケーション能力の土台になるのです。

では、どうすれば家庭で子どものコミュニケーション能力を鍛えられるでしょうか。まず0~1歳頃は、はっきりした言葉は話しませんが、身体や泣き声で様々なことを親に伝えようとします。「お腹が空いた」「暑い・寒い」「おむつが濡れていて気持ち悪い」等。このようなとき、たとえ赤ちゃんが話せなくても、「お腹が空いたのね、ご飯にしようか」「今すぐおむつ替えるね」等と、どんどん話しかけましょう。言葉を発することができない赤ちゃんも、多くは聞き取る力を持っているものです。私は息子が生まれたときから、自分の話し言葉が24時間ずっと聞かれていると思い、きれいな言葉を使うよう心がけました。話しかけることがない場合は、絵本の読み聞かせをしていました。

子どもは2歳以上になると徐々に言葉を発するようになりますので、親子で色々会話してみましょう。私は息子にたくさん質問をしていました。絵本を読みながら「どうしてこの女の子は泣いてしまったのかな? なぜだと思う?」と聞いて、答えを待つ。すぐに答えられなければ「じゃあ、また後で聞くね」と言っておく等。そうすることで、息子達は物を考え、それを言葉にする力を身に付けていったようです。

子どもが保育園や幼稚園、学校等に通うようになると、親子が日中離れていることになります。そんな場合は、夕方会えたときにお互いの今日一日を報告し合うとよいでしょう。私が「朝、仕事に行く途中のエスカレーターで、前の人がオナラをしたのよ!」なんて話すと、息子達は興味津々。「どんな人?」「その後、どうなったの?」等と色々なことを質問してきます。そして、彼ら自身も自分の一日について話し始めます。このように、親は子どもの興味を引くような面白いネタを常にストックしておくとよいでしょう。

この「今日一日の報告会」が習慣化すると、私も息子も日常生活を注意深く観察するようになりました。子どもは話したいことがたくさんあれば、どんどん話します。親がその話をよく聞き、質問し、感想を言うことで、子どもはコミュニケーション能力を鍛える機会に恵まれるはずです。

一方、子どもは家庭以外からも影響を受けますから、時に「バカ」等の悪い言葉も覚え、親に言ってくることもあるでしょう。そういうときは「お母さん、本当にバカだと思う?」と聞いてみます。「本当にバカだと思うのなら、お母さん勉強し直さなくちゃ」等と、子どもにその言葉の意味を考えさせます。つい言ってしまった言葉が、相手を傷つけることもあると、そういった機会をとらえて、しっかり伝えたいものです。

子どもとのコミュニケーションの中で、良い種をまき続ける

親の仕事とは、子どもの中にたくさんの良い種をまき続けることと、私は考えます。「種をまく」とは、親が良いと思ったことや大切だと感じたことを子どもに見せたり、伝えたりすること。子どもとコミュニケーションをとる中で、良い言葉や豊かな会話のシャワーを浴びせることも種まきの一つでしょう。それが将来、子どもの役に立つか立たないか、また、いつ芽が出るかはわかりませんが、まき続けていきたいと思っています。

私の場合、日本ユニセフ協会大使として訪れた様々な国の厳しい環境と、そこで育つ子ども達の様子を、息子達にも話してきました。先日、それが思わぬ形で実った出来事がありました。次男が大学卒業直前、救急救命士になりたいと言ってきたのです。彼の専攻は音楽関係、全く専門外の職です。でも、私は大賛成しました。彼は「この仕事だったら、毎朝、今日も誰かのために頑張ろうと清々しい気持ちで起きられると思う」と言ったからです。救急救命士になるには、コミュニティカレッジ等で専門の勉強をし、資格を取る必要があります。私も協力して学校やコースを調べました。

その後、次男はある補聴器メーカーからリクルートされ就職しました。この仕事は、聴覚障害者を支えるものですし、彼のこれまでの勉強(音楽)も活かせます。人を助けたい、と純粋に思える大人に育ち、それを仕事にした次男。小さな出来事ですが、私のまいた種から生まれた一つの嬉しい実りです。

教師の皆さんは毎日、子どもたちに良い種をまき続けて下さっています。ですから、親は何でも学校任せにするのではなく、家庭で子どもと多くのコミュニケーションをとるようにしましょう。その中で、良い種をまき続けて下さい。子どものコミュニケーション能力を鍛えながら、子ども自身が将来を考え、行動する際の礎になることでしょう。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子

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